左サイドバックの守備力がタイトルを分ける。天皇杯決勝 セレッソ大阪 VS 横浜F・マリノス

日時 2018年1月1日(月)14:42
試合会場 埼玉スタジアム2002
試合結果 2-1 セレッソ大阪勝利

ヴィッセル神戸との120分に及ぶ戦いを制して14年ぶりに元日の天皇杯決勝へと勝ち上がったセレッソ。
決勝で相対するマリノスは、こちらも準決勝で、柏レイソルと延長まで激闘し、ウーゴ・ヴィエイラの土壇場のゴールで決勝への切符を掴み取ったチームである。

両チームともに、リーグ戦、そして天皇杯決勝への道のりを戦ってきた中で、主力に何人もの負傷者が出ている。離脱してしまった選手、疲弊してコンディションが万全でない選手、そしてそうした選手の穴を埋める控えの選手たちも含め、前年に積み上げたチームのリソースを結集して、新たな年の最初のタイトルを取りに行く。
元日に開催される天皇杯の決勝は、いつもそういう戦いになる。

セレッソ大阪フォーメーション
8
柿谷
24
山村
46
清武
16
水沼
6
ソウザ
10
山口
14
丸橋
15
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

この試合のセレッソは、柿谷と山村を2トップに置く4-4-2。セレッソの方は、杉本健勇が左足の手術で離脱中。天皇杯準決勝の神戸戦では、負傷を抱えている山口と柿谷がそれぞれ、山口はベンチ外、柿谷は後半途中からの出場となったが、この試合では両者ともにスタメン復帰を果たした。また、FW澤上も負傷によりベンチ外となっていて、その一方、準決勝では累積警告により出場できなかったFWリカルド・サントスとMF酒本がベンチに復帰している。

横浜F・マリノス フォーメーション
16
伊藤
24
山中
20
マルティノス
14
天野
33
バブンスキ
8
中町
23
下平
2
ジョンス
22
中澤
27
松原
21
飯倉

一方のマリノスは、1トップに伊藤翔、両ウィングに山中亮輔とマルティノス、IH(インサイドハーフ)に天野純とバブンスキ、アンカーに中町公祐を置く4-1-2-3でスタート。
こちらも怪我人が多数出ていて、エースであり、キャプテンでもある斎藤学が前年9月に負った右膝前十字靱帯の損傷で現在も離脱中。そして天皇杯準決勝の柏レイソル戦で、MF扇原貴宏、更には決勝点を挙げたウーゴ・ヴィエイラが負傷。前者はベンチ外、ヴィエイラについてはベンチスタートとなった。

キックオフ直後からのマリノスの戦い方は、セレッソが準決勝で戦った神戸と少し似ていて、セレッソがボールを持つと、IHの一枚が前に出てきて、1トップの伊藤と共にセレッソのボランチ2枚を見る、という4-4-2の形になる。ただ神戸と異なり、前に出てくるのは殆どの場合バブンスキなので、バブンスキと伊藤の2トップと捉えることも出来るような布陣だった。
ただし、マリノスボールになった時のバブンスキは、トップの位置にいるのではなく、セレッソ2トップの脇、2トップとボランチの間、SBとSHの間(ボランチの脇)、などのスペースで中途半端なポジションを取ってボールを受ける、という流動的なポジショニングだった。

マリノスの方は、このバブンスキを使ってショートパスをつなぐ形と、セレッソのDFラインの裏に向けてロングボール、またはアーリークロスを上げる形を持っていて、1トップの伊藤と右ウィングのマルティノスがそのターゲットとなって、セレッソのDFラインの裏に走るシーンが何度も見られた。
そして、このアーリークロス、もしくはサイドで起点が出来た時のクロスでは、セレッソのファーサイドのCBとSBの間を狙っていく。セレッソの両SBの丸橋と松田は、ファーサイドから上がってくるクロスに対して絞る動作をあまりしないので、そこを狙う、というのがこの試合でマリノスが準備してきた攻撃だった。

前半開始直後の55秒、右サイド(セレッソから見て左サイド)をドリブルで駆け上がったマルティノスが、ファーサイド、ヨニッチと松田の間のスペースに向けてクロス、これは伊藤が上手く足に当てることが出来ず、ボールをGKジンヒョンがキャッチ。続く前半5分33秒には、マリノスのGK飯倉がキャッチしたボールを左ウィングの山中に預け、山中がファーサイド、木本と丸橋の間のスペースに向けてアーリークロス、伊藤が走りこんだがオフサイド、というシーンがあった。

そして、セレッソはマリノスが狙いを定めていたこの形から、失点を喫してしまう。
前半7分、ボールを持ったマリノスのアンカー中町が、左サイド(セレッソから見て右サイド)に向けてロングボール。これは松田がヘディングで跳ね返したが、跳ね返したボールが直接天野に渡ってしまった。天野が左SB下平にボールを落とし、下平が木本と丸橋の間のスペースに走りこんだ伊藤にアーリークロス。
この時の伊藤の動きが巧みで、クロスが上がる直前、木本がちらっと伊藤の方を見た時には木本の方に近づく動きを見せ、木本がボールの方に目線を向けた瞬間に、今度は離れる方向、木本の背後のスペースに動いて、完全にフリーになった。そして、下平のアーリークロスは木本の頭を越えて伊藤の元へ。伊藤は胸トラップでボールを足元に落とし、飛び出してきたGKジンヒョンがボールに触る前につま先を伸ばしてシュート。ファーサイドのゴールポスト内側にボールを沈めた。

伊藤は前半開始55秒のシーンでも同じように、前に入る素振りを見せてから動きなおす、というフェイクでヨニッチの背後を取っていたので、CBとSBの間に落とすクロスと合わせて、この試合のためにパターン化して準備してきたのだと考えられる。
木本からすると、伊藤が自分に近づく動きをしていたので、クロスも自分に向かって飛んでくるはずと思ったところが、頭を越えてきた、そしていつの間にか伊藤も自分から離れた後ろのスペースにいた、ということで、CBとしては完全に駆け引きでやられてしまった、というシーンだった。
ただ、ピンチを招いた発端は右SB松田がクリアボールを天野に渡してしまったからだし、左SBの丸橋も、クロスの対応を木本に任せてしまってカバーのポジションを取らなかったので、単純に木本だけの責任、とは言えない。
特に丸橋に関しては、準決勝の神戸戦の戦評で、下記のように書いた手前、やはり、と思わざるを得なかった。

元日の埼玉へ。天皇杯準決勝 ヴィッセル神戸 VS セレッソ大阪

一般的に、守備力のあるSBというと、ボールサイドで相手のウィングとバチバチやり合うような選手をイメージするが、実際には、ボールが逆サイドにある時に味方のCBの背後をカバーするプレーの方が、その選手の守備センスという物が問われやすく、また失点を防ぐ要因にもなりやすい。
丸橋がそこをもう少し上げて、一つレベルの高い守備者になれれば、彼にはまだ、日本代表になるチャンスが残っていると思う。

リーグ戦最終節、新潟戦のホニのゴール、天皇杯準決勝、神戸戦の大森のクロスが直接入ってしまったゴール、そしてこの試合の伊藤のゴール。いずれも、丸橋のせいで喫したゴールではないが、しかしいずれも、丸橋がより良い守備意識を持っていれば防げた、丸橋がもう少し、CBの後ろをカバーできていれば防げた、というゴールだったので、丸橋はそろそろ、そういう要求レベルに応えるべき立場になってきているのではないだろうか。丸橋のカバーリングで、木本を救ってあげてほしかった。

さて、失点してしまったセレッソだったが、まだ前半の早い時間、ということで、大きく戦い方を変えることは無かった。ただ、リードを奪われたので、より前からハメにいく、ボールを積極的に取り返しに行く、という傾向が強くなった。
マリノスは、DFラインからの組み立ての際、アンカーの中町がCBの間に下りて、CBが両ワイドに大きく開き、SBを上げる、という決まった形がある。両ワイドのCBと中央にいるアンカー、それにGK、この4人の間をあえて広げることで、相手のプレスを広げてボールを安定化させる設計になっている。
これに対してセレッソは、マリノスのCBが開いた時は山村がサイドまで追いかけて行って、アンカーの中町のところにも山口、またはソウザが出て行って前からハメに行く。セレッソの前線、中盤はみな運動量が多いので、マリノスに容易にボールを回させない。
また、それはマリノスの方も同じで、セレッソのCB・ボランチがボールを持つと、前線中央の伊藤とバブンスキが、そしてセレッソのSBがボールを持つと、両ワイドの山中・マルティノスが素早くプレスを掛けて、自由に組み立てることを許さない。
そして、両チームとも、一番怖いのは組み立ての段階で引っ掛けられて、ゴールに近い位置でカウンターを受けてしまうことなので、結局前半は、セレッソ、マリノス共に、組み立ての段階で相手のプレスがハマりそうなら、無理をせず長いボールを蹴る、という展開になって行った。
杉本がいる時のセレッソであれば、こうした展開で優位に立てるのだが、この試合は杉本がいない、そしてマリノスには39歳になってなお、空中戦に無類の強さを誇る中澤佑二がいる、そしてその前にいる中町も、ロングボールのこぼれ球を回収して味方に繋げたり、自身がボールを跳ね返したりとかなり効いていて、前半のセレッソが迎えた得点になりそうなシーンは、実質セットプレーのみだった。
ただ、マリノスの方は前半終了間際に、前線の守備で奮闘していた左ウィングの山中が負傷してしまい、代わって遠藤渓太がピッチへ。そして前半はそのまま、マリノスの1点リードで折り返した。

後半に入るとすぐ、セレッソがCKから何度かチャンスを作ったのだが、その後、後半6分から12分ぐらいは、両チームが間延びした状態で、カウンターを仕掛け合うような、オープンな展開になった。そして、この時間ぐらいからマリノスの方は、両ウィングのポジションを入れ替えて、マルティノスが左サイド、遠藤が右サイドになった。
入れ替えた意図はちょっと分からないが、後半開始直後から、セレッソが左サイド(マリノスから見て右サイド)から押し込んでいたので、マルティノスが守備で疲弊するのを避けたかったのかもしれない。ただセレッソの方は、左SB丸橋よりも右SBの松田の方がドリブラーに対する対人守備は強いので、マルティノスにボールが渡っても前半ほどはチャンスを作らせずに守れていた。

そして、この時間帯ぐらいから、五分五分だった試合展開が、少しずつセレッソの方に傾き始める。マリノスは、バブンスキと伊藤のうち、伊藤の方の運動量が少し落ちて、セレッソのボランチに対する守備に参加できないシーンが出てきた。そうなると、マリノスはバブンスキ一人でセレッソの2ボランチを見なければいけない。逆にセレッソの方は、ボランチのところに清武や山村が下りてきたり、CBの木本がボールを持ってボランチのラインに上がってきたりと、ボランチのサポートを増やしてきたので、猶更、バブンスキだけでは守れなくなっていく。マリノスの方は、前線の守備でパスコースを限定できないので全体が下がる、そうなると前半は拾えていたセカンドボールも拾えなくなる、結果、徐々にセレッソが能動的にボールを回す、マリノスがそれに対して受動的に対応する、という展開になって行った。

そして後半19分、セレッソに同点ゴールが生まれる。
マリノス陣内、左サイド(マリノスから見て右サイド)に流れた柿谷が、ちょっと無理目の右足インスイングのボールをPA(ペナルティエリア)内ニアゾーンに走った清武に向けて上げて、これは松原がヘディングでクリアしたのだが、このこぼれ球を山口が拾った。
山口は、バイタルエリア少し右後ろぐらいで絞ったポジションを取っていた水沼へパス。マリノスは柿谷のクロスのところでアンカーとIHが全員、ボールサイドに寄っていたため、水沼の前方、バイタルにスペースが出来た状態になっていた。マルティノスが慌てて逆サイドから中に絞って対応しようとしたが、水沼は右足アウトサイドで切り返して絞ってきたマルティノスの逆を取り、完全にフリーになって右足でミドルシュート。このシュートはGK飯倉が跳ね返したが、シュートに威力があったため中に弾いてしまい、そこにソウザが詰めてきたので、右SB松原が慌ててクリア、しかし咄嗟の反応だったため大きくボールを出せず、クリアボールをPA内、右サイドで山村がカットし、逆サイドのゴールネットにシュートを突き刺した。

この得点シーンで良かったのは、まず柿谷が左に流れて出来たバイタルのスペースに水沼が入って行った、という流れ。これについては、狙ってその形を作ったのか、というのはちょっと分からないが、とにかくそれで水沼がバイタルで前向きにボールを持てた。
そこから、水沼のマルティノスを交わしてシュート、というプレーが良かったのと、そして何と言っても、クリアボールをシュートに持って行った山村のプレー。偶発的な状況だったにも関わらず、左足でカットしたボールを、右足でシュートを打てる場所にピタリと落としたので、スペースのないPA内で、シュートを打つ余裕を作ることが出来た。まるで生来のストライカーのようなプレーだった。

この得点の後、後半24分にマリノスはバブンスキに代えてウーゴ・ヴィエイラを投入。伊藤とヴィエイラを2トップに置く4-4-2に布陣を変えた。そして、ヴィエイラ投入のタイミングで、もう一度マルティノスが右SHに。マリノスとしては、怪我のため温存していたヴィエイラを、勝負所で投入、という采配だった。

横浜F・マリノス フォーメーション(後半24分時点)
16
伊藤
7
ヴィエイラ
18
遠藤
20
マルティノス
14
天野
8
中町
23
下平
2
ジョンス
22
中澤
27
松原
21
飯倉

FWが2枚になったこと、そしてヴィエイラは伊藤と比べても、より起点になる力、後ろからのボールを引き出したり、収めたりする力があるので、この交替によってマリノスの前線の迫力は増した。
そして、再度右に回ったマルティノスだが、やはり右SHに回ると良くなる。マルティノス自身が右を得意にしている、ということもあるのかもしれないし、左SBの下平がロングパスの出し手として優秀で、そこから右SHに向けて、対角線のロングボールが出てくる、というのもある。そして前述のように、セレッソの両SBの比較として、守備の対人プレーは左SB丸橋よりも右SB松田のほうが良い、ということもある。

マリノスのこの変更に対してセレッソの方は、後半31分に丸橋を下げて田中裕介を投入。前述の通り、マルティノスが右SHに戻って、また良いプレーを見せだしていた、それに対して丸橋の守備対応があまり良くなかった、ということで手当てをした采配だった。
そして後半34分には柿谷を下げ、リカルド・サントスを投入。柿谷は左足を痛めている中での強行出場だったので、ここまでが限界、という判断だったのかなと。

セレッソ大阪フォーメーション(後半34分時点)
11
リカルド
24
山村
46
清武
16
水沼
6
ソウザ
10
山口
5
田中
15
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

結局、試合は90分では決着がつかず、前後半15分ずつの延長戦へ。セレッソ、マリノス共に、準決勝に続く延長戦突入となった。

そして、延長後半4分。セレッソ水沼の勝ち越しゴールは、左サイドに開いた山村の右足のインスイングのクロスからだった。
セレッソから見て中盤左サイドでボールを持った清武がドリブルで大きく運び、PA内まで仕掛けたが、中澤が清武のドリブルをカット。このボールを左サイドにいた山村が拾い、一度左SBの田中へ。田中がもう一度山村にボールを返し、山村が右足でクロス。ファーサイドに蹴られたボールに対して、マリノスはGK飯倉が飛び出して処理しようとしたが、目測よりもボールが延びたことで触れず、ファーサイドから飛び込んできた水沼が、空いたゴールマウスにヘディングでボールを運んで、値千金のゴールを奪った。

山村のキックはボールの下を切るような、浮き球にバックスピンがかかるようなキックで、そういうキックをしたボールは普通のボールより少し伸びる。また、山村のクロスが上がった時、コーナーフラッグの動きを見ると、ファーサイド方向に少し強めの風が吹いていて、飯倉が目測を誤ったのは、山村のキック、風、その2つが原因だったのかなと。
また、目測を誤っていたのはマリノスの左SB、下平も同じで、水沼を押さえに行くというよりは飯倉がボールを取ってくれる前提の対応をしていたように見えた。つまり、クロスボールの当事者のうち、「ここに落ちてくる」という予測を一番正確にしていたのが水沼で、それが得点の大きな要因だったと言える。

試合後、セレッソ山村和也のコメント

リカルド(サントス)と(水沼)宏太がファーに行く動きは見えたので、ファーへ蹴ろうと思って、それが良いところに飛んで良かったです。二人がファーに流れたのは見えて、そこに落とそうと思って蹴ったら宏太が反応してくれました。狙っているところよりは少しズレたのですが、良かったです。

この得点後、セレッソは山村をCBに置く3バック(5バック)に。ルヴァンカップ決勝の時のような5-3-2ではなく、天皇杯神戸戦の終盤のような、5-4-1の形だった。

セレッソ大阪フォーメーション(延長前半6分時点)
11
リカルド
46
清武
16
水沼
6
ソウザ
10
山口
5
田中
2
松田
15
木本
22
ヨニッチ
24
山村
21
ジンヒョン

この試合の山村は、1点目を自らのシュートで奪い、2点目をアシストし、そして2点目の後はCBに入って、その直後、CBとしてのファーストプレーで天野をファウルで止め、その天野のFKを自らの頭でクリアし、クリア後のCKも自らの頭で跳ね返し、つまり、FWとして2点を奪い、奪った後はDFとしてその2点を死守するという、まさに八面六臂の奮闘ぶりだった。
また、マリノスの方も、セレッソがリードを奪った時には山村をCBに下げる、ということはこれまでの試合からも分かっていたので、その時には山村のところを狙っていく、ということをあらかじめ決めていたのかもしれない。

そして試合はそのまま、延長後半へ。
マリノスは延長後半開始とともに、天野を下げ、3枚目のカードとしてMF前田直輝を投入。中町をアンカー、左IHが伊藤、右IHが前田、左ウィングが遠藤、右ウィングがマルティノス、という4-1-2-3の形にもう一度戻った。そして、攻撃の時には中町以外のMFも前に上げて、実質5トップのような形になった。

横浜F・マリノス フォーメーション(延長後半開始時点)
7
ヴィエイラ
18
遠藤
20
マルティノス
16
伊藤
25
前田
8
中町
23
下平
2
ジョンス
22
中澤
27
松原
21
飯倉

これについては、5枚で守るセレッソに対して、前線のアタッカーを増やしたい、という采配だったのかなと。

一方、セレッソの方は延長後半13分、両足を攣ってしまったソウザに代えて秋山大地を投入。当初は福満を入れようとしていて、恐らく清武と福満の交代を考えていたと思うのだが、ソウザの様子を見てプランを変更した、という交代だった。

そして、延長後半のロスタイム、2分を経て、主審がホイッスル。セレッソ大阪が、前身のヤンマー時代から43年ぶりとなる天皇杯の栄冠を手にした。


この試合、セレッソとマリノスに生まれた合計3つの得点のうち、左SBの守備力が問われた得点が2つあった。セレッソの丸橋とマリノスの下平は、いずれもJリーグを代表する左SBだと思うが、左利きのSBの守備、特にボールが逆サイドにある時の守備、というのは日本のサッカーの課題のうちの一つなのかなと。

この試合の延長後半11分に、マリノスの左ウィングの遠藤のクロスが、セレッソの左CB木本の頭を越えて、その背後にいたウーゴ・ヴィエイラがヘディングシュートしたシーンがあった。シュートはGKジンヒョンが右手一本で辛くも弾いたが、この時、左WBの田中がヴィエイラに対して背後から競っていた。田中はボールには触れなかったのだが、競ったことでヴィエイラのヘディングのポイントが少しずれて、ボールに勢いが乗らなかったので、この時の田中のプレーは小さなプレーに見えて、実際には大きな、大きな、タイトルを左右したと言ってもいいプレーだった。
田中の外側、セレッソから見て左サイドには、交代で入った前田が立っていたので、多分丸橋だったら、そちらに気を取られて、クロスに対して絞り切れなかったと思う。自分が誰を見ているのか、ではなく、守るのは常にゴール。田中のDFとしての高い意識が、セレッソに天皇杯を引き寄せた。

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