中島翔哉のアルドゥハイルからポルトへの移籍の裏側について考えてみる

文春オンラインに以下のような記事が出ていたので、ちょっと推測交じりの投稿をしてみようかと思う。
得したのは誰? 名門ポルトに移籍、中島翔哉を取り巻く“マネーゲーム”

上記の記事を要約すると以下のようになる。

  1. 中島がポルトガル1部のポルティモネンセでプレーしていた当時、パリ・サンジェルマン(以下PSG)が中島の獲得を狙っていた。
  2. PSGは中島をポルティモネンセから直接獲得するのではなく、一度系列クラブであるアルドゥハイルでプレーさせてから獲得する計画だった。
  3. しかし、中島がアルドゥハイルに加入した後、PSGのスポーツダイレクターが替わり、中島の移籍話が白紙になってしまった。
  4. 結果、アルドゥハイルは中島の保有権をポルトに50%売却し、中島のポルト移籍が成立した。

この記事には肝心の「各クラブの意図」が書かれていない。また、記事の副題には「“三方みんな得した”中島の移籍劇」とあるが、ポルト、アルドゥハイル、中島(及びその代理人)のうち、少なくともアルドゥハイルは得をしていない。そこをちょっと解説したい。
まず、なぜPSGがアルドゥハイル経由で中島を獲得しようとしたかと言うと、これはファイナンシャルフェアプレー(FFP)の回避のためだと考えられる。FFPは、UEFAが加盟クラブに対して定めたルールで、移籍金や選手年俸などの支出が収入を上回ることを禁止するものである。要は、強化に奔走するチームが赤字経営に陥って財政破綻するのを防ぐためのルールなのだが、PSGとアルドゥハイルのオーナーであるカタール王室にとっては強化の妨げでしかない。彼らにとって、お金は砂漠を掘れば出てくるものなのだから、制約など不要である。よって、色々な方法でこのルールを回避しようとする。なかでも、系列チーム間で選手を移動させて移籍金の発生を抑える、というのは良く見られる手段である。
中島の移籍に関しても、今年1月、中島がポルティモネンセからアルドゥハイルに移籍した段階で、これはFFP回避のための迂回移籍ではないか、と言う報道が英国タブロイド紙のThe Sunから出ていた。

PSG might have worked out a way around Financial Fair Play rules to get their hands on Japan’s next big football talent.(PSG、日本の次世代タレントをFFPを回避して獲得か)

Al Duhail are owned by the Qatari royal family – who of course also own PSG.

アルドゥハイルはカタール王室がオーナーを務めている。彼らはPSGのオーナーでもある。

This means a future transfer of Nakajima to PSG could be made easier – maybe even a loan deal to get around FFP.

これは将来的に、中島のPSGへの移籍が容易になることを意味する。恐らく、FFPを回避するためのローン移籍だろう。

つまり、アルドゥハイルが中島を獲得したのは、戦力アップや移籍市場での儲けを意図したものではなく、PSGがFFPに抵触しないよう、移籍金を肩代わりするためだった、と言うことになる。これを念頭に置くと、最初の文春オンラインの記事の内容が分かりやすくなる。
まず、PSG側の当初計画では、中島をアルドゥハイルに移籍させ、そこからローン移籍なり、格安の完全移籍なり、移籍金のかからない形でPSGに再移籍させることで、FFPを回避する予定だった。しかし、PSGのスポーツダイレクターが交代してこの計画が白紙になり、中島の処遇と、アルドゥハイルが投資したお金、つまりポルティモネンセに支払った移籍金40億円が宙に浮いた状態になった。アルドゥハイルとPSGにとって40億円と言うお金は、選手が獲得できるのであれば安い金額だが、獲得が白紙になったのであれば回収しなければならない金額である。しかし、カタールでプレーする選手に40億円を支払うチームは存在しない。結果、当初から中島を欲しがっていたが、移籍金がネックで諦めていたポルトに、15億円の移籍金で保有権の50%を売却する、と言う商談を持ちかけたのではないだろうか。アルドゥハイルにとってはそれでも赤字だが、15億円は確実に回収できるし、残りの25億円も、中島がポルトから更にステップアップした場合は保有権50%に応じた移籍金が入ってくるので、将来的に回収できる見込みがある。

中島翔哉の移籍に関しては正直、混乱するような情報ばかりだったのだが、こう考えると辻褄が合うなと。
共感できるかと言われれば、全く出来はしないのだが。