日時 | 2017年10月11日(水)08:30 ※日本時間 |
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試合会場 | エスタディオ・オリンピコ・アタウアルパ |
試合結果 | 1-3 アルゼンチン勝利 |
ロシアワールドカップ南米予選の最終節、アルゼンチンはアウェーでエクアドルと対戦。前節終了時点でアルゼンチンはプレーオフ圏より更に下位の6位に位置していたため、この試合に敗れると、ほぼ間違いなくワールドカップ出場を逃す、という状況だったが、メッシが圧巻のパフォーマンスでエクアドルのゴールを3度揺らし、予選敗退の危機からアルゼンチンを救った。
4位コロンビア、5位ペルーの直接対決が引き分けに終わり、3位チリが1位ブラジルに敗れたため、結果的にアルゼンチンは一気に3位まで順位を上げ、一転ワールドカップへのストレートインが決まった。
エクアドルには悪いが、とにかく、世界最高の選手であるメッシ、そして世界有数の強豪国であるアルゼンチンが、ワールドカップで見られない、ということが起こらなくて本当に良かった。
そして、軽く走る程度で息切れするような標高2800メートルのアウェーの地で、負ければ終わりという状況で、しかも1点先制された状態から、自分自身の突破で3回チャンスを作り、そこから生まれた3回のシュートを自分で撃って決めてしまうメッシという選手は、ちょっと表現する言葉が見つからない。早くワールドカップでのプレーが見たい。
11 ディマリア |
7 ベネデット |
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10 メッシ |
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15 アクーニャ |
6 ビリア |
8 ペレズ |
18 サルビオ |
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17 オタメンディ |
14 マスチェラーノ |
2 メルカド |
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1 ロメロ |
この試合のアルゼンチンは、DFラインはオタメンディ、マスチェラーノ、メルカドの3バック、前線はディマリア、メッシ、ベネデットの3トップでスタートしたのだが、まずこの形が良かったのかなと。
前節のペルー戦では、ベネデットの1トップ、2列目が左からゴメス、メッシ、ディマリアという並びだったのだが、メッシは引いて受けようとすることが多く、両SHはワイドに張っている、そして1トップのベネデットは起点になる力が弱いので間で受けるよりも裏に抜けようとするプレーが多い、という状態だった。そうなると、両SHのベクトルは外、1トップのベクトルは前、メッシのベクトルは後ろ、ということになり、前線の選手同士の距離が空いてしまうことになる。結果、ペルー戦では前線が機能せず、スコアレスドローとなった。
ペルー戦の前線が機能しなかった最大の理由は、メッシに10番の仕事をさせ過ぎてしまったことで、メッシという選手の能力を最大限にチームに落とし込もうと考える場合は、やはり「メッシは9番の選手である」と捉える方が良いように思う。
メッシは背の低いテクニシャンタイプの選手なので、ステレオタイプな見方をすれば10番の選手なのだが、実際には、フィジカルが強く、ボールを収める力もあり、そして、誰よりも得点を奪う能力を有している、世界最高の9番である。そしてその点が、クラシカルな10番タイプの選手とメッシを比較した時の、最も異なる点である。
メッシとアグエロ、メッシとイグアイン、という組み合わせが上手くいかないのも、アグエロやイグアインが9番タイプの選手だからで、彼らはどうしても、「ラストパスをメッシから受けてシュートを打つ」というポジションを取ってしまう事が多いのだが、そのポジションは、メッシがシュートを打ちたいコースや、ドリブルで切れ込みたいスペースと被っていることが多い。
9番であるメッシと親和性が高いのは、セカンドトップタイプの選手で、「メッシのシュートコースを空ける」「メッシのドリブルコースを空ける」という意識が先にあり、最後に「メッシが自分を使うことも出来る」というポジションを取れる選手である。そういう意味で、この試合のディマリアとベネデットの距離感やポジショニングは理想だった。メッシに近づき過ぎてスペースを消すこともなく、逆に離れすぎて孤立させてしまうこともなく、常にメッシの回りで衛星的にプレーしつつも、横や斜め前にポジションをとって、メッシのためのコースを空けておく。そして、メッシに相手のマークが寄った時には自分のところがフリーになるようなポジションをとる。
この試合のアルゼンチンの3点目は、メッシがエクアドルのDF3枚に付かれながらもGKの上をループで越してゴールという文字通りスーパーゴールだったのだが、この時ベネデットは中央から左にドリブルするメッシの背後を回って中央から右に、メッシに寄せるエクアドルDFと逆方向に走りこんでおり、この動きはまさに、「メッシのシュートコースを空ける」「メッシのドリブルコースを空ける」そして最後に「メッシが自分を使うことも出来る」という動きだったと思う。また同時に、メッシから見て左側からはディマリアもサポートに入っており、その形になれたのは、3-4-1-2でスタートしたことが大きかったのかなと。
アルゼンチンにとって悩ましいのは、今のメッシは時々、「9番のメッシ」ではなくなってしまうことで、その時のメッシはピッチ上を漂っているだけ、気まぐれにテクニックを発揮するだけの、まさしく「クラシカルな10番」になってしまう。そうなってしまうのは、言われているような協会との確執が原因なのか、メンタルの問題なのか、それともメッシ自身の衰えの問題なのかは分からないが、とにかく、9番の選手というのはチームから見ると攻撃の最終目標地点なので、そこが消失してしまうと、攻撃が機能する、しない以前の問題になってしまう。
よって、アルゼンチンがマラドーナ以来のワールドカップ制覇を果たすためには、メッシがどれだけ「9番」でいられるか、そして、周りがどれだけ「9番のメッシ」をサポートできるか、が鍵になるのではないだろうか。