サッカーにおける良いプレーとは何か

サッカーを普段あまり見ない人と、テレビまたはスタジアムでサッカーを観戦していると、「今のは良いプレーなのか」ということを良く聞かれる。
強烈なミドルやオーバーヘッドなど、派手なシュートが決まった時や、複雑なフェイントを駆使して相手を抜き去った時などは凄さが良く分かるが、それ以外のシーンでは良く分からない、ということらしい。
勿論、言うまでもなく、「ゴールを決めたプレー」というのが最も良いプレーなのだが、サッカーではそもそも1試合でゴールが決まる数自体が少ないので、それ以外の評価基準を知りたい、ということなのだと思う。

本稿では、サッカーにおける「良いプレー」を、サッカー初見者の方にも分かりやすいよう整理して説明したい。

先に結論を書くと、良いプレーとは、良い状態を作り出すプレー、ということになる。
サッカーにおいて、ボールを保持している側のチームから見た時の「良い状態」とは、次の3つである。

  1. ボールが相手ゴールに近い
  2. 選手の身体が相手ゴールに向いている
  3. ボールの周りに相手選手がいない

よって、上記の1~3の状態を作り出すプレーが良いプレー、ということになる。1~3全てを満たす状態が最も良く、そうでない場合は満たしている数が多いほど良い。

まず1についてだが、サッカーはボールをゴールに運ぶためのスポーツなので、ボールが相手ゴールに近いほど良い。つまり、凄く単純化して言うと、ボールを前(相手ゴール方向)に運ぶプレーは良いプレー、後ろ(自陣ゴール方向)に運ぶプレーは悪いプレー、ということになる。その中間として横に運ぶプレーという物があるが、これも、外側(タッチライン側)に運ぶよりも、内側に運ぶプレーのほうが良いプレー、ということになる。

次に2についてだが、相手ゴールに向かってプレーする以上、パスを受けた時に、身体が相手ゴールに向いている状態であるほうが良い。よって、同じようにパスを成功させた場合でも、相手ゴールに身体が向いている選手にパスを届けた場合と、そうでない場合とでは、前者の方が「良いプレー」となる。

最後に3についてだが、当然、邪魔する相手選手がいない状態を作り出す方が良いプレーである。

よって「攻撃において特別な能力を持った選手」を定義するとすれば、それは「相手ゴールから遠い」「体は後ろ向きである」「周りに相手選手が沢山いる」という状態から、全く逆の状態、「相手ゴールに近い」「体は前向きである」「周りに相手選手はいない」という状態を作り出せる選手、ということになる。
もし、スタジアムでサッカーを観戦していて、ある選手Aにボールが入った時、選手Aは後ろ向きで、しかもマークが付いていた、しかし、その選手からパスを受けた選手Bは前向きで、フリーでボールを受けることが出来た、しかもよりゴールに近い位置で、ということが起こった場合、選手Aは疑いなく「良い選手」であり、大きな拍手を送るべき選手である。

この考え方をもう少し発展させると、以下のように考えることも出来る。
サッカーには「ポストプレー」というプレーパターンがある。味方からの縦パスを後ろ向きで受けたFW(フォワード)の選手が、ボールを後ろの選手に落とす、というプレーである。このプレーをFWの選手単体で見ると、後ろ向きでボールを受けた、しかもボールを下げてしまった、ということで「悪いプレー」ということになってしまうのだが、最終的に落としたボールを受けた選手が、最初にFWの選手にパスを出した選手よりも前にいた場合、グループで見ると、評価は全く逆になる。つまり、最初にFWにパスを出した選手は縦にパスを出した、最終的に落としたボールを受けた選手は、前向きで、最初の選手よりもゴールに近い位置でボールを受けた、ということになり、これはグループ単位で見れば「良いプレー」ということになる。

また、この考えから逆算して考えると、「良い守備」というものも分かりやすいと思う。
つまり、

  • ボールを自陣ゴールに近づけさせない(縦パスを入れさせない)
  • 自陣ゴールに身体を向けさせない(前を向かせない)
  • ボールの周りに味方がいるようにする(ボールの位置に合わせて移動する)

というのが良い守備、ということになる。

AとBのチームが対戦している試合を見ていて、Aが殆どの時間でボールを保持している、それに対してBはずっと守っている、という状況だったとして、一見するとAが優勢に試合を進めている、という風に見えるが、仮に、Aは横パスやバックパスしかしていない、たまに縦パスが入っても、受け手の選手は相手選手に囲まれており、かつ向かうべきゴールに背を向けている、という状況だった場合、それはAというチームが良い攻撃をしている、とは言えず、逆に、Bというチームが良い守備をしている、と捉えるべきである。

上記のように考えると、初見者の方でも、サッカーをもっと端的に捉えられるのではないだろうか。サッカーは複雑でありながら、その根本はとてもシンプルなスポーツであり、評価する基準が分かっていれば、あとは全て応用問題である。

最後にもう一度まとめると、サッカーにおいて「良いプレー」というのは、

  1. ボールが相手ゴールに近い
  2. 選手の身体が相手ゴールに向いている
  3. ボールの周りに相手選手がいない

という状態を作り出すプレーである。1~3全てを満たす状態が最も良く、そうでない場合は満たしている数が多いほど良い。