2014年シーズンまでセレッソに所属していた南野拓実が、オーストリア・ブンデスリーガのレッドブル・ザルツブルクから、プレミアリーグの強豪、リヴァプールに移籍することがこのほど発表された。
Liverpool FC agree deal to sign Takumi Minamino
Liverpool Football Club can confirm an agreement has been reached with Red Bull Salzburg for the transfer of Takumi Minamino.
リヴァプールからザルツブルクには、およそ10億円の移籍金が支払われると報道されているが、実は、この移籍金の一部はセレッソにも入ってくる。「連帯貢献金」という仕組みがあるためである。この連帯貢献金は、選手育成に対する一種の報奨金で、選手の国際移籍が発生した際、その選手が12歳から23歳まで所属していたチーム(つまり、一つのチームとは限らない)に移籍金の一部が支払われるという仕組みである。
この連帯貢献金の算出方法については、FIFAの文書に詳細が記載されている。該当部分を抜粋すると下記のようになっている。
Regulations on the Status and Transfer of Players※PDF
If a professional moves during the course of a contract, 5% of any compensation, not including training compensation paid to his former club, shall be deducted from the total amount of this compensation and distributed by the new club as a solidarity contribution to the club(s) involved in his training and education over the years.
契約期間中にプロ選手が移籍した場合、前所属クラブに支払われた移籍金のうち、トレーニングコンペンセーションを除いた金額の5%が合計額から差し引かれ、長年にわたって選手のトレーニングと教育に携わったクラブへの連帯貢献として、新クラブから分配されます。
This solidarity contribution reflects the number of years (calculated pro rata if less than one year) he was registered with the relevant club(s) between the seasons of his 12th and 23rd birthdays, as follows:
この連帯貢献金には、次のように、12歳と23歳の誕生日のシーズンの間にクラブに登録されていた年数(1年未満の場合は割合に応じて計算)が反映されます。
- Season of 12th birthday: 5% (i.e. 0.25% of total compensation);
- Season of 13th birthday: 5% (i.e. 0.25% of total compensation);
- Season of 14th birthday: 5% (i.e. 0.25% of total compensation);
- Season of 15th birthday: 5% (i.e. 0.25% of total compensation);
- Season of 16th birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 17th birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 18th birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 19th birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 20th birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 21st birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 22nd birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation);
- Season of 23rd birthday: 10% (i.e. 0.5% of total compensation).
簡単に言うと、移籍金の総額の5%を連帯貢献金とし、それをさらに、12歳から23歳まで所属していた各チームで分配する、ということになる。今回の南野の移籍金が10億円だとすると、連帯貢献金の総額は5千万円である。この5千万円の中から、南野がセレッソに在籍していた期間に応じた金額が、セレッソに支払われることになる。
南野は中学校入学と同時にセレッソのU-15に入団しており、南野の誕生日は1995年1月16日なので、入団時点では12歳である。そして、南野のザルツブルク移籍決定時のセレッソのリリースを見ると、移籍日付は2015年2月2日となっている。したがって、移籍決定時点での南野は20歳である。
南野 拓実選手の移籍について
つまり、南野がセレッソで最初に誕生日を迎えたのは13歳の時、最後に誕生日を迎えたのは20歳の時、ということになり、上記のFIFAの文書になぞらえると、Season of 13th birthdayからSeason of 20th birthdayまでがセレッソが得られる連帯貢献金の割合ということになる。13歳から15歳までは各年5%、16歳から20歳までは各年10%なので、合計すると65%となり、5000×0.65=3250万円が、セレッソに支払われる連帯貢献金となる。また、南野が12歳になった時に所属していたゼッセル熊取FCにも(請求しさえすれば)連帯貢献金の一部が支払われるはずである。
この連帯貢献金は、例えばその選手を1年レンタルしただけでも、それが上記の年齢の期間であれば、請求する権利が発生する。実際、柿谷曜一朗がセレッソからスイスのバーゼルに移籍した際には、過去に柿谷をレンタルしていた徳島ヴォルティスに、連帯貢献金の請求権が発生している。日本人の若手の国際移籍が加速している昨今、こうした利鞘を目当てにした選手獲得も、今後は増えていくのではないだろうか。