日時 | 2017年9月17日(日)24:00 |
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試合会場 | オールドトラフォード |
試合結果 | 4-0 マンチェスターユナイテッド勝利 |
ウェイン・ルーニーが十余年を過ごしたマンチェスターユナイテッドを離れ、自らの出身地、そしてプロキャリアをスタートさせたチームであるエヴァートンに移籍。この試合は彼にとって、生まれ育ったチームの青いユニフォームに袖を通し、自らが最も長い時間を過ごした赤いユニフォームを相手に戦うという特別な試合だったが、結果は4点差での敗戦。悔しさの残る古巣対決となった。
ただ、ユナイテッドの4点のうち、1点目はバレンシアのスーパーボレー、3点目はセットプレーの流れで跳ね返ったボールがルカクの前にこぼれてきたもの、そして4点目はシュナイダルランがPA内で滑り込んだ際、地面に付いていた腕にボールが当たったプレーをハンドと判定されてPKという厳しめのジャッジで、ユナイテッドとしては狙った形で取れた得点は2点目、フェライニが高い位置でウィリアムズのボールをカットし、ルカクからムヒタリアンに渡ってシュート、という流れで奪った得点のみだったと思うので、エヴァートンとしては少し不運もあったのかなと。
9 ルカク |
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19 ラシュフォード |
22 ムヒタリアン |
8 マタ |
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31 マティッチ |
27 フェライニ |
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18 ヤング |
4 ジョーンズ |
3 バイリー |
25 バレンシア |
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1 デヘア |
この試合、ユナイテッドは直前のUCLの試合でポグバが負傷したことで、ボランチはフェライニとマティッチのコンビ。前線はルカクの1トップ、左ウィングにラシュフォード、トップ下ムヒタリアン、右ウィングにマタ。
10 ルーニー |
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18 シグルズソン |
26 デイビス |
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17 ゲイェ |
2 シュナイダルラン |
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3 ベインズ |
15 マルティナ |
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6 ジャギエルカ |
5 ウィリアムズ |
4 キーン |
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1 ピックフォード |
対するエヴァートンは、試合前の表記ではルーニーを1トップに置く3-6-1だったが、殆どの時間帯で左WBのベインズ、右WBのマルティナは最終ラインまで引いていて、シグルズソン、デイビスもシャドーというよりはサイドの守備に参加している時間の方が長かったので、実質的には5-4-1の布陣だった。
上述の通り、試合は前半4分、マティッチの左サイドからのサイドチェンジのボールをバレンシアがPA角あたりから直接ボレーでゴールに叩き込んでユナイテッドが先制。丁度、突然強い雨が落ちてきた時間帯で、しかもマティッチのボールは手前でワンバウンドしていたので、普通の選手であれば、まずはミスしないように、という考えになると思うのだが、唐突にシュートを撃ってくる、そして決めてしまう、というのは流石というか、想像を超えたプレーだった。
エヴァートンのゴールマウスを守っていたのは今シーズン、サンダーランドから移籍してきたピックフォードで、個人的にはかなり良いGKだと思っているのだが、このシュートは止められず。もちろんシュートが良かったのだが、GKから見てゴールマウス右上に決まったシュートに対して、右手を伸ばしていたので、左手であればどうだったか、というところは気になった。横っ飛びになった時、ボールサイドの腕はより外側まで届く、ボールと逆サイドの腕はより上側まで届く。スローで見るとボールはピックフォードの右手の上側を通過していたので、左手で止める、という判断をしていれば止められた可能性はある。その判断をする暇を与えないシュートだったのは間違いないが。
ユナイテッドが先制した後、試合は終盤まで膠着状態になったのだが、その理由としては、ユナイテッドもエヴァートンも、あまり前線が機能していない、というのが大きかった。
エヴァートンの方は、ルーニーの1トップなのだが、実質ゼロトップのような感じで、ルーニーが中盤に引いてくる。そうなると中盤では数的優位になるし、ルーニーの受ける位置も良いので、ボールは収まるのだが、ルーニーに収まった後、それをフォローする動きや追い越す動きが少ないので、チャンスにならない。ただ、この点に関しては、恐らく前半は0-0で良い、というプランでエヴァートンは試合に入ったと思うので、バレンシアのスーパーゴールが決まった後も、そこは変えずに、ということだったのかもしれない。
一方でユナイテッドの方は、ラシュフォードの左サイドでのプレーがイマイチだった。今のラシュフォードは少し使いどころが難しい状態で、センターFWで使うとフィジカルや起点になる力が弱い、サイドで使うとドリブルでの打開力が弱い、ということで帯に短し襷に長し、という状態。また、昨シーズンはイブラヒモビッチが1トップに入ることが多く、またイブラヒモビッチは引いてきて起点になる、トップ下のようなプレーをすることが多かったので、その裏にラシュフォードが飛び出す、という形で良い関係になれていたのだが、今シーズンのセンターFWはルカクで、どちらかというとサイドに流れるプレーが多い、プレーの選択も起点になるより自分自身が仕掛けるプレーが多い、ということなので、ラシュフォードから見ると自分とキャラクターが被っている、その分、プレーが被らないように考えながらプレーする必要がある、ということで少し思い切りが無くなっている感じだった。
後半に入ると、エヴァートンの方はルーニーにボールが入った時にフォローに入るプレー、追い越すプレー、というのが増え、それに伴ってゴール前に迫るシーンも多くなったのだが、エヴァートンのチャンスシーンはデヘアがことごとくセーブ。逆にユナイテッドの方は、後半38分、前述の通りフェライニが高い位置でボールをカットし、最後はムヒタリアンが決めて2点目。直接的な原因はウィリアムズのボールがカットされたことなのだが、直前にルーニーが交替で下がっていたのは大きかったと思う。ルーニーはユナイテッド時代からパスレシーブが上手い選手で、彼が中盤に引いてくる、というプレーが、エヴァートンにとってはボールの納めどころになっていたので、彼がいなくなったことで、ターゲットがなくなってしまった、その都度探す必要が出来てしまった、というのはパスミスの遠因になっていたと思う。
ルーニーとしては、下がる時にユナイテッドサポーターから大きな拍手を受けたものの、ブーイングを受けながら下がるぐらいの方が、プロ選手としての自尊心は満たされたのではないだろうか。もちろん、この試合で彼が複数ゴールを決めたとしても、ユナイテッドのサポータは拍手を送ったとは思うが。
試合は結局、ユナイテッドが終盤に畳みかけ、最終的には4点差でユナイテッドの勝利。終盤には左ウィングにマルシャルが入ったのだが、やはりトップ下がいる布陣なのであれば、左ウィングはドリブルの打開力がより高いマルシャルの方が機能する。
また一方で、今のユナイテッドのメンバーを見ると、トップ下は置かない方が、という気もする。マタもラシュフォードも、そしてこの試合は途中出場だったがリンガードも、サイドから中に入ってくる、というのが持ち味だし、ムヒタリアンもドルトムント時代はそうだった。ポグバ、フェライニもボランチの位置からトップ下の位置に上がってくるプレーを好む傾向がある。逆に、ルカクはセンターにとどまっているよりもサイドに流れる傾向があるので、トップ下を固定してしまうと、流動性を失ってしまう気がする。
一方のエヴァートンだが、この稿の最初に書いたように、不運な部分もあったと思うので、点差についてはそれ程気にする必要はないのかなと。ただ、今のルーニーは全盛期のように、引いて受けて、そのまま自分でフィニッシュまで、という選手ではないので、もう少しサポートであったり、ルーニーが引く分、逆に奥行きを出す選手であったり、そういう部分が必要になるのかなと。この試合ではサンドロ・ラミレス、キャルバート・ルーウィンという選手を途中投入したが、彼らのいずれかがカギになるのではないだろうか。