日時 | 2018年10月6日(土)14:00 |
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試合会場 | ヤンマースタジアム長居 |
試合結果 | 0-1 ガンバ大阪勝利 |
セレッソが勝ち点41で7位、ガンバが勝ち点33で13位という中で迎えた、今シーズン2度目の大阪ダービー。順位はセレッソの方が上だが、セレッソは直近のリーグ戦5試合で2勝2分1敗、最後の勝利は9月1日の浦和戦と失速気味であるのに対して、ガンバの方は4勝1敗、4連勝中と上り調子。順位ほどの実力差は無い、という状況での一戦である。
24 山村 |
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10 清武 |
7 水沼 |
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14 丸橋 |
11 ソウザ |
6 山口 |
2 松田 |
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43 オスマル |
22 ヨニッチ |
15 木本 |
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21 ジンヒョン |
この試合のセレッソのフォーメーションは、山村和也を1トップに置く3-4-2-1。セレッソは21節、コンサドーレ札幌戦から、従来の4バックをやめ、3バックのフォーメーションを採用している。布陣変更の理由としては、ワールドカップの中断期間明けから全く勝てなくなり、何かを変える必要があった、というのがまず1つ。更に、現在のJリーグには3バックのチームが多く、4バックだとマークをずらされて苦労することが多かったため、自分たちも3バック化してマッチアップを合わせる、というのがもう1つ。そして、オスマルとソウザを同時に使いたいから、と言うのがもう1つ。現在のセレッソには5人の外国人(GKジンヒョン、DFヨニッチ、MFオスマル、ソウザ、FWドンヒョン)がいるのだが、試合出場できるのは3人+アジア枠1人までなので、誰かを外さなければならない。GKジンヒョン、DFヨニッチ、MFソウザは純然たる主力なので、残りの2人のうち、調子を落としているドンヒョンを外してオスマルを入れたいのだが、彼の適正ポジションは4-4-2だと左ボランチしかなく、ソウザとかぶってしまう。3バックであれば左のCBに入れて高さとビルドアップ能力を活かせる、ということで、これも3バックを採用するひとつの理由になっている。
一方、前線については離脱者が多く、杉本健勇が肩の脱臼、柿谷が体調不良で離脱中。出場している山村も、前日練習で左手甲を痛めており、骨折が疑われる中での強行出場である。また、シャドーに入った清武も太腿の筋肉の張りがずっとある状況で出場を続けており、この試合中も、何度も足を伸ばす仕草をしながらプレーしていて、現在のセレッソの前線は、コンディションが良好な選手が乏しい状況になっている。
39 渡邉 |
9 アデミウソン |
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10 倉田 |
50 小野瀬 |
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15 今野 |
7 遠藤 |
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4 藤春 |
3 ファビオ |
5 三浦 |
22 ジェソク |
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1 東口 |
一方のガンバ大阪のフォーメーションは、渡邉千真とアデミウソンを2トップに置く4-4-2。チーム内得点王であるFWファンウィジョは前節広島戦で受けたイエローにより、累積警告で出場停止となっている。ボランチの位置には、右足の負傷で長期離脱していた今野が9月1日の川崎戦からスタメンに復帰しており、彼がガンバの復調に大きく寄与している。
さて、上記のようにこの試合は3-4-2-1対4-4-2の試合ということで、お互いマッチアップは合っていないのだが、どちらのチームもゾーン的な守備なので、マッチアップをどうするかよりも、如何に危険なエリアにボールを入れさせないか、と言う考え方の守備になっている。言い方を変えれば、お互い、相手がどこでフリーになるか、自分たちがどこでフリーになれるか、分かった上で戦っている、と言うことになる。
まず、セレッソの方で言うと、下図のように、守備時には5バック化し、ボールサイドのシャドーの選手が当たりに出て、逆サイドのシャドーは前残りすると言う、左右非対称の5-3-2の形になる。
よって、図中のグレーのゾーン、ボランチの脇にスペースが出来やすい。ガンバの方はそのスペースでSHが絞って受けたり、2トップが流れて受けたりして起点を作る、と言うのが狙いの1つ。ただ、その点はセレッソも折り込み済みで、陣形が押しあがってスペースがゴールから遠い場合は相手が受けても放置するが、押し下がってきてスペースがゴールに近づいたり、ボールを受けた選手が前向きにボールを運ぼうとした場合はDFラインから3バックのボールサイドの選手が出てきて対応するようになっている。
また、ガンバの方のもう一つの狙いとしては、3バックの1枚が前に出てきた時の裏のスペース、と言うものもあった。特に、セレッソから見て左、オスマルとヨニッチの間を抜けて裏を狙う、と言う形を再三見せていて、これはこの2人の特徴、高さや当たりには強いがアジリティではガンバのFWに分がある、という点を考慮してのものだと考えられる。
一方のガンバの方は、オーソドックスな4-4-2ゾーンディフェンスの約束事通り、ボールサイドでは2人の選手が横並びになって、バイタルへのパスコースを制限する。この2人1組をボールサイドのSHとSBで構成する場合は、下図のようにSBの裏、CBの脇にスペースが出来る。
SBが前に出ず、ボールサイドのボランチがSHの側に絞る場合は、下図のように逆サイドにスペースが出来る。
セレッソの方としては、前者の場合は1トップやシャドーがサイドのスペースに流れて起点を作る、後者の場合はボールサイドのWBから逆サイドのWBにワイドにボールを動かしてチャンスを作る、と言う形が狙いだった。
試合は序盤こそセレッソが連続してチャンスを迎えたが、その後膠着状態に。そして、前半10分にはセレッソの右WBの松田が左脚太腿裏の負傷(恐らく肉離れ)で交代。代わりの右WBとして、高木俊幸が投入された。
ガンバの先制点が生まれたのは前半終了間際の45分だった。
この時間帯、セレッソの方はガンバにボールを回させて、自分たちは奪ってカウンターを狙う、という戦い方になっていたのだが、このシーンでは、まずセレッソのカウンターになりそうだった所を今野が山村からボールを奪い返し、遠藤、三浦とボールが下がって、三浦が遠藤に戻し、右に流れてきた倉田が遠藤からボールを受けた。上述の通り、ガンバはセレッソのボランチの脇で起点を作る形、そしてヨニッチとオスマルの裏を狙う形を狙っており、ここでは小野瀬がボランチの脇のスペースへ、そしてアデミウソンが小野瀬の対応に出たオスマルの裏へ。一方セレッソの方は、倉田の前に入った清武が小野瀬へのパスコースを限定し、オスマルも背後から詰めていたので、グラウンダーのパスコースは消している、という状態だった。
パスコースが無い為、倉田は裏に走ったアデミウソンへの浮き球のパスを選択。浮き球だったので、ヨニッチの対応は間に合っていたのだが、何故かGKジンヒョンがゴールマウスから飛び出してしまい、それを見たアデミウソンがループシュートを放って、これがゴールに吸い込まれた。アデミウソンにとっては、本来浮き球のパスはコントロールしにくいボールなのだが、ジンヒョンが飛び出したことで、逆にループを狙うにはちょうど良いボールになった。
ガンバからすると、倉田が右に流れてくる、というのは宮本監督就任直後から行っている形、更に小野瀬、アデミウソンの動きも含め、狙っていた形で奪った得点と言えるもの。逆にセレッソの方から見ると、ガンバの狙いは分かっていて、そのための準備も出来ていたのにやられてしまった、という感じの失点だった。
後半は前半の終盤とは逆に、ビハインドを背負ったセレッソが攻撃的になり、それに対してガンバがカウンターを狙う、という展開に。ただ、セレッソの方は山村は本来的にはストライカーではないし、水沼も本来はシャドー的なプレーよりもウィング的なプレーの方が得意な選手なので、どうしてもフィニッシュであったり、その一つ二つ前の局面でミスが出やすくなってしまう。また、ソウザや水沼が右サイドに流れて、高木が中に入る、という形も見受けられたが、高木も本来得意なプレーは左から中へ、というプレーなので、そこもちょっとチグハグだった。試合中に受傷した松田も含め、怪我人が多い、というのもあるが、セレッソには左利きのシャドー、左利きのウィング、というタイプの選手がいないので、その点も選択肢を狭めている一因であると言える。
後半25分、セレッソは水沼を下げて澤上を投入。澤上を1トップに入れ、山村をシャドーに。
19 澤上 |
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10 清武 |
24 山村 |
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14 丸橋 |
11 ソウザ |
6 山口 |
13 高木 |
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43 オスマル |
22 ヨニッチ |
15 木本 |
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21 ジンヒョン |
水沼はシャドーでプレーしていたが、あまりしっくり来ておらずバイタルで受けた時のプレーが窮屈そうな感じだったので、そこを変えたかった、というのが1つ、澤上は本職のセンターFWなので、山村よりもフィニッシュワークに特化した働きが期待できる、というのが1つ、また、澤上はベンチメンバーでは唯一の左利きなので、それも1つだったと思う。
ここの采配はユンジョンファン監督にとっては難しかったのではないだろうか。WBが中に入るプレーを増やしていたので、本来であれば高木を左WBに回したいのだが、そうなるとプレースキッカーでもある丸橋を下げるしかない。理想は高木を左シャドーに入れ、右WBに左利きの選手を入れる形だが、上述の通りそれに該当するベンチメンバーはいない。丸橋を右WBに回すという手も理論上は存在するが、それは流石に無理筋なので。
一方のガンバの方は、後半30分に倉田を下げて米倉を投入。既に守備を固めてカウンター、という戦い方が色濃くなっていたので、こちらはより守備的な働きが出来る選手を、という采配だったと思う。米倉はそのまま、倉田のいた左SHのポジションに入った。
更に後半35分には、足が攣ってしまったアデミウソンを下げてFW一美を投入。一美もそのままアデミウソンのポジションに入った。
39 渡邉 |
19 一美 |
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14 米倉 |
50 小野瀬 |
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15 今野 |
7 遠藤 |
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4 藤春 |
3 ファビオ |
5 三浦 |
22 ジェソク |
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1 東口 |
結局、試合終盤のセレッソは崩すというよりもセットプレーでもぎ取る、という狙いのサッカーに変えて、しかしそこから得点を奪うことは叶わず、試合は0-1、ガンバの勝利で終わった。
お互い、狙いとしているプレーがはっきりしていた中で、ガンバはその狙いをゴールに結びつけた、一方でセレッソの方は、前半13分には左WB丸橋のクロスに右WBの高木が飛び込む形、後半8分にはその逆、右WBの高木のクロスに左WBの丸橋が飛び込む形があり、上述のようにWBからWBへのワイドな展開というのは狙っていた形だったと思うのだが、いずれもゴールに結び付けられなかった。また、ガンバのGK東口が安定したセービングを見せていたのに対して、セレッソの方はジンヒョンにミスが出てしまった。差があったのはその2つだったかなと。
あとセレッソの方は、セットプレーにもっとバリエーションが欲しかったなと。今のセレッソの攻撃でセットプレーは大きな比重を占めているが、ショートコーナーやサインプレーも皆無だったので、そこはもっと準備が必要だったのではないだろうか。
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