普段、Jリーグを見て、そして海外のサッカーを見て、ということを繰り返していると、自然に、日本人選手と海外の外国人選手との違い、というものが目に入ってくる。Jリーグでプレーしている日本人選手と、海外のリーグでプレーしている外国人選手との違い。そして、海外のリーグでプレーしている日本人選手と、そのリーグの外国人選手との違い。
勿論、違うからダメ、ということではなく、日本人選手の方が優れている部分もあるのだが、この記事では、その違いのうち、見習うべきではないか、という部分について書いてみたい。大きく2つあって、いずれも技術的な話である。もう一つ、技術とは別の話もあるのだが、それはまた別の記事で書きたい。
まず1つ目は、ボールをキープする時の姿勢の違い。
これは特に、プレミアリーグで岡崎のプレーを見ている時に感じることが多い。岡崎はレスターに移籍してから、かなり体重を増やして、太腿あたりを見ても一回り太くなったと思うが、それでも、ボールキープの時に倒されてしまう、潰されてしまう、というシーンを良く見かける。最近は、後ろ向きでボールを受けても、安定してボールを捌くシーンが増えてきたが、それはフィジカルが強くなったから、というよりも、トップ下のプレーに慣れてきて、DFの間で受けるタイミングが良くなったから、という部分が大きく、相手に寄せられてしまった時は、やはり潰されてしまうことが多い。
逆に、例えばマンチェスターシティのセルヒオ・アグエロなどは、身長は173cmで、岡崎と殆ど変わらないが、相手に寄せられた時のボールキープは非常に上手い。
岡崎とアグエロのプレーを見ていて違うのは、ボールをキープする時の姿勢で、岡崎の場合、相手に背中を向けて、ボールにかぶさるような姿勢を取ることが多いのに対して、アグエロの方は、半身の姿勢でボールと相手の間に入り、ボールを相手の遠くに置きながら、同時に自分の両足のうち相手から遠いほうの足を、いつでもボールに触れるように、ボールの近くに置いている事が多い。
岡崎の姿勢だと、相手に背を向けているので、後ろから押されるとほぼ倒れてしまう。Jリーグだと後ろから押されて倒れた場合は100%押した側が悪い、ということになるのだが、プレミアの審判は、そういう倒れ方は「足が揃っている方が悪い」という判定をする傾向にあり、ファウルを取ってもらえないことが多い。
アグエロの場合は半身になっているので、相手から押されてもそれは横からの力、ということで容易に倒れないし、ボールは相手から遠いところに置いているので、相手が足を出して来ても、ボールに触れなければファウルになる。そして、相手から遠いほうの足はボールの近くにあるので、相手がボールを取りに来たタイミングでボールを動かしてファウルを貰うことも出来るし、逆に相手がボールを取ろうとして懐に入ってきたタイミングで入れ替わることも出来る。
相手からすると、取りに行こうとするとファウルになってしまうかもしれない、入れ替わられるかもしれない、ということになり、結果的にボールを取りに行けない。つまりフィジカル的な勝負の前に、精神的な駆け引きで優位に立っている。
海外の選手は、背が高い、低いに関わらず、そうした「懐が深い」プレーをする選手が多い。逆に、日本人にはそういう選手が少ない。これが1つめの違いである。
2つ目は、インサイドキックで撃つシュートの威力の違い。
Jリーグでも海外サッカーでも、その節のスーパーゴール集、もしくはハイライト、みたいな動画が大抵あり、そしてそいういう動画では、迫力のあるミドルシュートが取り上げられることが多い。
ハイライトで見れば、Jリーグでも結構派手なシュートは決まっていて、決して海外サッカーと較べて見劣りするものではないのだが、そういうハイライトには決まってスロー再生があり、そのスロー再生でシュートシーンを見ると、Jリーグのミドルシュートはインステップで蹴られていることが多いのに対して、海外のサッカーでは、かなり威力があるシュートでも、インサイドで蹴られていることが多い。
インステップは足の甲で蹴るので、足の一番固い部分をボールに当てることが出来るし、膝が前向きになる分、足の振りもスムーズになる。結果、芯を食えば必ず強いボールが行く。その反面、足の細い部分で蹴るので、細かいコースの調整は難しい。一方でインサイドキックの場合は、足の内側の面積が広い箇所で蹴るため、細かい調整が出来るが、反面、膝が外向きになるので、シュートの威力を出しづらい。
海外リーグの選手を見ていると、インサイドでも、日本人のインステップと同じぐらいの威力のシュートを飛ばしていることが多い。そうなると、威力という面では同じでも、正確性、つまり枠を捉える確率、さらには枠内でGKが取れないところに飛ばせる確率、というのは飛躍的に上がる。また、インステップで蹴る場合は、蹴り足の外側に蹴る、というのはかなり難しい(足の甲の内側に当てるよりも外側に当てる方が難しい)のだが、インサイドで蹴る場合は膝や体を開く角度を調節することで蹴り足の外側にもボールを飛ばし易いので、特にゴールのファーサイド側に強いシュートを撃ちたい場合は、インサイドで強いボールを撃てるかどうか、というのが成否の分かれ目になる。プレミアリーグで言うと、トッテナム・ホットスパーのハリー・ケインが、そういうシュートが非常に上手い。他にもエヴァートンのウェイン・ルーニー、マンチェスターシティのデブライネなども、インサイドキックのシュートに非常に威力がある。日本人で言うと、大迫がやや、そういうシュートが上手いかな、というぐらいで、他にはそういう選手が見当たらない。これが2つ目である。
ざっくりとしたイメージとして、日本人選手は外国人選手と比べて、俊敏さや上手さ、という物はあるが、どっしり感や怖さという物は少ない、と感じる。日本代表で本田圭佑が重宝されるのも、彼にはそれがあるから、ではないだろうか。
そして、どっしり感というのはキープ力、怖さというのはシュート力だと言い換えることも出来るので、上に挙げた2つの違い、というのは、日本人選手が意識すべき要素なのではないだろうか。
関連記事: