日時 | 2017年5月27日(土)27:00※日本時間 |
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試合会場 | オリンピアシュタディオン・ベルリン |
試合結果 | 1-2 ボルシア・ドルトムント勝利 |
5年ぶりのポカール優勝を目指すドルトムント。香川真司はこの試合、インサイドハーフで先発出場となった。決勝の相手は長谷部誠の所属するフランクフルトだったが、残念ながら長谷部は膝の怪我によりリハビリ中で、この試合は欠場。
試合は決勝戦らしい、白熱したゲームとなった。
セフェロビッチ | ||||||||
レビッチ | ファビアン | |||||||
オチプカ | チャンドラー | |||||||
ガチノビッチ | メドイェビッチ | |||||||
バジェホ | ヘクター | アブラム | ||||||
フラデツキー |
フランクフルトのフォーメーションは3-4-3。長谷部が離脱した後の試合というのは殆ど見ていないので、リーグ戦でどのように戦っていたのか、というのは正直分からないのだが、彼の代わりになるような、中盤や最終ラインでゲームをコントロールするような選手は見当たらず、この試合では(ドルトムント対策として、ということもあったとは思うが)主に縦に早い攻撃、カウンター主体で戦っていた。
ロイス | オバメヤン | |||||||
ゲレイロ | 香川 | デンベレ | ピシュチェク | |||||
ギンター | ||||||||
シュメルツァー | ソクラテス | バルトラ | ||||||
ビュルキ |
対するドルトムントの方は、以前の記事「ブンデスリーガ第33節 FCアウグスブルク VS ボルシア・ドルトムント」で取り上げた時と同じ、3-1-4-2。その時の試合ではヴァイグルが負傷離脱してしまい、途中からギンターがアンカーの位置に入ったのだが、この試合では、最初からその形で入った。
試合は早い時間で動き、前半8分、ドルトムントがデンベレのゴールで先制点を奪取。
左サイドでロイスが大きくサイドチェンジして右WBのピシュチェクへ。ピシュチェクから縦に走ったデンベレにパスが出て、デンベレがフランクフルト左CBのバジェホをキックフェイントで振り切ってゴール、という流れだった。
前回の記事でも書いたが、やはりデンベレは前に張っているよりも、サイドでWBとユニットを組む方が、スピードを活かすことが出来、良い形になる。特に、この試合ではサイドからゴール前に入って行くことで、スピードに乗った状態でロイス+オバメヤン+デンベレという形になる、フランクフルトの3バックに対して3対3になる、という状況だったので、尚更そうだった。
ただ、デンベレが前に出て行くと、ドルトムントは3-4-3のような形になり、そうなるとフランクフルトに対して前でも後ろでも数的同数になる。そして、その状態では攻撃が成立しても守備が成立しない、というのが今期のドルトムントで、この試合でもやはり、前半29分に失点、同点に追いつかれてしまう。
失点シーンは、イーブンのボールをキープしようとしたソクラテスが相手を躱しに行って引っ掛けられてしまい、ドルトムント陣内でボールロスト、更に、ソクラテスのカバーに入ったシュメルツアーとバルトラがオフサイドトラップで相手の攻撃を止めようとしたところ、遅れて入って来たレビッチがオンサイド、そのまま抜け出してゴール、ということで、失点のきっかけ、そこをリカバーする際の対応、その両方がCBのミス、という失点だった。やはり、今のドルトムントの守備力だと、攻撃性を前面に押し出すと、どうしても後ろが破綻してしまう。この試合では先制したので、その段階でデンベレのポジションを本来のインサイドハーフの位置に戻し、香川と共に相手のボランチを見る、ギンターは更にその後ろのバイタルのカバーに入る、ということをしていれば、防げた失点だったのではないだろうか。
ただ、ドルトムント、そしてトゥヘル監督のスタイルは、とにかく攻撃、後ろに不安があっても、その不安を振り切ってどんどん前に行く、というスタイルであり、それは今シーズン通じてそうだったので、この試合でも、そのやり方を変えることはなかった。ドルトムントの方は前半34分にはロイスが膝を痛めてピッチ外に出て、そこでデンベレが一時的にロイスの位置に入り、香川がギンターとの2ボランチ、という形になったのだが、ロイスがピッチに戻ってからも、デンベレがトップ下のような位置にいて、香川とギンターの2ボランチを継続していた。ただ、そうなるとデンベレが後ろ向きでボールを受けることになるので、なかなか上手くいかず、前半はそのまま1-1で終了した。
後半に入ると、トゥヘル監督は膝を痛めたロイスに替えてプリシッチを、シュメルツァーに替えてカストロを投入。右CBだったバルトラを左CBに、アンカーだったギンターを右CBに回し、香川とカストロの2ボランチに変更。プリシッチとデンベレをウィングの位置に置く3-4-3のようなフォーメーションに変更した。
オバメヤン | ||||||||
プリシッチ | デンベレ | |||||||
ゲレイロ | ピシュチェク | |||||||
香川 | カストロ | |||||||
バルトラ | ソクラテス | ギンター | ||||||
ビュルキ |
後半のドルトムントはこの形から、ロングボールやカウンターの時はプリシッチ、デンベレがフランクフルトの3バックの脇のスペースに走る、ポゼッション時には同じ両者がワイドの位置でWBと共に起点となる、という形でチャンスを作り出していた。ただ、前述のように、その形は前から後ろまで数的同数になる、ということで、フランクフルトとしても、奪い返すことが出来れば、攻守の切り替えの早さで相手を上回ることが出来れば、チャンスが生まれる、という状態だったので、試合はサイドを起点に攻め込むドルトムント、それに対してカウンターを狙うフランクフルト、という様相がより濃くなった。
一方、慣れない2ボランチの一角を任された香川だが、満点とは行かないまでも、悪くないプレーは見せていて、相手のパスを自らカットしてそのまま裏のスペースに縦パス、というシーンがあったり、自陣PA付近で数的不利の状態でもボールホルダーと受け手の間を切りながら対応したりと、奮闘はしていた。ただ、カストロと2ボランチを組むのは恐らく初めてなので、連携の部分での不安、というのは少しあったように思う。
そして後半22分、ドルトムントはPKを獲得。
左WBのゲレイロがボールを持った状態から、ボランチの香川が相手DFラインの裏にランニング。香川の空けたスペースにカットインしたゲレイロがDFライン裏に浮き球のパス、香川はオフサイドだったのだが、同時に走りこんでいたプリシッチがオンサイド、ボールをコントロールしたところを相手GKのフラデツキーが倒してPK、という流れだった。香川が奥に走ってゲレイロが中に入り、WBがバイタルで前向きにボールを持つ、というシーンは後半17分あたりにもあったので、このシーンは香川とゲレイロの個人間、もしくはチームとして約束事が出来ている形なのだと思われる。
このPKを、この試合を最後に退団の噂があるオバメヤンがパネンカで決め、ドルトムントが勝ち越し。試合は1-2でドルトムントのリードとなった。
ビハインドとなったフランクフルトは、後半27分にチャンドラーに替えてマイヤーを投入。4バックにシステムを変更した。このシステム変更の後、フランクフルトの方は中盤での組み立てをやめ、攻撃は前線へのロングボールが主体に変わったので、恐らく4バックにしたのはドルトムントの3トップに対して数的有利を作って長いボールを蹴りやすくするためだと思う。
これに対し、ドルトムントは後半30分に足が攣ったバルトラを下げ、ドゥルムを投入。ドゥルムが右WB、ピシュチェクが右のCBに。ドゥルムへの指示がどのようなものだったのかは分からないが、2回ほど右サイドから中に入って危ないボールをクリアしたシーンがあり、彼の投入自体は成功だった。
試合は90分、プラス4分40秒のロスタイムを経て、フランクフルトのロングボールを跳ね返し続けたドルトムントが勝利。香川としても、マンチェスターユナイテッド時代に獲得したリーグ優勝以来のタイトル獲得となった。
この試合、勝利した、優勝した、ということは勿論最大の喜びだが、それだけでなく、香川がカップ戦の決勝という舞台で、2ボランチの一角としてその役割を全うした、という事実は、彼のプレーの幅、そして監督の目線から見れば彼を起用する選択肢、というものを大きく広げたのではないだろうか。
トゥヘル監督としては、後半から2ボランチにする、という選択をした時点で、香川を下げ、カストロとギンターの2ボランチにする、という選択肢もあったわけで、しかしそれをせず、香川をピッチ上に残した、そして結果的に、失点しなかった、だけでなく、香川とゲレイロの連携から決勝点を奪った、という事実は、来期に向けて、香川にとっても大きな事実になったと思う。
何はともあれ、ドルトムント、そして香川には、おめでとう、という言葉を贈りたい。
爆破テロという人命に関わる脅威。それを乗り越えてのタイトル獲得は、あらゆる賛辞を尽くしても足りない。