天皇杯に向けて。J1第34節 アルビレックス新潟 VS セレッソ大阪

日時 2017年12月2日(土)14:04
試合会場 デンカビッグスワンスタジアム
試合結果 1-0 アルビレックス新潟勝利

今更だが、セレッソと新潟の試合のレビューを。
2017年シーズン最終節、セレッソは既に3位が確定しており、かつ最終節は全チームが同時刻開催、ということだったので、生中継の時にはセレッソの試合ではなく川崎と大宮の試合を見ていたのだが、もうすぐ天皇杯の準決勝、ということもあって、改めて試合を見てみた。

試合は後半32分に新潟の右SHのホニがゴールを挙げ、その1点で新潟が勝利したのだが、順位が確定していたことによってセレッソの選手たちが手を抜いていたとか、集中していなかったとか言うことは無く、新潟が普通に強かった。今シーズンのセレッソの良いところ、悪いところはこの試合でも同じように出ていて、良くも悪くも、最終節らしい試合だったのかなと。

セレッソ大阪フォーメーション
9
杉本
46
清武
8
柿谷
16
水沼
6
ソウザ
24
山村
14
丸橋
15
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

セレッソのフォーメーションは柿谷と杉本の2トップ、両SHに清武と水沼を置く4-4-2。ほぼベストメンバーだが、山口が負傷離脱中のため、ボランチのところ、ソウザのパートナーには山村が入った。

アルビレックス新潟フォーメーション
32
河田
9
山崎
40
小川
7
ホニ
13
加藤
6
磯村
27
堀米
4
ジュフン
50
富澤
8
小泉
1
大谷

一方の新潟は、セレッソ大阪U-15出身の河田を1トップに置く4-2-3-1。前回対戦した時のボランチは小泉とU20代表の原、という組み合わせだったのだが、この試合では加藤大と、シーズン途中に名古屋から加入した磯村亮太のコンビに変わっており、小泉は右SBに入っている。

この試合の時点で新潟は最下位、セレッソは3位、ということで、そういう試合らしく、流れとしてはセレッソがボールを支配する、それに対して新潟はカウンターを狙う、という展開だった。ただ、試合後のデータを見ると、セレッソのボール支配率は56.5%だったものの、シュート数は新潟が19本に対してセレッソが11本、枠内シュートも新潟が6本に対してセレッソが2本だったので、どちらが効果的にゴールに迫れていたか、というのは明らかである。
この日のセレッソのボランチコンビはソウザと山村。この二人で臨むのは、前節、神戸戦から2試合目だが、基本的にこの二人はやりたいことが似ている。どちらもボールに絡みたい、前線の選手と絡みたい、というプレーをするので、見ている分にはボランチがどんどんボール、そして前線に絡んで面白いのは面白いのだが、少し前がかりになりすぎる傾向がある。
前節神戸戦では、前半と較べると後半の方が両者の関係性が良くなっていて、この試合でもソウザが前の時は山村が後ろ、山村が前の時はソウザが後ろ、という意識は見えたが、横並びになってしまったり、両方共前に行ってしまったり、というシーンも少なからずあり、そこから新潟にボールを奪われてカウンターを受けてしまうことが何回かあった。

そして結局、後半32分、ソウザから山村へのパスがズレてボールを山崎に奪われ、そのままダイレクトでセレッソDFラインの裏に走ったホニに縦パスが出て、これをホニが決めて新潟が先制。これが決勝点となって、セレッソは試合に敗れることになってしまった。

勝っても負けても最終的な順位は変わらない、という位置づけの試合ではあったが、最初に書いたとおり、セレッソの選手が手を抜いていたわけではなく、負けるべくして負けた、という試合だったので、今シーズン残りの天皇杯、そして来シーズンに向けて、反省点の残る内容だった。
まずボランチについては、やはり山村はソウザのパートナーというよりも、ソウザとポジションを争う選手、という位置づけで考えた方が良く、それでもあえて、ソウザと一緒に使う場合は、山村はボランチというよりも、アンカーであったり、リベロとしてプレーする、DFラインの前のフィルタとしてプレーする、と言う意識の方が良いのではないかと思う。山村は山口と較べるとスピードは少し劣るので、その点で考えても、ポジショニングは気持ち下がり目でないと、例えボールより後ろに残っていても、入れ替わられてしまう可能性がある。
また、もう少し踏み込んで考えると、ソウザと山村のコンビの場合は、ソウザが守備的な方が良い、つまり、ソウザが山口の代役、山村がソウザの代役、と考えた方が良い気がする。守備で山口に近いプレーが出来るのがソウザ、攻撃でソウザに近いプレーが出来るのが山村なので。この辺りは選手のメンタルも関係するので、難しい判断ではあるが。
また、そのあたりのバランスを短期間で修正できないのであれば、天皇杯ではボランチはソウザと木本のコンビにして、山村はCBに入れる、もしくは山村はソウザの控えという位置づけにして、CBには山下を入れる、という形にしても良い。
いずれにせよ、天皇杯は山口が欠場することが濃厚なので、このポジションの最適解を見つけておくことは重要になる。

それと、今シーズンのセレッソは、プレーオフからの昇格チームということでシーズン当初は上位チームと見做されていなかったが、シーズン後半からは、この試合の新潟のように、主に下位チームがセレッソに対して引いて守ることが多くなっていて、これは今後の天皇杯や、来シーズンについてもそうなると考えられる。
今シーズン既に、7月のFC東京戦、そして9月のサンフレッチェ広島戦のように、前がかりになった時にカウンターを受けて失点、という試合も幾つかあった。そういう時は大抵、「ボランチのところでミスが起こる」「DFの初動対応が悪い」「SBが高い位置を取り過ぎている」このどれかが起こっていて、つまりカウンターを防ぐためには、「ボランチのところでミスをしない」「DFが初動対応で必ず相手を遅らせる」「SBのうち一枚はカウンターに備えたポジションをとる」ということが必須になると思う。
この試合の失点シーンの直接の原因は上述したようにソウザから山村へのパスミスだったが、遠因としては、パスミスの前に木本がボールにアプローチするためにDFラインから飛び出した、それに対して左SBの丸橋が絞っていなかった、ヨニッチだけが残っている状態になっていた、というのもある。勿論ソウザのパスミスは予測できないが、それが起こらない「だろう」と思ってプレーする選手と、それが起こる「かもしれない」と思ってプレーする選手、どちらが守備の選手としての適性があるかと言えば、それは後者なので、ソウザと山村の連携がイマイチ、そして木本が最終ラインから出た、という時点で、「何か心配だな」と思って反射的に絞ってしまう、ぐらいであった方が良いのかなと。

一方で攻撃についてだが、セレッソの攻撃は前線の個の力を前提にしているところがあり、1回のビッグチャンスよりも、たくさんのハーフチャンスを作る、そして最後は個の力で決めきる、という思想になっている。今シーズンのセレッソは相手にリードされてもその後奪い返す、という試合が多かったが、それが出来たのは、相手が守りに入っても、ハーフチャンスまでは作れるからであり、逆に相手チームから見ると、引いて守ったとしても、ハーフチャンスすら作らせない、というのは難しいからで、そこからセレッソは杉本であったり、柿谷であったり、ソウザであったり、セットプレーの時はヨニッチであったり山村であったり、といった個の力の高い選手がゴールをこじ開けることが出来ていた。
ちなみに今シーズンのセレッソがリーグ戦で先制されて逆転した試合は6試合、同点に追いついた試合は1試合。つまり獲得した勝ち点65のうち19が、ビハインドを跳ね返して得たものである。
つまり逆に言うと、攻撃の選手の個の力が低かったり、調子が悪かったりしてハーフチャンスをものにできない、という日は得点をなかなか奪うことが出来ない。
セレッソは今シーズン残りの試合、杉本健勇が左足首の手術によって、出場できないことが確定。また天皇杯準決勝は、杉本のターンオーバー要員として貴重な存在だったリカルド・サントスも累積により欠場が決定している。それを考えると、天皇杯では、あまり大量の得点は期待できない、ということになり、サブ組主体で臨んだルヴァンカップがそうであったように、しぶとく守って、どこかで1点を奪って勝つ、そういう姿勢が求められると思う。