ボールを、あたかも手で扱うように足でコントロールする、と言うのはサッカーやフットサルをプレーしている人間であれば誰でも辿り着きたい境地だと思う。では、どう言う意識でボールにタッチすればその感覚を得られるのか、というところを考えてみたい。
なお、これから書くことはあくまでも個人的な感覚によるものであり、専門的知見には基づいていないので、間違っている、或いは万人には当てはまらないかもしれない。また逆に、そんなことは常識だ、と言われるような内容かもしれない。あらかじめご了承ください。
さてまず、手で扱うように足で扱う、ということを考える場合、足の各部位は手で言うとどこにあたるのか、ということを考える必要がある。サッカーのキックは大きく分けて4種類あり、足の甲で蹴るインステップキック、足の内側で蹴るインサイドキック、かかとで蹴るヒールキック、そしてつま先で蹴るトゥーキックがある。足の外側で蹴るアウトサイドキックもあると言えばあるが、純粋に足の外側だけでボールを蹴るシーンと言うのは殆どなく、多くの場合インステップキックで脚を外方向に振って蹴ることを「アウトサイドで蹴る」と呼ぶので、ここでは割愛する。
この各部位で蹴るキックそれぞれについて、手に置き換えて考えてみることにしよう。
まず最初に、一番シンプルなトゥーキックから。つま先で触るキックなので、手に置き換えて考えると、手の指先で触るのに等しい。空手で言う貫手の形でボールを突くイメージが近いだろうか。
ただ、足のつま先と言うのはかなり繊細かつ鋭敏な部位なので、このキックに関してだけ言えば、手に置き換えてイメージする必要はあまりない気もする。足の感覚そのままの方が繊細にタッチできるのかなと。
次にインステップキック。このキックでボールを当てる位置は足の甲。厳密に言うと、足の親指の骨と人差し指の骨の間を足首に向かってなぞって行った時に一際盛り上がっている箇所である。
これは手で言うとどこにあたるだろうか?握りこぶしを握った時の手の甲、人差し指と中指の付け根の尖った部分ではないだろうか。
実際の所、手でボールを遠くに、勢いよく弾き飛ばしたい時、この部分で殴るのが最も効率よいと感じる。つまり、インステップでボールを蹴る感覚は、握りこぶしを握った時の人差し指と中指の付け根で殴る、という感覚に近いのではないだろうか。
ではインサイドキックは?これは手首ではないだろうか。インサイドキックはボールを一番確実に捉えられるキックだが、例えばバレーボールで初心者がボールを打つ時、どこが一番安定するかというと、手首と手のひらの境目でボールを撃つ時である。ここでボールをポンと跳ね上げる、つまりアンダーハンドサーブの形が一番安定する。
一方、手の形と足の形を比べた時、足で言うインサイドは手の親指の付け根の下であり、手首と手のひらの境目はヒールじゃないのか、という意見もあると思う。
これは筆者の感覚だが、手の親指のつけ根は「トラップする場所」、手首と手のひらの境目は「キックする場所」である。つまり、インサイドでトラップする時の位置とキックする時の位置は違う、ということである。
手の平を自分に向けて、親指から手首に向かってなぞって行くと、手首付近に尖った骨があることが分かる。舟状骨(しゅうじょうこつ)という骨らしい。同様に、足の内側を自分に向けて、足の親指からくるぶしに向かってなぞって行くと、くるぶしの手前あたりに尖った骨がある。こちらも舟状骨と呼ばれる。ボールを手で飛ばすにせよ、足で飛ばすにせよ、この尖った部分をボールに当てれば効率が良い筈である。
一方、インサイドのトラップはもう少し指に近い側が当てるポイントになる。つまり、手、足いずれの場合も、舟状骨と親指の付け根、この2点を結んだ線の中間あたりである。
筆者は普段、ミズノのスパイクもしくはトレーニングシューズを履いているのだが、ミズノのシューズは側面に「ランバード」と呼ばれる鳥のようなマークがプリントされている。インサイドでキックする時はこの鳥の胴体に当たる部分でキックするが、トラップする時は首に当たる部分でトラップする。2cmあるかないかぐらいの違いだが、それが大きい。
ではヒールは手で言うとどこになるのか。これも個人的な感覚だが、ヒールは手のひらを自分に向けた時の手首の内側(小指側)にある骨の部分なのかなと。
最初に述べた、インステップに当たる部分(人差し指と中指の付け根)、そしてこの部分が、手のパーツの中で一番固く、土台もしっかりしていて、当たると強いボールが飛びそうな感覚がある。それは足のインステップとヒールの感覚にも一致している。また、足の骨格を見ると、踵の骨は立方骨という骨を介して足の小指と薬指につながっているので、その点から考えても、手に置き換えた時は手の小指から手首の方に下って行ったところが踵にあたると考えられるのかなと。
まとめると「手で扱うように足でボールをコントロールするためのイメージ」は下記のようになる。
- トゥーキックは貫手で突くイメージ(ただし足の感覚を優先して良い)。
- インステップキックは中指と人差し指のつけ根の尖った骨で殴るイメージ。
- ヒールキックは小指の後ろの骨をボールに当てるイメージ。
- インサイドキックはバレーボールのアンダーハンドサーブのイメージ。
- インサイドのトラップは親指のつけ根で止めるイメージ。
一番大事なのは最後の2つだと思っていて、何故かと言うとこの2つは試合中の使用頻度が高いからである。
インサイドキックについて注意したいのは、手の場合は舟状骨をボールに向けて振っても動きに制約がないが、足の場合は舟状骨を前方(つまりつま先を外側)に向けて足を振ると上手く振れない、という点である。よって、当てたい場所をボールに向けるのはインパクトの瞬間であることが望ましい。また、そうなると当然、右足で蹴る場合は左方向、左足で蹴る場合は右方向に蹴る方が蹴りやすいので、左右に蹴り分けるためには両足同じように扱えることが望ましい。
一方でインサイドのトラップだが、既に書いたように、手で言う親指の付け根の下に当てる、という感覚でトラップすると柔らかく止まる。勿論、一番手に近い感覚で止まるのは足裏(つまり手の平)なのだが、フットサルはまだしも、サッカーの場合は大なり小なり弾んだボールが転がってくることが殆どなので、常に足裏で止めることは難しい。よって、インサイドのトラップをどれだけ手に近い感覚で行えるか、というのが「手で扱うようにコントロールできるか」の決め手になる。勿論、人によって感じ方は違うが、ボールを手の親指の付け根に当ててみて、その後、足の親指の付け根に当ててみて、感覚的に似ているな、と感じることが出来るのなら、この記事に書いたことが役立つのではないだろうか。