7年越しの勝利は10分間で決まる。セレッソ大阪 VS ガンバ大阪 J1第27節

日時 2019年9月28日(土)14:06
試合会場 ヤンマースタジアム長居
試合結果 3-1 セレッソ大阪勝利

セレッソ大阪は勝ち点43で6位、ガンバ大阪は勝ち点31で12位、という中で迎えた今シーズン2度目の大阪ダービー。セレッソはACL圏内を目指して上位チームを追走するために、ガンバは残留争いから抜け出すために、お互い負けられない一戦である。
セレッソはリーグ戦4連勝中、一方のガンバは直近の鳥栖戦こそ勝利したものの、その前の6試合は勝ち無し。こうした状況を鑑みればセレッソ優位に見える対戦だが、セレッソは対ガンバに滅法弱く、リーグ戦では7年間勝利していない。またしてもガンバが勝利するのか、それともセレッソが順位通りの実力を示して雪辱を果たすのか。白熱が予想された一戦だったが、結果的には、序盤の攻防で試合の趨勢がほぼ決まってしまった。

セレッソ大阪フォーメーション
20
メンデス
8
柿谷
25
奥埜
7
水沼
11
ソウザ
5
藤田
14
丸橋
3
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

この試合のセレッソ大阪のフォーメーションは、丸橋、ヨニッチ、木本、松田の4バック、ソウザ、藤田の2ボランチ、両SHに柿谷と水沼、2トップに奥埜とメンデスを置く4-2-3-1。前節浦和戦からの変更点はボランチのデサバトがソウザに変わったのみ。報道によると、デサバトの欠場は首の負傷によるものだそうだが、現時点で怪我の詳細はリリースされていない。

ガンバ大阪フォーメーション
39
渡邉
10
倉田
33
宇佐美
14
スサエタ
7
遠藤
15
井手口
4
藤春
19
ヨングォン
5
三浦
27
高尾
1
東口

一方のガンバ大阪のフォーメーションは4-2-3-1。藤春、ヨングォン、三浦、高尾の4バック、遠藤、井手口の2ボランチ、左SHに倉田、トップ下に宇佐美、と言う所までは前節鳥栖戦と変わらず。変更点としては、1トップがパトリックから渡邉に、右SHが小野瀬から新加入のマルケル・スサエタに変わっている。1トップの渡邉については、前節の鳥栖戦で決勝ゴールを決めているし、その試合で渡邉を投入した理由が、パトリックのパフォーマンスが良くなかったから、ということでもあったので、両者のコンディション面からこの判断になったと考えられる。
一方、右SHに入ったスサエタについては、スペイン代表歴もある右ウィングで、4カ月の短期契約で獲得した選手である。前節は後半37分から小野瀬に代わって初めてJリーグのピッチに立ったが、今節ではその小野瀬が累積警告で出場停止ということで初先発となった。
ガンバのサッカーの中で一番違いを作っている小野瀬のポジションにわざわざ大物外国人を取って来た意図や、両者を共存させるつもりなのか、使い分けるつもりなのか、などなど不明点が多いが、少なくともこの試合においてのスサエタは、小野瀬の穴を埋める選手としてこの上ない人材である。

さて、試合は始まってすぐの段階で、セレッソの方が大きなチャンスを迎えた。
前半開始から40秒、セレッソのGKジンヒョンが前線にロングボールを送ると、ガンバの方はCBヨングォンがセレッソのFWメンデスとの空中戦に競り負け、ボールがヨングォンの背後、ガンバゴールのペナルティアーク付近に弾んだ。この弾んだボールをヨングォンのカバーに入った三浦が頭でサイドにクリアしようとしたのだが、弱くなってしまってペナルティエリア内で奥埜、三浦、GK東口との間でルーズボールに。三浦は身体を入れてボールを守ろうとしたものの、奥埜に入れ替わられそうになったため、背後から体重を掛けて奥埜を倒してしまった。奥埜は三浦の前に入っていて、三浦はボールにプレーできていなかったので、PKを取られてもおかしくないシーンだったが、主審はノーファウルの判定。結果的に失点することは無かったが、この段階で既に、ガンバの守備陣の問題点が見受けられた。
まず、CBヨングォンの競り合いの弱さ。ヨングォンは左利きのCBで、開いた位置から左足で中の選手にボールをつけたり、前線右サイドに対角線のロングボールを送ったり、と言った左利き特有のプレーを期待して獲得された選手だが、一方でデュエルは余り強くない。
そしてもうひとつは、左SB藤春のコンディション。弾んだボールが三浦の頭上に上がった時、藤春は動きを止めてしまった。恐らく、三浦がヘディングでボールを東口に返すと考えたのだと思う。しかし、三浦からすると前方から奥埜が詰めてきている状態で背後の東口にボールを返すのは勇気がいる。なので、藤春は動きを止めずに、開きながらボールを受けられる位置に動いて、三浦に対して選択肢を作ってあげるべきだった。そうしていれば、三浦のヘディングしたボールを藤春がカバーできたし、逆に、奥埜が藤春の方に向くことで三浦が余裕を持ってGKに返せたかもしれない。しかし、藤春は処理を三浦と東口に任せてしまった。

そして前半6分、セレッソが早くも先制する。
得点の流れはGKジンヒョンからヨニッチがボールを受けた所から。セレッソはヨニッチと木本の間に藤田が下りて、ガンバの方はヨニッチに宇佐美、藤田に渡邉がプレスを掛けた。藤田はヨニッチに対してGKに戻すよう指示し、ヨニッチも一旦下げようとしたのだが、判断を変えて反転、前線右サイドにロングフィードを送った。このボールに奥埜が走り込み、藤春の裏でボールを受けて水沼に落とすと、水沼は中央のメンデスへパス。メンデスは三浦を背負いながら左サイドを上がって来た柿谷にボールを落とし、反転してゴール前へ。そして、柿谷の更に外側から丸橋がオーバーラップしてきて柿谷からボールを引き出すと、サイドをえぐって左足でクロス。ボールは三浦、藤春の間でジャンプしたメンデスの頭上に落ちてきて、メンデスがヘディングでゴールに叩き込んだ。

丸橋は最初、柿谷からボールを受けてダイレクトでクロスを流し込もうと考えていたと思うのだが、柿谷からのボールが少し長くなったので、一度回り込んでから、改めてクロスを上げた。つまり、ガンバから見ると少し時間に余裕があったし、実際、ゴール前では跳ね返す準備は出来ていたのだが、それにもかかわらずメンデスに決められてしまった。
クロスの瞬間のガンバのDFラインは、丸橋に対して高尾が出て、ゴール前は(ガンバから見て)右から井手口、ヨングォン、三浦、藤春という並び。セレッソの方は井手口とヨングォンの間に水沼が、三浦と藤春の間にメンデスが立っていた。よって、三浦がメンデスの前で撥ね返すか、藤春がメンデスに身体を当てるか、どちらか出来ていればゴールを防げた可能性が高かったのだが、実際には、三浦はボールに対してかぶってしまい、藤春は絞り切れずにメンデスにフリーでヘディングを許してしまった。どちらにも責任があったと思うが、三浦の方はクロスが上がる直前に藤春の位置を確認していて、藤春が絞ることを期待していたと思うし、ボールとメンデスを同一視野に収めるのも難しかったので、藤春がしっかり絞るべきだったと思う。

藤春は今シーズン、4月14日の浦和戦で鎖骨を骨折して2か月離脱している。その怪我から6月末に復帰して、ルヴァンカップの長崎戦とリーグの松本戦に途中出場したものの、今度は左足趾(ひだりそくし)骨折で再離脱して、復帰したのが9月7日、J3の熊本戦、その次が前節の鳥栖戦。つまり実質的に、5カ月弱のブランクがある。
そしてその一方で、ガンバが今シーズン、3バックを主に採用してきたのは藤春がいなかったから、そしてそれを4バックに戻したのは藤春が戻って来たから、という側面がある。ガンバが3バックを採用したのは前回の大阪ダービーである12節。藤春がいなくなった7節以降を2分3敗、という結果を受けてのものだった。そしてそれ以降はずっと、基本は3バックで戦い、試合開始から4バックで戦う形に戻したのは、藤春の復帰直前のルヴァンカップ、FC東京戦から。リーグ戦で4バックスタートとなったのは藤春が復帰した鳥栖戦からである。そして、その鳥栖戦では試合後に遠藤が以下のようにコメントしている。

鳥栖戦後の遠藤のコメント

--藤春 廣輝選手が戻った4バックの手ごたえは?

攻撃では裏のスピードが持ち味だし、何度か良い形を作れていた。守備でも中に絞れる選手なので、4バックを選択するのであれば彼の復帰は大きい。

今のガンバはレギュラークラスの本職SBは藤春のみなので、彼がいるからこそ4バックに戻した、という側面がある。そして藤春の守備の良さと言うのは、逆サイドにボールがある時に中にしっかり絞れる、という点。左利きの左SBはここをサボる選手が多い中、藤春はそれを忠実に遂行する選手である。本来であれば。
しかしこの試合、開始直後のロングボール対応では、絞った状態から開いて三浦からボールを受ける、という動きが無く、そしてこの失点シーンでは、逆に開いた状態から絞って対応するのが遅れた。どちらのシーンも三浦に「任せてしまった」という感じで、これはブランクのある選手にありがちな試合勘の欠如である。

さて、開始からわずかな時間で試合はセレッソのリードとなったわけだが、この得点のすぐ後、後半9分には、セレッソが早くも2点目のチャンスを迎えた。
このシーンは、セレッソの右SB松田がガンバ陣内右サイドからスローインを投げ、このボールをコーナー付近でキープしたメンデスの腕をヨングォンが引っ張ってファウル、セレッソがFKを得る、と言う所から始まった。上述の通りヨングォンはあまりデュエルが強くなく、その分、手を使って相手を押さえることが多い。ここはそれが最初に出たシーンだったが、これ以降も、ヨングォンがメンデスや奥埜を手で押さえて止める、という場面が何度もあった。
そして、セレッソの方はここで得たFKに対してソウザがキッカーとなったのだが、この時のガンバの守備配置に問題があった。
まずそもそも、FKを与えた位置はコーナーフラッグから2m足らずの位置だったので、ガンバの方はCKの守備と同じ配置をすれば良かった。しかし、この時のガンバはCKの守備とは違う形になっていて、並びとしては、ソウザの前に壁として倉田を立て、ペナルティエリア内ではゴールエリアのライン上に6枚(ニア側からスサエタ、遠藤、渡邉、三浦、ヨングォン、高尾)、その前方に2枚(藤春、井手口)、ペナルティアーク付近に1枚(宇佐美)、というものだった。

ソウザのFK時のガンバの守備配置
CKと通常の直接FKの唯一の違いは、FKにはオフサイドが適用される点だが、ガンバの方は壁役の倉田がゴールエリアのライン上に並んだ6枚よりも低い位置にいるのでそこがオフサイドライン。倉田がいなかったとしてもボールがオフサイドライン。つまり、オフサイドを取れる可能性は殆どない。
一番問題なのはゴールエリアのライン上に一直線に6枚並べる、という配置で、これだと失点に直結するニアポスト付近へのボールに対して後ろ向きに対応することになる。上述の通り6枚の選手の背後も全てオンサイドなので、猶更危険である。ソウザは右利きなのでアウトスイング(GKから離れる軌道)のボールが飛んでくる。その軌道に合わせるためにも、ニア側の数枚はニアポスト付近に下げた方が良い。また、壁役の倉田もエリア内の守備に参加させたほうが良い。そしてその形は、ガンバがCKの守備を行っている時の形と同じである。
上記の配置から、ソウザがFKを蹴り、ヨニッチがゴール前中央ドフリーでヘディングしてゴールに叩き込んだのだが、何故そうなったのか、ゴールシーンを分割して見て行くと、まずキックの瞬間、ニアポスト付近に柿谷が入ってきて、それによって遠藤の位置が下がり、遠藤が下がった位置に丸橋が入ってきて、これで渡邉が前を取られた。渡邉が丸橋を気にすることで空いた渡邉の背後で、今度は三浦がメンデスに前を取られ、次は三浦の背後でヨングォンがヨニッチに前を取られ、ヨングォンの背後で高尾が木本に前を取られ、という順番で、ガンバの方は、誰に合わされてもセレッソの選手に先に触られる、という状況を作られてしまった。

ゴール直前の各選手の位置
最初から遠藤とスサエタをニアポスト付近に下げておけば、柿谷と丸橋にはこの2人が前向きに対応できた。そしてそうなれば、渡邉がメンデスに、三浦がヨニッチに、というベクトルになったはずである。

ガンバのセットプレーの守備の問題点
ガンバのセットプレーの守備の改善点
セレッソの方から見れば、空中戦にあまり強くないヨングォンの前で、チームで最も強いヨニッチが合わせる、という狙い通りの形。また、ソウザの右足のFKは欠場したデサバトには無い武器なので、欠けた選手の穴を、別の選手が違う形で埋めた、とも言えるゴールだった。

いずれにせよ、この2失点目でガンバの方は相当苦しくなった。セレッソはJ1の18チームの中で最も失点が少ないチーム。リードした状態からの失点は7しかなく、2点差を追いつかれた試合はゼロである。そのチームを相手に、ガンバは2点を追いかけることになった。

ガンバの方の攻撃は、ボールサイドに人を集め、数的優位を作ってワンツーなど細かいパス回しで突破を狙うのが基本。特に、上述の遠藤のコメントにあったとおり左SBの藤春がスピードで奥行きを出せる選手なので、左SH倉田の外側を藤春が回り、倉田から縦パスを引き出して相手サイドの裏を取り、そこからマイナスのクロスを入れて中で合わせる、と言う形が良く見られる。そしてサイドで密集を作ると言うことは、ボールを失ってもすぐにスペースを限定してプレスを掛けられるということでもある。恐らく宮本監督は、そうしたスモールフィールドの中で攻守のサイクルを繰り返すチームを目差しているのではないだろうか。就任した最初の試合で既に、倉田が左SHの位置から右に流れてきて、右サイドで数的優位を作る形を見せていた記憶がある。
ただ、就任当初は細かくポジショニングの約束事を決めて、と言うチーム作りだったのが、今はそこが選手のアドリブが多くなっている印象で、規則性がない。まず、ボールサイドにただ密集を作るだけでは、相手もそれに合わせて寄せてきてスペースがなくなってしまう。スモールスペースでは守備側有利、オープンスペースでは攻撃側有利、と言うのがサッカーの原則なので、負けているガンバとしては、誰か1人は逆サイドに幅を取って、セレッソがボールサイドに絞りきれないようにする必要があるのだが、それを誰がやるか、と言うのが見えなかった。また、サイドでボールを持った時のセレッソのSB、CB、ボランチ、SHの間、いわゆるハーフスペースをどうやって使うか、と言うのも曖昧で、右は少なくとも、スサエタがハーフスペースへの出入りを頻繁に行って動きを出していたのだが、左に関しては、宇佐美がハーフスペースに入らないことでセレッソのサイドの選手が絞らず、藤春や倉田のスペースがなくなってしまったり、もしくはハーフスペースに立ったまま次の動き出しがないのでボールがテンポ良く回らなかったり、逆に宇佐美も倉田もハーフスペースに入ってプレーエリアが被ってしまったり、と言うシーンが散見された。
前半、ガンバの攻撃が良い形で繋がったのは1回。前半36分のシーンなのだが、この時セレッソの方は左(ガンバから見て右)にかなり絞っていて、ペナルティアークより左にほぼ全員が立っている状態だった。ここで、ソウザの前でボールを持った井手口から、ソウザ、水沼の間のハーフスペースにポジションを取った倉田にパスが通った。そして倉田が逆側のハーフスペースに入ってきたスサエタにパス、スサエタがこのパスをスルーして渡邊が受け、渡邊がペナルティエリアの脇を運んで高尾に落とし、高尾がクロス、倉田が飛び込むがヨニッチが跳ね返し、ボールは最終的に、逆サイドの藤春へ。藤春はこのボールをダイレクトで右足シュートしたのだが、ヨニッチがシュートを足に当て、CKになった。
このシーンの最初、井手口から倉田へのパスの時、セレッソがかなり左右に圧縮していたにも関わらずボールが通ったのは、藤春がボールと逆サイドで幅を取っていたから。藤春を気にして水沼の体が外向きになったことで、倉田へのパスが通った。そして藤春が逆サイドに残っていたことで、最後はクロスに対して(こぼれ球ではあったが)フリーになれた。
こういう形をもっと再現できればガンバの方にもチャンスがあったと思うのだが、結局前半は殆ど形を見せられず。試合は2-0、セレッソのリードで折り返した。

そして後半。またもや早い時間でセレッソの3点目が生まれ、これで試合はほぼ決まってしまった。
後半10分、セレッソ陣内、セレッソから見て右サイドで奪ったボールをメンデスが左サイドの丸橋に大きく展開、自らはセンターサークルを横切って、一気に前線逆サイド、高尾の裏のスペースに走り込んだ。丸橋は走り込んだメンデスにパス、ボールはガンバのペナルティエリア内、セレッソから見て左側でメンデスと三浦の間でイーブンとなったが、メンデスが三浦、そして背後から挟みに来た井出口に競り勝ってボールをキープし、このボールをメンデスの背後からフォローに上がってきた柿谷が受けた。柿谷はペナルティエリア脇から左足でクロス、このクロスに逆サイドから猛然と水沼が走りこみ、ジャンピングボレーでネットを揺らした。
このシーンでは、1失点目のシーンとは異なり藤春は絞っていたのだが、柿谷のクロスを左足の足先でクリアしようとして、体ごと飛び込んだ水沼に前に入られてしまった。やはり、試合勘の欠如を感じさせるシーンだった。また、ヨングォンに至ってはペナルティエリア内で奥埜を両手で抱え込んでおり、もし水沼のゴールが決まっていなくても、PKを取られていたのではないだろうか。

ガンバはこの失点の後、後半12分に倉田と渡邊を下げてアデミウソンとパトリックを投入。両者はそのまま前任者の位置に入ったが、時既に遅し、と言える交代だった。

ガンバ大阪フォーメーション(後半12分時点)
18
パトリック
9
アデミウソン
33
宇佐美
14
スサエタ
7
遠藤
15
井手口
4
藤春
19
ヨングォン
5
三浦
27
高尾
1
東口

あと、倉田は残しておいたほうが良かったのではないだろうか。3得点を狙いに行くことを考えれば、遠藤か井手口を下げて倉田をボランチにしたほうが良かったかなと。もしくは、明らかにパフォーマンスの悪い藤春を下げ、ヨングォン、三浦、高尾の3バック、遠藤をアンカー、井手口とアデミウソンのIHとして、両WBが倉田とスサエタ、2トップが宇佐美とパトリックという形にする。藤春がいることで4バックを選択したのであれば、彼がダメならやめるのも一つである。

正直、ここから先は点差が開いたことで試合が大味になってしまって、あまり面白味のない内容になってしまった。
ガンバの方は渡邊と宇佐美の時も、パトリックと宇佐美の時も、2トップが殆ど守備参加しないので、セレッソのボランチが制約を受けない。結果、ガンバの方はサイドをどんどん変えられて左右に走らされたり、セレッソのボランチがガンバのボランチの前でフリーでボールを持つことでガンバのボランチが釣りだされて、バイタルやハーフスペースが空いてしまったりする。こういう、あっちこっちにスペースが空く状況になると、遠藤やヨングォンといった選手はなすすべがなくなる。結果、井手口や三浦と言った、運動量やデュエルで比較的頑張れる選手にしわ寄せが行く。特に井手口は、セレッソのボランチのマークをして、ハーフスペースにボールが出たらそこにも守備に行って、クロスが上がりそうならDFラインまで下がる、と言う感じで、ボールがあるところ全部に顔を出す羽目になっていた。

そして後半25分ぐらいからは、ガンバの方はスサエタやアデミウソンが引いてきてボールを受け、自分で運んで攻撃につなげるという形が多くなっていく。完全に人依存の攻撃だが、そうなると、アデミウソンとスサエタが引く分、寧ろ前の人数が少なくなって、負けているはずなのにボールの後ろに人が多いと言う状態になる。

ガンバの方は結局、有効な攻撃の形を殆ど作ることが出来ず。後半ロスタイムに丸橋と木本の間でボールを受けたアデミウソンが木本を交わしてクロス、これがGKジンヒョンの腕に当たってゴールに入る、と言うオウンゴールで1点は返したものの、遅すぎる反撃だった。

試合を総括すると、文句なくセレッソの完勝と言えるゲームだった。
セレッソの試合で最近良く目にするのは、レギュラー格の選手が、最近試合に出場するようになった選手にポジショニングの指示をする、と言う場面である。この試合ではビルドアップのときに、松田がソウザに「ここに覗け」と指示して、相手のFWのプレスをソウザに向けさせてからGKにボールを下げる、と言うシーンがあり、後半、高木が投入された後、水沼がサイドでプレスを受けて相手ボールになった時には、水沼が高木に対して「縦に覗け」と強く要求していた。また、藤田が柿谷にポジショニングの要求をしているシーンもよく目にする。こういう状態になると、まだチーム戦術になじみきっていない選手にとってもプレーがやりやすくなるので、良い傾向だと思う。
ただ、デサバトの替わりに出たソウザについては、怖いシーンがまだまだ多い。カウンター対策でスペースを埋めておくべきところをボールに寄り過ぎてしまったり、切っておくべきコースを切れていなかったり。後半ロスタイムの失点も、ソウザがアデミウソンへのパスコースを切れていなかったことが遠因だった。この試合ではアシストも記録したし、大きなサイドチェンジなど、デサバトにない良さもたくさん見せたが、ハイリスク・ハイリターンな選手、と言う所は変わっていない。そこが魅力でもあるのだが。

一方のガンバは、ダービーと言うことを抜きにしても、内容に乏しい試合をしてしまった。唯一の好材料はスサエタで、正直、4ヶ月契約と言う中でどこまで真摯にサッカーに取り組むのか、と言う疑念を抱いていたのだが、この試合の攻撃陣の中では最もハードワークしていた。ただ、高尾とのコンビネーションはいまいちだった気がする。合流して日が浅いのもあるが、1人で剥がすタイプと言うより、SBとのコンビネーションで、と言うタイプに見えたので、CB的な高尾とは相性が悪いのかもしれない。小野瀬と共存させるつもりなのであれば、小野瀬がSBでスサエタがSH、と言う形か、5バックにして小野瀬がWB、スサエタが右シャドー、と言う形も考えられるが、どうなるだろうか。