3点差の辛勝。J1第25節 FC東京 VS セレッソ大阪

日時 2017年9月9日(土)19:03
試合会場 味の素スタジアム
試合結果 1-4 セレッソ大阪勝利

遅ればせながら、セレッソとFC東京との試合の感想を。
セレッソのほうは公式戦5試合勝利なし、FC東京のほうは公式戦4連敗中、ということで、悪い流れを断ち切りたいチーム同士の対戦、という試合だった。

セレッソ大阪フォーメーション
9
杉本
8
柿谷
24
山村
16
水沼
6
ソウザ
10
山口
14
丸橋
15
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

セレッソのフォーメーションは4-2-3-1。前節、鹿島アントラーズ戦からの変更点としては、トップ下に山村が復帰したほか、CBが山下から木本に変わっている。

FC東京フォーメーション
13
大久保
15
永井
38
37
橋本
25
小川
8
高萩
26
5
丸山
4
吉本
22
徳永
33

FC東京の方は、前回セレッソと対戦した際に負傷した森重が現在も離脱中で、それを補うためなのか、現在は3バックのフォーメーションを採用している。この試合は高萩のワンボランチに東、橋本のIH(インサイドハーフ)、大久保と永井の2トップでスタートした。

試合は開始直後から、セレッソが何度もゴールチャンスを迎える展開に。
その一番の要因は、杉本と山村の2トップがFC東京の3CBに対して個の力で圧倒したからだった。逆に、FC東京サイドから見ると、3CBが空中戦の競り合いで簡単に負けてしまったり、ボールをキープされて前を向かれてしまったりと、個々の対応がまず悪いし、チャレンジとカバーの関係が出来ていないなどユニットとしての関係性も悪い、という状態だった。セレッソとしては、2トップに向かってロングボールを蹴っておくだけでチャンスになりそうだったので、それを繰り返し行い、実際、何度もそれで危険なシーンを作れていた。
そして、2番目の要因としては、FC東京のほうがワンボランチの脇のスペースを守るためのプランを持っていなかった、という点。フォーメーションにあるとおり、FC東京の方は高萩のワンボランチ、その前に橋本と東がいる、という形なので、ホームポジションのままだと高萩の両脇にスペースが出来てしまうのだが、前半の序盤は、そこのスペースを埋める動きが無かったり、遅かったり、もしくは、そのスペースをボールサイドのCBが埋めるのか、IHの片方が下がって埋めるのかがはっきりしていなかったり、という感じで、セレッソのSHや杉本、山村にそこを使われてしまうシーンが多かった。そして前述の通り、FC東京は3バックの個々の守備やユニットとしての守備が良くないので、そこを使われると最終ラインの弱い部分がそのままセレッソの攻撃に晒されてしまう、ということになる。

上記のような流れの中、セレッソが前半11分に松田のゴールで先制点を奪ったのだが、先制点の原因は、上記の流れとは関係なく、FC東京の左WBの小川とGK林の連携ミスだった。WBの裏のスペースへのボールを林がキャッチしに出てきたので、小川のほうが譲ったのだが、ボールに向かって走っていた松田を小川がブロックせず、また林のボールの抑え方も弱かったので、ボールがこぼれて松田の足元へ。松田は無人のゴールにボールを蹴り込んで、前回の対戦時に続き、今期のFC東京戦2ゴール目を挙げた。

FC東京としては、ビハインドとなってしまったので前からボールを取りに行きたいのだが、上述の通り中盤の守備が機能不全なので、結局、セレッソボールになったら退却守備、ワンボランチの脇のスペースはIHが引いて埋める、という選択になっていった。ただ、FC東京のフォーメーションは3-1-4-2なので、そのまま両WBが最終ラインまで引いて、IHがボランチの位置に引くと、5-3-2の形になる。その状態で、セレッソのボランチがサイドに出て行くと、FC東京のボールサイドのIHとWBは、セレッソのSHとSBを見ているので、ボランチにプレスを掛ける人間がいなくなる。また、中盤が3枚なのでボールと逆サイドにスペースが出来てしまう。ボランチがフリーになっているせいでボールは簡単にサイドチェンジされてしまうので、そのたびFC東京の選手は走ってポジションを取り直すことになり、結局この形も、機能しているとは言いがたかった。FC東京の2トップがボールサイドに落ちて(つまり5-4-1の形になって)バランスを取れば良いのだが、その動きも見られなかった。

FC東京の守備が機能していないので、セレッソの方はボランチがフリーでボールを持てる、つまり何でもできる状態になったのだが、セレッソの方もセレッソの方で、その状況をどのように利用すれば良いか決めかねている、という状態だった。
ボランチがフリーなので、当然2トップやSHは裏のスペースを最初に狙って、フリーのボランチからボールを引き出そうとするのだが、ゴールに近い選手がまず動き出して、遅れて後ろからもう一人入ってくる、というような連動した動き出しが無く、選手個々が単発で動いているので、なかなか裏を取ることが出来ない。
裏ではなく間で受けるプレーに関してもそれは同じで、間で受ける選手に対して誰がどのようにフォローに入るかが、その場その場の判断というか、やってみてダメだったらやり直し、トライ&エラー、というようなプレーなので、なかなか決定的なチャンスを迎えられない。
そうこうしているうちにセレッソが攻め疲れてきたら、今度はFC東京がボールを持つ、リードしているセレッソは引いて守る、FC東京のほうは元々ボールを支配するスタイルを目指しているし、今はとられた後の守備にも不安があるので、手数を掛けてボールを動かす、しかしセレッソのゾーンディフェンスを動かすようなロジックが無いため、決定的なチャンスは作れない、ということで、結局どちらのチームも決め手を欠く展開になっていった。

しかし、前半43分、セレッソは水沼の右サイドからのクロスに左サイドから柿谷が飛び込み、右足ボレー気味に流し込んでゴール。この時FC東京は3バック+両WB+高萩、東まで最終ラインに吸収され、7バックのような状態だったので、水沼は完全にフリーだった。そして、水沼のクロスには杉本、山村、柿谷の3人が飛び込んでいたので、やはり今のセレッソにとって水沼がクロスを上げられる体勢になった時というのは、選手同士が攻撃で同じ絵を描ける数少ない瞬間なのかなと。

ビハインドで前半を折り返したFC東京は後半、配置を少し変え、高萩と橋本の2ボランチ、大久保と東の2シャドーという形に。

FC東京フォーメーション(後半)
15
永井
13
大久保
38
25
小川
8
高萩
37
橋本
26
5
丸山
4
吉本
22
徳永
33

前半の途中から、大久保が中盤に下りて来て、ボールを受けて捌く、というシーンが何度もあり、またそのプレーが効果的でもあったので、それだったら最初から大久保が中盤でいい、その分橋本が3列目に下りて、守備になった時のスペースを埋められる方がいい、ということだったのかなと。また、この形だと大久保と東がセレッソのボランチのところを押さえに行けるので、その意味でもこちらの形の方が安定する。

そして後半11分には、FC東京は東に代えてピーター・ウタカを、小川に代えて太田宏介を投入。ウタカがトップに入り、永井と大久保の2シャドーになった。

FC東京フォーメーション(後半11分以降)
9
ウタカ
13
大久保
15
永井
6
太田
8
高萩
37
橋本
26
5
丸山
4
吉本
22
徳永
33

これについては、ビハインドなので1トップはカウンター型の永井よりもポゼッション型のウタカのほうが良い、そのかわり永井の運動量を2列目の守備で活かしたい、小川は前半の松田の得点のところでミスをしてしまったので、太田にもチャンスを、という3つだったのかなと。多分、後半の開始から配置を変え、その結果を見た後で選手も代える、というところまでがセットの采配だったのだと思う。

これを見て、セレッソのユンジョンファン監督もフォーメーションを変更。トップ下の山村を最終ラインに下げて5-4-1の布陣に。

セレッソ大阪フォーメーション(後半11分以降)
9
杉本
8
柿谷
16
水沼
6
ソウザ
10
山口
14
丸橋
2
松田
15
木本
22
ヨニッチ
24
山村
21
ジンヒョン

これについてはシンプルに、守備を固める、試合をクローズする、ということが狙いだったと思うのだが、上述の通り、セレッソの方は山村と杉本の前線がFC東京の3バックに対してシンプルなロングボールでも勝てる、というところがストロングになっていたので、この時間以降は押し込まれる展開に。勿論、ユンジョンファン監督としてはそれは想定の上で、セレッソが8月5日の札幌戦以降、公式戦で勝利していないこと、そしてその間、0-0で引き分けたルヴァンカップの浦和戦以外は全て失点していることを鑑みて、この試合ではとにかく失点しないこと、それを優先しての采配だったと思う。

しかし後半26分、セレッソはFC東京に1点を返されてしまう。
この時のセレッソは、まず水沼の対応が悪くて、最終的にゴールを決めたウタカを、サイドから中央に簡単にカットインさせてしまった。そして、ウタカが永井にクサビのパス、永井がヨニッチに潰されながらも高萩に繋いで、高萩がもう一度、上述のカットインの流れからゴール前に入っていたウタカにパス、これをウタカがシュートしてゴール。このシーンはFC東京のCKがクリアされたところからで、山口がクリアボールを追い掛けて前に上がっていたので、SHのどちらかがバイタルを埋める必要があった。ウタカのカットインを許した水沼が、そのままウタカに付いていくか、反対サイドの柿谷が絞るか、どちらかの対応が必要だったのだが、両SHどちらもカウンターに出て行こうとしていて(多分ヨニッチのところで取れると思ったのだと思う)、結果的にウタカがフリーになってしまい、シュートの直前に柿谷が気付いて慌てて押さえに行ったが間に合わず、という顛末だった。
正直、このシーンではカウンターで3点目を狙いに行くよりも、「この試合では1点もやらない」という対応をして欲しかった。何故監督がフォーメーションを変えたか、ということを考えれば、どういうプレーを選択すべきかは自明だったのではないだろうか。

1点差に迫られたセレッソだったが、後半33分にPKを獲得。柿谷の右足アウトサイドのパスから杉本がDFライン裏に抜け出し、PA内にドリブルで切れ込んだところを吉本に引っ掛けられ、これがファウルという判定だった。このPKを杉本自身が決め、スコアは再び2点差に。試合の流れを考えると、前半終盤に決まった柿谷のゴールと、この杉本のゴールが大きかったなと。PKではあったが、杉本は普段PKキッカーではないし、セレッソの方としては失点のすぐ後でもあり、決めれば楽になる反面、外してしまうと完全に流れが相手に行ってしまう、というところだったので、杉本は良く決めたと思う。

杉本は後半40分にもソウザのCKからヘディングでゴールを決め、スコアは3点差に。これでFC東京の方は万事休した。試合はこのまま終了し、4点を奪ったセレッソが5試合ぶりの勝ち星を挙げた。

セレッソとしては、スコアだけを見れば快勝なのだが、内容を見れば、あまりそういう印象のない試合だった。なぜそういう印象になるかというと、前半はFC東京の方に明らかに組織的な不備があったにもかかわらず、しっかりとそこを衝くことができなかった、ということと、後半は自分たちが守備固めに入ったタイミングで逆に失点してしまった、ということ、そこが気になるからである。これが例えば、前半の序盤は相手のワンボランチの脇にスペースがあったので、そこを起点に崩して先制、その後相手が引いてスペースを埋めてきたので、今度はボランチを使ってボールを左右に振って相手を広げて2点目、残りの時間は無理をせず、守備を固めて逃げ切り、とかであれば、たとえ2-0の勝利だったとしても、間違いなくその試合は快勝、プランどおり、と言えるのだが。
5試合勝利の無かったチームにそこまで求めるのは贅沢かもしれないが、もう少し、「取るべくして取った」というゴールが見たかったし、リードを奪った後の守備では、もっと無失点への執着心が見たかった。

一方のFC東京だが、ペトロヴィッチ監督時代の浦和のような状態になっている、と言う印象だった。大久保やウタカ、永井といった選手は独力、もしくは2~3人のコンビネーションでゴールを取れる力を持っているので、それほど周りのサポートは必要としない。その一方で、森重と室屋のいないDFラインはもっと中盤の助けを必要としているので、その現実に即したサッカーをしたほうが良いのではないだろうか。

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