レヴィー・クルピ

ガンバに就任することが決まったレヴィー・クルピ監督について少し。

クルピ監督は不思議な人間で、ものすごく人間味に溢れた好々爺である反面、厳格で冷徹な指揮官でもある。一つはっきりしているのは、セレッソのサポーターは、クルピ監督のことが大好きだった、ということである。

クルピ監督を一言で表現すると、すごく即興的な監督である。料理人で例えると、素材を見極める目を持っていて、その素材を使って素晴らしい料理を作り上げる力も持っているが、そのレシピは携えずにやってくる、という監督である。そしてその点が、クルピ監督の悪い点でもあり、同時に、魅力的な監督たらしめている点でもある。

レシピが無いのでどんな素材でも分け隔てなく評価する。一方で、レシピが無いので、素材の良し悪しの評価の基本は味見である。つまり、実戦に加えてみてどのように作用するか、を繰り返してチームを作っていく。ここで言う実戦とは、プレシーズンなどのテストマッチではなく、厳然たる公式戦である。味見の結果が悪ければ、選手や布陣を少し変えて、また試す。これを繰り返してチームを作っていく。チームを作るのに時間が掛かる、と言われているのはこのせいだが、実際には、同じプロセスを凡百の監督が行うよりはずっと早く、そのチームの最適解に収束していくので、そこまで遅いわけではない。

ただ、レシピが無い、ということは、過程がブラックボックス的である、ということなので、素材を放り込んだ後に、どういう料理が出来上がるかは誰にも分からない。
2010年には家長、乾、清武、アドリアーノと言う爆発的な前線、マルチネス、アマラウと言うボール支配に優れた中盤、丸橋、高橋という殆どウィンガーと言ってよい両SB、そして茂庭、上本、キムジンヒョンという単独で相手の攻撃を食い止められる最終ラインを得て、超攻撃的なサッカーを繰り広げたが、一方で2013年のサッカーは、ボランチの扇原の縦パス一発から1トップの柿谷曜一朗の抜け出しで得点を奪って逃げきる、という超ソリッドな守備的サッカーだった。

したがって、クルピ監督が就任した後のガンバが、どのようなサッカーになっていくかは誰にも、「監督本人にも」分からない。
だからこそ楽しみなのである。