必要なのは代役ではなく台本。プレミアリーグ第1節 アーセナル VS レスターシティ

日時 2017年8月11日(金)27:45 ※日本時間
試合会場 エミレーツスタジアム
試合結果 4-3 アーセナル勝利

17-18シーズンのプレミアリーグ開幕戦、岡崎慎司の所属するレスターはアウェイでアーセナルと対戦した。
レスターは開始2分でいきなり失点。その後、岡崎のヘディングでのゴール、ヴァーディのカウンターからのゴールで逆転するものの、前半終了間際にウェルベックのゴールで2-2とされ、イーブンで折り返し。後半にはヴァーディのゴールで再びリードを奪ったが、試合終盤に交代で入ったラムジー、ジルーに立て続けにゴールを許し、試合は4-3でアーセナル勝利。レスターは開幕黒星スタートとなった。

レスター フォーメーション
ヴァーディ
オルブライトン 岡崎 マフレズ
ジェームズ ヌディディ
フクス マグワイア モーガン シンプソン
シュマイケル

レスターはヴァーディのワントップ、その下に岡崎を置くおなじみの4-2-3-1。
今シーズンからの新戦力として、降格したハル・シティから獲得したCBのマグワイア、チャンピオンシップのバーンズリーからレンタルバックしたジェームズがスタメンに名を連ねた。チェルシーへの移籍の噂のあるボランチのドリンクウォーターはベンチ外。マンチェスターシティから買戻しオプション付きで獲得したFW、ケレチ・イヘアナチョは軽い負傷があるとのことで、この試合はベンチスタートとなった。

アーセナル フォーメーション
ラカゼット
ウェルベック エジル
チェンバレン ベジェリン
エルネニー ジャカ
コラシナツ モンレアル ホールディング
チェフ

アーセナルは昨シーズン途中から3バックをベースに戦っていて、この試合も3-4-2-1でスタート。前線は今シーズン新たに獲得したラカゼットの下にウェルベックとエジルという組み合わせだった。

最初に書いたとおり、試合はレスターが2度リードを奪ったものの、試合終盤に逆転されて敗戦、という流れだったのだが、分岐点となったのは、後半22分のアーセナルの交代だった。

アーセナル フォーメーション(後半22分から)
ジルー
ラカゼット エジル ウェルベック
ジャカ ラムジー
ベジェリン コラシナツ モンレアル チェンバレン
チェフ

この時の交代で、アーセナルはホールディングとエルネニーを下げ、ジルーとラムジーを投入。フォーメーションを3バックから、ジルーをワントップに置く4-2-3-1に変えた。結果的に、この時投入した2人が試合終盤に同点・逆転ゴールを奪った、という意味でもこの交替は大きかったのだが、この交替を受けて、後半27分にはレスターのシェイクスピア監督も動いたので、その時間帯のサッカーの変化、というのが一番試合の趨勢に影響を与えたと思う。

レスターフォーメーション(後半27分から)
ヴァーディ
オルブライトン マフレズ
アマーティ ジェームズ
ヌディディ
フクス マグワイア モーガン シンプソン
シュマイケル

アーセナルの後半22分のフォーメーション変更を受けて、レスターは後半27分に岡崎を下げてアマーティを投入。フォーメーションを4-3-3とした。この交代にはレスターの色々なものが現れていたように思う。
まず、シェイクスピア監督は前任のラニエリ監督と較べて、DFラインを高く保とうとする監督で、この試合でも岡崎が味方ボランチの方を見ながら、タイミングを見てアーセナルのCBのところまでプレスを掛け、それと連動してボランチ・DFラインも押し上げることで、高い位置でボールを奪うシーンが何回も見られた。この時の交代の意図も、レスターのDFの位置が下がってしまっていたので、それを何とかしたい、ということだったと思う。つまり、アーセナルの2ボランチに対してジェームズとアマーティを、トップ下のエジルに対してヌディディを当てて、マッチアップを合わせることで、もう一度前からボールを取りに行けるようにする、ラインを押し上げる、という狙いである。
ただ、この変更は悪手で、ラムジーはそもそもアーセナルボールになったらどんどん前に出て行くので、アマーティとジェームズは2人でジャカを見ている状態になり、マッチアップを合わせる、という狙い通りにはならなかった。もちろん、ラムジーが上がっている分レスターから見ればカウンターのスペースは大きくなるのだが、レスターのカウンターは岡崎がボールを収めてボランチに落とす形や、岡崎がオルブライトンやマフレズに寄って行ってワンツー、という形がトリガーになっているので、それが無いとSHが孤立したり、ヴァーディがポストと裏抜けの両方をやらないといけなくなったりして、スムーズにカウンターに移行できない。結局、岡崎交代後のレスターは、守備もハマらない、カウンターにも行けない、ということで、アーセナルの攻撃を一方的に受けることになってしまった。

レスターフォーメーション(後半37分から)
ヴァーディ
オルブライトン イヘアナチョ マフレズ
アマーティ ヌディディ
フクス マグワイア モーガン シンプソン
シュマイケル

交代策が機能しなかったので、レスターは後半37分にジェームズを下げ、イヘアナチョを投入。システムを4-2-3-1に戻したのだが、その直後にラムジーのゴールで同点とされると、更に2分後にはCKからジルーのヘディングで逆転されてしまった。恐らくイヘアナチョは岡崎と同じ役割、相手ボールの時のファーストディフェンスと攻撃の時の起点、という役割を要請されていたと思うのだが、投入の後に状況が180度変わってしまったことで完全に役割を見失ってしまい、殆ど効果的なプレーが出来ずに終わった。

振り返ってみると、結局敗因は采配のところで、レスターはもう少し、色々なことを整理したほうが良いのではないだろうか。
まず、ラインの高低に関しては、リードしているのであれば、別に押し込まれていても問題は無いと思う。レスターにはヴァーディがいるので、ラインが下がっても問題ないどころか、寧ろ相手の背後のスペースが大きくなる分、チャンスも大きくなる。
また、岡崎の代わりに、キングやアマーティなどのセンターハーフ的な選手を入れて守備の強化を図ろうとすると逆に失敗する、というのも昨シーズンから続いていることで、なぜそうなるかというと、彼らでは岡崎がやっている、ボールを収めてボランチやSHに良い形でボールを落とすプレーが出来ないからである。そういうプレーが無いと、マイボールになってもカウンターに移れない、すぐに奪い返されてまた押し込まれてしまう、ということになり、寧ろ失点のリスクが高くなってしまう。
今のところ、レスターは色々な戦い方ができるチームではないので、やはり、岡崎の代わりに投入するのであれば、同じようなタイプの選手、スリマニやイヘアナチョ、そしてこの試合ではベンチ外だったがウジョア、といったFW的なプレーができる選手を投入すべきで、そしてそれをするためにはもう少し、岡崎が担っている役割という物を、チームとしての約束事に落とし込んだ方が良いのではないだろうか。ラニエリが監督をしていた時からそうだが、レスターのチーム戦術は選手個々のキャラクターや判断に依存する部分が大きすぎるように思う。
そして、その部分が選手任せになっている限り、いつまでも岡崎の代役は見つからないのではないだろうか。