日時 | 2019年3月9日(土)16:03 |
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試合会場 | ヤンマースタジアム長居 |
試合結果 | 0-1 サンフレッチェ広島勝利 |
リーグ開幕戦の神戸との試合では勝利し、2節の名古屋との試合では敗北、と言うことで、1勝1敗でこの広島戦を迎えたセレッソ。
広島の方は今シーズン、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフが公式戦の初戦だったが、この試合は0-0で引き分けてPK戦により勝ち抜け。リーグ戦の方も、初節の清水戦は1-1、2節の磐田戦は0-0と引き分け、続くACLのGL初戦、広州恒大戦は0-2で敗北と、まだ勝ち星が無い状態。
いずれのチームも、勝ってリーグ戦を勝利先行の状態にしたい、と言う中での対戦だったが、勝利を収めたのは広島の方だった。
8 柿谷 |
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11 ソウザ |
10 清武 |
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14 丸橋 |
25 奥埜 |
6 デサバト |
2 松田 |
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3 木本 |
22 ヨニッチ |
16 片山 |
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21 ジンヒョン |
この試合のセレッソのフォーメーションは、柿谷の1トップ、ソウザを左シャドー、清武を右シャドーに置く3-4-2-1。本来ボランチのソウザを左シャドーに置く形は、神戸戦の後半18分から見せた形だが、この試合では頭からこの配置となった。
20 ヴィエイラ |
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7 野津田 |
30 柴崎 |
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18 柏 |
17 松本 |
40 川辺 |
3 サロモンソン |
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19 佐々木 |
5 吉野 |
2 野上 |
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38 大迫 |
一方の広島は、今シーズン東京ヴェルディから獲得したドウグラス・ヴィエイラを1トップに置く、こちらも3-4-2-1。しかし、この試合では流れ上、広島が守備的に戦う時間が長かったため、実質的には両WBを最終ラインに落とし、シャドーをサイドに落とした5-4-1の形になっている時間帯が大半だった。
さて、この試合のセレッソの敗因だが、目に付いたところを箇条書きすると下記のようになる。
- GKとCBの連携ミス。
- ボランチ脇のスペースを使えていない。
- ソウザのシャドー起用の失敗。
- クロスの時のニアへの飛び込みがない。
まず1については言うまでも無いというか、この試合の唯一の得点はセレッソのGKジンヒョンとCBヨニッチの連携ミスから生まれたものなので、これが最大の敗因である。
流れとしては、前半17分、広島のパスがセレッソの最終ラインの裏にこぼれ、ヨニッチがジンヒョンにキャッチするように指示したがジンヒョンの反応が遅れて、ゴール前に詰めてきた広島の右WBサロモンソンとジンヒョン、ヨニッチの3名で奪い合いになり、サロモンソンがマイボールにしてシュート、と言う流れだった。
ボールがこぼれた時ジンヒョンの反応が遅れたのは、ジンヒョンはヨニッチに対してボールをファーポスト側にパスするように(つまりボールに触るように)指示していたから。また、指示しながら自分はファーポスト側、ボールから離れる方向に動いてパスを受けようとしていたからである。つまり意思疎通の齟齬だったわけだが、セオリーとしては、ヨニッチのミスと言うことになる。
守備の指示系統は、常にGKからDF、と言う方向であるべきで、これはジンヒョンの方がヨニッチより歳上だからとか、古株だから、と言うことではなく、守備に対する責任が大きい方から、ゴールに近い方から、常に声を掛けて行く、と言うことでなければならない。よって、ヨニッチはジンヒョン側から「キャッチするから触るな」と言う指示が出ない限り、ボールをクリアする、もしくは味方に繋げる前提でプレーしなければならない。
このシーンではヨニッチがジンヒョンの方を見ずに「キャッチしろ」と指示を出してしまったので、それは指示系統的に誤りである。また、そう言う指示系統が常態化しているチームは必ずGKとDFの連携が悪くなるので、早めに是正する必要がある。
次に2のボランチ脇のスペースについて。この試合、序盤の広島は、3-4-2-1の形から、ボールがサイドに出たらボールサイドのWBを上げ、逆サイドのシャドーを下げて4-4-2になってゾーン的に守る、と言う守備の入り方だった。その形から、守備が嵌まりそうなら逆サイドのシャドーも上げて、セレッソの3バックとマッチアップを合わせて前から奪いに行く、と言う順番だったのだが、先制した後は殆どこの形は見られなくなり、両WBを最終ライン、両シャドーをサイドに落とした5-4-1の形で引いて守るようになった。
セレッソの方は、相手の前からのプレスが嵌まりそうになった時はデサバトか奥埜を中央のCBの横に下ろし(奥埜が下りる回数が多かった)、サイドのCBを開かせて4バックの形になって、相手の1トップ2シャドーのプレスを回避していた。そしてボールが安定化した後は、最終ラインに下りた奥埜またはデサバトが、そのまま1トップ脇のスペースを使ってボールを運ぶ、と言う形が多く、先制された後もそれを続けていたのだが、この形だと下記のようなマッチアップになるので、相手をずらせない。
× | × | × | × | × | ||||
丸 | ソ | 柿 | 清 | 松 | ||||
× | × | × | × | |||||
木 | 奥 | デ | 片 | |||||
× | ||||||||
ヨ |
相手をずらすためには、下記の様な形の方が良い。
× | × | × | × | × | ||||
ソ | 柿 | |||||||
× | 奥 | × | × | 清 | × | |||
丸 | デ | 松 | ||||||
木 | × | 片 | ||||||
ヨ |
また、この試合でセレッソは後半11分にソウザを下げて都倉を、17分には松田を下げて高木を、28分には奥埜を下げて水沼を入れ、高木を入れた段階で布陣を4-4-2に変更し、最終的には最終ラインが丸橋、木本、ヨニッチ、片山の4バック、左SHが高木、右SHが水沼、ボランチが清武とデサバト、2トップが柿谷と都倉という形になったのだが、ボランチに入った清武が下がり過ぎて、木本のプレーエリアと被ったりしていたので、下記のような形で並ぶ方が良かった。
× | × | × | × | × | ||||
高 | 都 | 柿 | ||||||
丸 | × | 清 | × | × | 水 | × | 片 | |
デ | ||||||||
木 | × | ヨ |
4バックでやるにせよ、3バックでやるにせよ、ポジショナルプレーの狙いはハーフスペースを攻略すること。そして広島は5バックになっているので、初期状態ではそこにサイドのCB(佐々木と野上)がいる。よって、ハーフスペースを攻略するためにはボランチの脇でボールを受けて、相手CBを釣り出す必要があり、相手ボランチの脇にスペースを作るためには両ワイドと中央に人を置く必要がある。よって上記のような配置になる。
3のソウザのシャドー起用については、上述の通り勝利した神戸戦でも見せた形だが、正直、神戸戦でも守備の時のソウザのポジショニングは良くなかった。ただ、神戸戦では相手の右SBの西が高い位置を取っていたので、攻撃時には西の空けたスペースでソウザの攻撃力を活かすことが出来ており、収支的にはイーブンだった。しかし、この試合では先制後の広島が5-4-1の形で引いて守るようになったことで、ソウザの使えるスペースが減った。ソウザは前を向いてボールを受けたところからプレーをスタートさせると良さを出せるのだが、相手の間で受けたり、相手を背負って受けたり、と言うプレーは余り得意ではなく、この試合ではボールを失ったり、パスをカットされたりするシーンが頻発した。また、神戸戦と同様、守備のポジショニングのまずさも変わらずあった。ソウザは守備のデュエル自体は非常に強い選手なのだが、前線の選手に必要な、ポジショニングでコースを切るような守備は得意としていない。この試合、ソウザは後半11分に退いたが、交代時の表情を見ても、ネアカな彼にしては珍しく「今日は全然ダメだった」という表情だった。
都倉が入った後のセレッソは、都倉が1トップに入り、柿谷が右シャドー、ソウザのいた左シャドーには清武が入る形に変わったのだが、やはりこの形の方がスムーズになる。ソウザの場合、中にポジションを取っていても、結局スペースを求めてサイドに流れてくるので、相手も付いてきてサイドにスペースがなくなってしまうのだが、清武の場合は最初はサイドに張っていて、そこから中に入っていって間で受ける、と言う動きになるので、清武自身が受けられなくても、相手が清武に付いていくことでサイドにスペースが生まれる。
もし、今のシステムでソウザを使いたいのであれば、左のWBとして使うほうが良いのではないだろうか。そして、丸橋が左のシャドーに入る。
柿 | ||||||||
丸 | 清 | |||||||
ソ | 奥 | デ | 松 | |||||
木 | ヨ | 片 |
この形から、ソウザが左に開いてボールを受けて中にカットインし、その時丸橋は中から左前方に抜け、ソウザのコースを空けると共に、ボールを受けた時はサイドをえぐる、クロスを上げる、という役割を受け持つ。つまり下記の形になる。
丸 | 柿 | |||||||
ソ○ | 清 | |||||||
奥 | デ | 松 | ||||||
木 | ヨ | 片 |
神戸戦では、右WBが左利きの舩木、右シャドーが右利きの水沼で、舩木が右ワイドでボールを持った時は水沼が縦または右斜め前に抜ける、と言う動きを行っていたが、これを左サイドでも行うイメージである。
また、この試合では上述の通り、奥埜を最終ラインに落としてCBを開かせる、と言う形を採っていたので、攻撃的な形にする場合は、丸橋を左のCBにして、ソウザのカットインのタイミングで外側のスペースを上がるか、もしくはハーフスペースを縦に抜けて相手のDFを引き付け、ソウザのドリブルコースを空ける、と言う形を採っても良い。
都 | ||||||||
ソ | 清 | 柿 | 松 | |||||
丸 | デ | 片 | ||||||
奥 | ヨ |
最後に、4のクロスの時のニアへの飛込みについて。
この試合の終盤では、セレッソはロングボールを蹴って都倉にクロス、と言う形を増やしていったのだが、GKにクロスをキャッチされるシーンが多かった。その理由の一つとしては、ニアに入ってくるセレッソの選手がいないので、広島のGKがファー側のボールに余裕を持って対応できる、と言う点があったと思う。セレッソはユン監督の時から、クロスでニアに飛び込む形が少ないような気がする。この日のメンバーであれば柿谷が、もっとニアに入るべきだったのではないだろうか。
監督が変わった後なので仕方が無い面もあるが、やはりセレッソのサッカーの完成度はまだまだ低いなと。監督の選手選考も、ピッチ上の選手の判断も、試行錯誤の段階を越えていない。ある程度の完成度に持っていくまで、どれぐらいの試合消化を必要とするのか、それによって今シーズンのセレッソの順位が決まってくるように思う。