2点リードは危険なスコア。J1第21節 清水エスパルス VS セレッソ大阪

日時 2017年8月9日(水)19:03
試合会場 IAIスタジアム日本平
試合結果 3-2 清水エスパルス勝利

遅ればせながら、セレッソ対清水の試合を視聴したので、その感想を。

セレッソ大阪フォーメーション
杉本
柿谷 山村 水沼
ソウザ 山口
丸橋 木本 ヨニッチ 田中
キムジンヒョン

セレッソは前節に引き続き、CBレギュラーの山下が離脱中で、代わりに木本が先発。また、前節は足首の怪我で出場しなかった山村が先発に復帰した。

清水エスパルス フォーメーション
長谷川 北川
金子 デューク
竹内 枝村
松原 二見 カヌ 鎌田
六反

清水の方は、エースストライカーの鄭大世が左ふくらはぎ肉離れで離脱中。代わりに長谷川が先発となった。

試合序盤はセレッソのペースだった。
清水の守備はシンプルで、セレッソのCBには2トップを、両SBには両SHを当てていく、というもの。後ろも全て同じで、セレッソの両SHには両SBを、ボランチにはボランチを、そして2トップには2CBが対応する、という形で、ほぼマンマークに近い守り方だった。マッチアップが完全に見合っているかわりに、最終ラインは数的同数になっているので、セレッソの方は中盤の繋ぎは最低限に、前が動き出したらシンプルにどんどん放り込んで行く。このあたりは合理的だったと思う。
清水のSBがセレッソのSHに付いているということは、SBの裏、CBの脇にはスペースが出来ているということなので、前半の序盤はそこに杉本が走りこむ、それに対して清水の方はCBのカヌがサイドまで付いてくる、という流れで両者のデュエルが再三見られた。
清水の方はマンマーク気味に見ている分、完全に崩される形こそないのだが、守備は後手になってしまうので、試合は徐々にセレッソが支配していく展開になって行った。

そして前半24分、セレッソがCKから先制。セレッソから見て左サイドのCK、キッカーはソウザ。ファーサイドまで飛んだボールを田中が清水のSB松原と絡み合いながらもヘディングで折り返し、これをゴールマウス中央でフリーになっていた山村がジャンピングボレーで押し込んでゴール。
清水の方はゴールポスト前方に一人ずつ、そしてセレッソのショートコーナーを警戒して2人をニアサイドに置き、それ以外の選手は全員マンツーマン、という対応で、山村を見ていたのは二見だったのだが、山村の動き出しに完全に置いて行かれてしまった。決めたのは折り返しからだったが、ボールが上がった時点で山村はフリーになっていたので、直接決めてもおかしくはなかった。

セレッソ優勢の流れからの先制点だったため、試合の流れは一気にセレッソに傾き、前半33分には丸橋のFKから木本が2点目を奪取。FKはセレッソから見て右サイドからだったので、丸橋の左足のキックはインスイングのボールだったのだが、木本がニアサイドで捻るように、上手く頭に当ててゴール。
ここでも清水はマンマークで守備をしていて、つまり清水の方は、流れの中、CK、そしてFK、いずれもマンマークで、という守り方だったわけだが、そのいずれでも後手を踏んでしまった。特にFKの守備はマンマークで守るとどうしても後ろ向きの対応になるので、前向きにゴールに向かう攻撃側の選手に対して後手に回りやすく、やられる時はこういうやられ方になる、という失点の仕方だった。勿論、ゾーンで守った場合はまた別のやられ方があるので、どちらが良い、という話ではないのだが。

後半に入ると清水の方は、攻撃時に両SHの金子とデュークが中に入り、SBを両方とも高い位置に上げて、5トップ、場合によっては6トップのような攻撃的な形に。
後半始まってすぐに、その形から長谷川が右サイドからのクロスに飛び込んでゴールネットを揺らしたが、これはオフサイドの判定でノーゴールに。しかしそのすぐ後、後半3分には今度は左SB松原がペナルティエリアにドリブルで侵入。これを田中が引っ掛けてしまい、PKの判定となった。この時も清水の方は2トップ+右SHのデューク、そして右SBの鎌田までPAに入っていて、松原を加えると合計5人がPAの中。清水がかなり前がかりになった中でのPK奪取だった。このPKを金子が決め、清水が後半早い時間帯に1点差に肉薄。ここから試合の勢いは徐々に、清水の方に傾いて行った。

1点差となった後は、清水の方も後半立ち上がりのような極端な前がかりの姿勢はやめて、両チームがもう一度ノーマルな状態に戻ったのだが、前半と後半で違っていたのは、セレッソの前線の運動量だった。特に前半は杉本が何度もSBの裏のスペースに走ってボールを引き出したり、起点になるプレーをしていたのだが、後半になるとそのプレーが減ってしまい、後ろの選手が顔を上げても、止まっているのでなかなかボールを付けられない、付けても中央のプレッシャーのキツいエリアなので奪い返されてしまう、というシーンが増えて行った。そうなると、前半はセレッソのFWの選手の動き出しに対して後ろ向きに守備をしていた清水の選手たちも、前から前から、という形で守備をするようになるので、なお一層セレッソの方はボールを運べなくなっていく。

そして後半15分、セレッソは悪い流れを断ち切れないまま、北川の同点ゴールを浴びてしまう。
この失点に至る流れではセレッソの悪いプレーが3つあって、1つ目はセレッソゴール前に運ばれたボールを一旦はソウザが奪い返したのだが、ソウザからボールを預けられた山口がすぐに奪い返されてしまい、その流れから清水のCKになってしまったこと。山口も不用意だったが、山口の背後から金子がボールを狙っているのを後ろの選手がちゃんとコーチングしたのか、というところも気になった。
そして2つ目は、このCKをジンヒョンがフィスティングで逆サイドに逃がし、今度はセレッソから見て左サイドからのスローインになったのだが、スローワーのデュークがボールを持ったときに、セレッソの選手たちの集中力が少し切れてしまい、スローワーに寄って行った北川をフリーにしてしまったこと。この点については、CKからの流れでカヌもまだ前線に残っていたし、スローワーがSBではなくデュークだったので、ロングスローをしてくる(だからすぐには投げない)と考えてしまったのかもしれない。
そして、デュークが北川にボールを投げ、北川がフリーなことに気づいた木本が慌ててマークに入ったのだが、こういう時に良くあるパターンで相手に近づきすぎてしまった。北川はデュークからのボールをセレッソから見てPA内左端付近で、ゴールに背を向けながら右足アウトサイドで切り返すようにトラップ。近づきすぎていた木本はこの切り返しに置いて行かれて少し身体が離れてしまった。
北川はそのまま反転し、反転しながら左足でシュート。このシュートがセレッソゴール、ファーサイド側のサイドネットに突き刺さったのだが、身体が離れていたとはいえ木本が寄せていたし、ボールはかなり狭いコースを通ってゴールに飛んだので、カバーリングがちゃんとできていれば、ゴールに運ばれることはなかったはずだった。木本の背後のカバーのポジションにいたのはソウザだったのだが、シュートの瞬間に、半歩でも前に寄せるとか、最低限少し腰を落としてコースを狭くするとか、そういうことを何もせず、棒立ちどころか少し身体を回して避けるような仕草すら見せたので、守備の選手として、それはちょっと無いだろう、という対応だった。これが悪いプレーの3つ目で、かつ一番決定的だった。

結局この失点の3分後にソウザは交代。同時に柿谷も交代し、代わって秋山と関口が投入された。交代選手はそのまま、ソウザと柿谷のポジションに。

セレッソ大阪フォーメーション(後半20分から)
杉本
関口 山村 水沼
秋山 山口
丸橋 木本 ヨニッチ 田中
キムジンヒョン

この交替については、ソウザは直前のプレーが致命的だったのでしょうがないとしても、もう一枚については柿谷ではなく前線のどちらかを代えた方が良かったのでは、という気がする。上述のように、後半のセレッソが押し込まれていたのは、前線のボールを引き出す動きや起点になる動きが少なかったからだと思うので。ただ、チーム内得点王の杉本を下げるのは勇気がいるし、山村は守備貢献も大きい、また、そもそもこの日のベンチメンバーでFW登録の選手はリカルド・サントスしかおらず、選択肢自体が少なかった、ということも考えると、仕方なかったのかな、という気もする。

ただいずれにせよ、同点になった後は、清水の方がイケイケになり、後半序盤と同じように、SBまで高い位置に上げて、全体的に前がかりになり、それに対してセレッソの方も、慌てて取り返しに行くのではなくまず守備から、ということで引いて守るようになったので、選手交代の内容がどうあれ、清水がゲームを支配する展開になるのは避けられなかったと思う。

セレッソの方としては、主導権は明け渡してしまったとしても、とにかく最後のところではやられないように、という意識だったと思うのだが、結局守り切れず、後半28分、またもや北川から逆転ゴールを被弾。
この時の北川のシュートは、左SB松原からのグラウンダーのクロス、少し背中側に来たボールを、左足インサイドで触って右足の後ろ側を通す、というシュート。受け手の選手がボールに対して入り込み過ぎてしまった場合によく見られるシュートで、この類のシュートが決まるのは、普通は「さわれば一点」みたいなシーンなのだが、北川のシュートはゴールエリアの外からで、しかもヨニッチが目の前に立っていたので、その状態から軸足の後ろを通してファー側のサイドネットに運ぶ、というのは文字通りスーパーゴールだったと思う。また、この得点、そして1得点目も左足のシュートだったので、てっきり左利きの選手だと思ったのだが、調べると右利きのようなので、その意味でも凄いゴールだった。
セレッソから見ると、引いて守ろうとしたタイミングで相手のスーパーなプレーが出てしまった、しかも、このシーンの直前で、山村が足を痛めて動けない状態になっていた、ということで、少しアンラッキーだったことは否めないと思う。

逆転されてしまったこと、そして、山村が負傷してしまったことで、ユンジョンファン監督は山村を下げてリカルド・サントスを投入。リカルドは奥行きを出せる選手なので、前半のような、相手SBの裏にFWが走るような展開であればもっと生きたと思うのだが、清水の方がリードを奪ったことで余りSBが前に出てこなくなり、セレッソのほうもロングボール主体の攻撃が多くなり、そうなるとロングボールの競り合いや相手を背負ってのプレーというのはあまり得意な選手ではないので、結局特長は出せず。結局試合は3-2、清水の逆転勝利で幕を閉じた。

敗因としては、セレッソは後半、少し引き過ぎてしまったのかなと。相手に勢いが行ってしまったので、まず守備から、というのは間違いではなかったと思うのだが、下がりすぎてペナルティエリアの中までブロックが落ちてしまっていたので、そこはやはり、引いて守るとしても、最終ラインはPAの手前で留める、ということが必要だったと思う。
あともう一つは、今のセレッソのビハインドの時のカードの乏しさ、というものも気になった。今シーズンのリーグ戦、セレッソの交代投入選手が奪った得点は2つ。この2つは前回の清水戦で後半頭から入った清武がPKで決めたものと、13節の神戸戦で後半14分から入った水沼が挙げたものなのだが、清武は故障で離脱中、そしてその代わりにスタメンに入っているのが水沼なので、ベンチの層は薄くなっていると言わざるを得ない。
仮に補強をしないとなると、清武が戻ってくるまではこの状況が続くことになる。逆に言えば、清武の復帰が最大の補強になる、と考えることも出来る。