Jリーグの外国人枠拡大について考えてみる

現在Jリーグでは、来季からの外国人枠の拡大が検討されている。今回はこの案件について私見を書いてみようと思う。

Jリーグ、選手登録無限、5人同時起用外国人枠拡大へ…来季導入プラン各クラブに提示

 Jリーグが来季から計画する外国籍枠拡大の詳細が7日、分かった。チームに登録できる外国籍選手を現行の「5」から「無制限」、試合出場&ベンチ入りを「3+1(アジア枠)」から「5」にするプランをJ各クラブに提示。承認されれば、今季J1神戸に加入したMFアンドレス・イニエスタ(34)やJ1鳥栖に加入したフェルナンドトーレス(34)クラスの大物選手を1クラブが同時に5人起用できるリーグへと変貌を遂げることになる。

先に結論を書くと、外国人枠を「5」にする、というのはかなりギリギリのラインだと考えていて、枠を5つにするのであれば、何らかの制限も追加で設けた方が良いと考えている。

何故5枠という数字がギリギリなのかというと、4-4-2のチームの場合、GK、CB、ボランチを全て外国人で賄えてしまうからである。この3つのポジションは日本代表でも人材が少ないポジションであり、試合中に交代が行われる可能性が少ないポジションでもある。
つまり、外国人枠を5つに拡大した場合、上記のポジションについては、日本人に人材が少ないので外国人で賄う→日本人が出場経験を積めない→ますます人材が少なくなる、という悪循環に陥る可能性がある。

参考までに、現在のJ1の外国人枠がどのように使われているか、GK、CB、ボランチ、そしてその他のポジションに分けて見てみる。

順位 チーム GK CB ボランチ FW/SH/SB/他
1 広島 フェリペ・シウバ
ベリーシャ
ティーラシン
パトリック
2 川崎F ソンリョン エドゥアルド ネット エウシーニョ
3 FC東京 ヒョンス オリヴェイラ
リンス
4 札幌 ソンユン ミンテ ジュリーニョ チャナティップ
ヘイス
ジェイ
5 C大阪 ジンヒョン ヨニッチ
オスマル
ソウザ ドンヒョン
6 仙台
7 神戸 スンギュ ヤセル
ウヨン
イニエスタ ティーラトン
ポドルスキ
レアンドロ
ウェリントン
8 鹿島 スンテ スンヒョン レオシルバ レアンドロ
セルジーニョ
ペドロジュニオール
9 浦和 マウリシオ マルティノス
ファブリシオ
ナバウト
ズラタン
10 磐田 カミンスキー ムサエフ ギレルメ
アダイウトン
11 名古屋 ランゲラク ホーシャ
ワシントン
ネット シャビエル
ジョー
12 清水 ソッコ
フレイレ
デューク
クリスラン
ドウグラス
13 湘南 バイア ミキッチ
ジョンヒョプ
ステバノヴィッチ
14 横浜FM デゲネク
ドゥシャン
マルチンス
バブンスキー ブマル
イルロク
ヴィエイラ
15 ヒベイロ
ジョンス
ボギョン ソギョン
クリスティアーノ
ロペス
オルンガ
16 鳥栖 ミンヒョク
オマリ
トーレス
イバルボ
ヨンウ
ドンゴン
17 G大阪 ファビオ マテウス ジェソク
アデミウソン
ウィジョ
18 長崎 キュベック
バイス
ハロラン
ファンマ
合計 7 24 10 48

各選手のポジションは、Football LABの選手の詳細ページの出場ポジションから、一番回数が多いポジションを採用した。
http://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2018
出場ポジションのデータのない選手は検索で適宜補い、回数が等しい場合は主観で判断とした。在日枠は除外している。

上記を見ると、J1のチームが今シーズン消費している外国人枠は合計で89。そのうち41、およそ半数がGK、CB、ボランチに使われていることになる。
特にGKとCBに関しては近年、外国人が増加傾向にある。以前であればこれらのポジションは日本語でコミュニケーションが取れたほうが良い、ということから日本人が務めることが多かったが、最近では寧ろ、能力の高い外国人に、日本人が合わせたほうが良い、という方向性になっている気がする。元々Jリーグでは、攻撃に関しては能力の高い外国人FWに日本人が合わせる、という傾向だったので、そうした傾向が守備にも出始めている、と言えるのかもしれない。
また、GKに関しては韓国人の代表クラスの選手が、好待遇を求めてJリーグに移籍してくる、というパターンも増えている。アジアで最も資金力があるのは中国スーパーリーグだが、このリーグは外国人がGKを務めることが出来ないので、それに次ぐ資金力を持っているJリーグに、ということなのだと考えられる。

いずれにせよ、外国人枠を増やせば、この傾向はより強まる可能性が高い。そして最初に述べたように、枠の数が「5」になると、GK、CB、ボランチ全てを外国人で賄うことが出来てしまう。実際には、FWに全く枠を使わない、という可能性は低いので、5枠全てをこれらのポジションにあてがうチームは少ないと思うが、それでも、日本人に用意される枠は1枠か2枠、ということになってしまうと、代表に良いGK、良いCB、良いボランチを送り込む、という観点から見た場合、相当厳しい状況になる。

勿論、外国人枠の拡大に、商業的な意図があるのは分かる。Jリーグにアンドレス・イニエスタやフェルナンド・トーレス、ルーカス・ポドルスキのような選手をもっと連れて来たい、それによって商業的な成功につなげたい、という思惑があるのは分かる。そしてそれは、代表の強化とも矛盾しない。商業的に成功していないリーグから良い選手が育つ可能性は低い。要はバランスなのだと思う。
よって個人的には、下記いずれかの制限を、追加で設けるのが良いと考える。

  • GKは日本人のみとする。
  • 試合登録は5名まで認めるが、フィールド上は4名までとする。
  • 外国人の年俸に下限を設ける。

繰り返しになるが、5枠を無条件に開放するのは危険だと思う。いつの日か、日本人のGK、ボランチ、CBが海外の選手と同等の競争力を持った時に検討する方が良い。