トレーニングコンペンセーションから考える、育成選手の見極め時期

2017年12月28日付で、セレッソから複数の移籍アナウンスが出されたが、その中に、下記2名の名前があった。

池田樹雷人、温井駿斗はいずれも1996年生まれ。この記事を書いている時点で21歳の選手である。

セレッソは12月7日にもMF阪本将基の契約満了を発表していて、こちらも1996年生まれの選手である。

つまり、セレッソは2017年シーズンの終わりに、1996年生まれの選手を同時に3名放出したことになるが、これは偶然ではなく、「トレーニングコンペンセーション」という制度が絡んでいる。
トレーニングコンペンセーション(以下TC)とは、簡単に言うと、あるチームで21歳まで過ごした選手が契約満了により他のチームに移籍した場合に、所属していたチームに金銭が支払われる、という制度である。いわゆる「ゼロ円移籍」に対する救済制度で、コストを掛けて育てた若手が、一人前になったタイミングで、契約更新を拒んでフリーで移籍してしまった、という場合でも、在籍した期間に応じて、育成したチームにお金が残る仕組みになっている。
有名な例で言うと、香川真司がセレッソからボルシア・ドルトムントに移籍した際は、契約満了によるゼロ円移籍だったが、香川は17歳から21歳までの間、セレッソに所属していたため、その期間に応じたTCがセレッソには支払われている。

TCの細かい決めごとについてはJFAが、公開文書「プロサッカー選手の契約、登録及び移籍に関する規則」の中、「7.トレーニングコンペンセーション」の項で定義しているが、重要なのは下記2点である。

下記に定める期間を以て「トレーニングコンペンセーション」が発生する期間(以下「トレーニング期間」という)とする。
・当該選手の初めてのプロ契約の有効期間開始日を含む年度の2月1日から当該選手の満21歳の1月31日までの期間

下記に定める期日までに移籍が行われる場合に限り、移籍元クラブは、移籍先クラブに対し、「トレーニングコンペンセーション」を請求することができる。
・当該選手の満23歳の1月31日の直前の1月1日

上記を簡単に言うと、1月31日の時点で21歳になっている選手がいた場合、1月31日以降は育成期間としてカウントされない。そして、1月31日時点で23歳になっている選手がいた場合、TCを請求できる権利が発生するのはその直前の1月1日まで、ということになる。Jリーグの冬の移籍マーケットが開くのは1月6日なので、実際には、その前の段階の夏の移籍マーケットが、請求権が発生する最後のタイミングになる。

つまり、チームが選手の育成に費やした費用のうち、TCとして回収できるのは、その選手が21歳で迎える1月31日までにかけた費用のみ、ということになる。それ以降の費用に関しては、その選手がトップチームで活躍したり、他チームに移籍する場合は移籍補償金(いわゆる移籍金)が支払われなければ回収できない。

つまりチームは、その選手が21歳になった年のシーズンオフには、その選手がこの先、チームの主力になっていくかどうか、という判断をしなければならない。主力に育つ可能性は低い、と判断された場合は、残念ながら、その選手は放出すべきということになる。

セレッソで今年、21歳を迎えたのは下記の選手たち。カッコ内は、チームから発表された来季の去就である。

  • 阪本将基(契約満了)
  • 池田樹雷人(愛媛FCに完全移籍)
  • 温井駿斗(栃木SCに完全移籍)
  • 沖野将基(不明)
  • 西本雅崇(契約延長)
  • 米澤令衣(契約延長)
  • 丸岡満(レノファ山口に期限付き移籍※今季後半はVファーレン長崎でプレー)
  • 前川大河(徳島ヴォルティスに期限付き移籍※今季も徳島でプレー)

上記を見ると、坂本、池田、温井の3名は、主力にはなれないと判断された、ということになる。
それ以外の選手たちは、まだ可能性がある、と判断されたということだが、上述の通り、TCの請求権の期限は最長でも、その選手が23歳で迎える1月1日までなので、その時までにもう一度、放出か、契約延長かの判断がなされることになる。

21歳という年齢は、もはや若いとは言えない。
彼らはそういう世界で生きているのだ。