リーグ戦王者対カップ戦王者。J1第7節 川崎フロンターレ VS セレッソ大阪

日時 2018年4月11日(水)19:00
試合会場 等々力陸上競技場
試合結果 1-2 セレッソ大阪勝利

昨シーズンのリーグ王者とカップ戦王者との対戦。
川崎から見ると、セレッソは昨シーズンのルヴァンカップ決勝、そして今シーズン始めのゼロックススーパーカップという、タイトルのかかった試合で敗れた相手。セレッソから見ると、アウェイでの川崎戦は昨シーズン、5-1と大敗したカード。両チームにとって、勝利へのモチベーションには事欠かない試合だったが、結果は1-2、アウェイのセレッソが勝利を収めた。

セレッソ大阪フォーメーション
18
ドンヒョン
32
亜土夢
8
柿谷
17
福満
24
山村
6
山口
14
丸橋
23
山下
22
ヨニッチ
16
片山
21
ジンヒョン

セレッソのフォーメーションはヤン・ドンヒョンと柿谷を2トップに置く4-4-2。
セレッソはリーグ戦とACLの掛け持ち、しかも今シーズンはロシアワールドカップの中断期間を確保するための過密日程ということで、シーズン当初から積極的にターンオーバーを行っている。直前の試合、4月7日に行われたJ1第6節サガン鳥栖戦から連続してスタメンとなったのはGKジンヒョン、CBヨニッチ、左SB丸橋、ボランチ山口、そしてFWの柿谷。それ以外は全て入れ替わっている。

川崎フロンターレ フォーメーション
20
知念
16
長谷川
4
大久保
11
小林
21
ネット
10
大島
2
登里
23
エドゥアルド
5
谷口
17
武岡
1
ソンリョン

川崎のフォーメーションは知念を1トップに置く4-2-3-1。
こちらもセレッソと条件は同じで、リーグ戦とACLを掛け持ちしながら戦っている。ただし、川崎についてはACLの敗退が既に決定しているため、リーグ戦の重要度はより増している。
今年の移籍市場で最も話題をさらった選手、横浜F・マリノスから加入した斎藤学は、ベンチからのスタートとなった。

川崎の方は、昨年のルヴァンカップでの対戦時には、大島とネットの2ボランチがセレッソの杉本、柿谷の2トップの守備を剥がせず、攻撃がサイド偏重になってしまった、というのが敗戦の一因だったのだが、この試合では、その時の反省からなのか、トップ下の大久保がセレッソの2トップの脇のスペースに下りて来て、3ボランチのようになるシーンが多かった。
また、大久保は前線にいる時も、中央のバイタルエリアにいることは殆どなく、少しサイド寄り、セレッソのCB、SB、ボランチ、SHの四角形のちょうど真ん中あたりの中途半端なポジションを取ることが多かった。大久保はこうした、相手が掴まえにくいポジションを取るのが凄く上手な選手で、試合の序盤は、この大久保のポジショニングによってセレッソがボールの取りどころを絞るのが難しくなり、川崎がボールを支配する、という展開になった。この試合のスタッツでは、前半15分までの川崎のポゼッションは69.2%となっており、圧倒的な支配率を記録している。
セレッソの方は、こうした川崎の攻撃に対して、主に左SHの田中亜土夢が、少し前目の中央に入って3人目のFWのような動きをするようになっていく。ただ、大久保に付いて行き過ぎると、今度は本来自身が埋めるサイドのスペースが空いて、そこを川崎のSB、SHに使われてしまうので、トップ下とサイドの選手、危険な方を選びながら守る、という感じだった。

セレッソの方は、そうした守備を完全に整理できていたわけではなく、田中亜土夢の個人の判断で守っている、という感じだったのだが、川崎の方も、トップ下が引いていくと前線は1トップの知念と左SHの長谷川、右SHの小林悠の3枚だけになってしまい、そうなるとセレッソの方はSBも中央に絞っているので、ゴール前ではセレッソの4バックに対して数的不利の状況。ボールは支配できるが、決定的なチャンスまでには至らない、という感じだった。
大久保が引いてきたタイミングでボランチがトップ下のポジションまで上がって行くとか、大久保がセレッソのSHを引っ張り出したタイミングでSBが上がって行く、などの連動性があればもっと怖い攻撃になっていたはずだが、現状のJリーグはロシアワールドカップの中断期間を確保するために、ほぼ週2試合という過密日程になっていて、そこまでの戦術的な落とし込みは出来なかったのかもしれない。
ただ、前半27分には、大久保が引いてきてCB谷口に預け、それと同時に大島が大久保を追い越して谷口からボールを引き出す、というシーンがあった。そこから大久保が、ボールホルダーの大島を更に追い越してバイタルに走り込んだのだが、セレッソの方は大久保と谷口のパス交換の時に山村が引っ張り出されてしまい、バイタルが山口一枚、そこに大島、そして大島を追い越してバイタルに入ってきた大久保の2枚、という状況になった。大島からのパスを受けた知念の落しが少し悪く、チャンスにはならなかったが、こういう連携が今後増えてくると、セレッソにとっても間違いなく脅威になってくると思う。

試合は前半22分、川崎が先制。上述の川崎の狙い、セレッソの守備、というものとは関係なく、川崎のボランチ、ネットのロングボールから生まれた得点だった。
この試合中、ピッチ上ではかなり強い風が常時吹いていて、前半はセレッソが風上、川崎が風下、という状態だった。よって、ネットのキックは風に戻されて失速しながら落ちてきたのだが、セレッソの方はGKジンヒョンが風による失速を計算せず、ペナルティエリアの中でキャッチできると思って前に出てきてしまった。しかし、実際にボールがバウンドしたのはペナルティエリアの手前。バウンドしたボールを川崎のFW知念が1トラップしてボールを横に動かし、ジンヒョンはそれに付いて行こうとしたのだが、知念のマークに付いていたヨニッチと交錯してしまい、倒れてシュートコースを防ぎきれずに失点となってしまった。

しかしこの失点の9分後、前半31分に、セレッソは丸橋のFKで同点に追いつく。
川崎陣内、ペナルティエリアの手前5mぐらい、セレッソから見て右寄りからのFKだったのだが、決まった理由の1つは、蹴られた瞬間に川崎のGKソンリョンがファーサイド側にステップを踏んでしまったことだった(ゴールはニア側に決まった)。ただ、これは一概にGKのミスとは言えなくて、川崎はFKに対してゾーンで、つまり横一直線に並んで守っていたのだが、FKの瞬間に中央の選手は下がったのに対してファー側の選手はオフサイドを取ろうとして下がらなかったので、ラインが揃っておらず、セレッソがファー側に立てていたヨニッチ、山下、ドンヒョンと言った上背のある選手がオンサイド、かつフリーでゴール前に入って来そうで、そこが目に入った、という可能性はある。
また、丸橋もファー側に顔と身体を向けた状態でニアに蹴る、というフェイクを見せていたので、そこも効いていたと思う。こう言うフェイクはかつてセレッソに所属していたFKの名手、古橋達弥が得意としていたが、それを思い出すようなFKだった。
もう一つは、これは恐らくなのだが、ボールがほんの少しだけ、壁に入っていた大久保の頭をかすめたのではないかと思う。スローで見るとソンリョンが伸ばした手のボール一つ分ぐらい上に決まっているので、コースが変わったのかもしれない。

またもう一つ、得点につながったプレーという物があって、それは得点シーン直前の、柿谷の守備だった。
センターサークル上で、川崎から見て左から、ボールを持った大久保、その少し右斜め前に大島、その更に右斜め前にネット、という一直線の状態になったのを見て、真ん中の大島に向けてダッシュ。直線状に並んでいるので、大島に向かえばネットへのパスコースも同時に切れる。大久保は柿谷が大島に寄せたのでその先のネットへのパスを選択したが、そこも柿谷の足の届く範囲内、ということで柿谷は飛び込んでパスをカット、ボールを山村が回収し、右サイドを上がった福満にパス。大久保は自分のパスミスからのカウンターということでファウルで福満を止め、これが丸橋のFKからのゴールにつながった。

更に前半36分、セレッソが逆転に成功する。セレッソのCKを川崎のGKソンリョンがパンチングで弾いて空中に上がったボールに、福満が猛然と躍り上がり、ヘディングでゴールに叩き込んだ。福満に付いていたのは大島だったが、福満は空中のボールに飛び込んだのに対して、大島はボールの落下を待ってしまったので、そこの差、ボールへの執着心で福満が勝った、というゴールだった。

結局、この福満のゴールが決勝ゴールとなった。
川崎は後半9分にネットを下げて守田、長谷川を下げて斎藤学を投入し、同点を狙いに行ったが、セレッソは後半25分にドンヒョンに代えて杉本、後半26分には田中亜土夢に代えて清武を投入し、更に後半39分には福満を下げて木本を投入して3バックにして逃げ切った。

セレッソ大阪フォーメーション(後半39分以降)
8
柿谷
9
杉本
10
清武
24
山村
6
山口
14
丸橋
16
片山
23
山下
22
ヨニッチ
15
木本
21
ジンヒョン

注目の新加入の斎藤学だったが、まだ、どういう風に自分の能力をチームに落とし込むか、探りながらプレーしている感じだった。川崎に加入した選手は、家長にしても、阿部にしても、大体最初はそういう感じになっていたので、これから徐々にフィットしていくのではないかと思うが、現時点ではまだまだ、というプレーだった。

また、川崎は精密機械的なチームと言うか、綺麗に合わせる、ということを目指すチームなので、選手全員のイメージが合わないとなかなか数字に出てこないのだが、この試合でも、あと一歩で合った、というシーンはかなり多く、試合としてはセレッソが勝利したが、内容としては相当な僅差だったと思う。多分、ワールドカップの中断期間中にも引き出しは増やしてくると思うので、早くも次の対戦が楽しみになるような試合だった。

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