2017年シーズンのJリーグは、最終節、本拠地の等々力陸上競技場で大宮アルディージャを5-0で下した川崎フロンターレが鹿島アントラーズと勝ち点で並び、得失点差で首位を奪取。リーグ優勝の栄冠を掴んだ。長らくシルバーコレクターに甘んじてきた川崎は、初のタイトルが栄えある2017シーズンのリーグタイトルとなった。
最終節を迎えた段階で首位に立っていたのは鹿島の方で、川崎に対して勝ち点2のアドバンテージがあったのだが、シーズン最後のアウェーの試合でジュビロ磐田を相手に勝ち切ることが出来ず、0-0の引き分け。日本国内で最も多くのタイトルを有する鹿島は、OTTサービス「DAZN」がJリーグの放映権を獲得したことによって発生した巨額の優勝賞金を獲得すべく、必勝を期して今シーズンに臨んだが、惜しくも2位に甘んじることとなった。
今シーズン、セレッソ大阪とガンバ大阪を中心にリーグ戦を見てきて、リーグの前半戦を折り返した時、「最も強かった」と感じたのは柏レイソルだった。そして、セレッソが第18節、折り返し後の初戦で柏を倒した時、「もしかするとセレッソは優勝するのではないか」と思ったのだが、鹿島、川崎と言ったACL参加チームは、シーズン前半の過密日程や長距離移動から解放されると、尻上がりに調子を上げてきて、逆に、セレッソや柏はシーズン後半に少し調子を落としてしまい、最終的に、リーグ終盤戦は鹿島と川崎の2強体制となった。シーズンを通して見た時、この2チームの安定感は、やはり際立っていたと思う。
特に川崎の方は、シーズン序盤はACLによる疲労があり、そしてシーズン終盤、セレッソとルヴァンカップのタイトルを争ったあたりでは怪我人が何人かいて、序盤と終盤にひとつずつ、バイオリズムが落ちた時期があったのだが、その時期の成績の低下を最小限に抑え、リーグ戦の最後の5戦は4勝1分けと無敗。また、前任の風間監督が構築した攻撃サッカーの得点力を落とすことなく、守備面が改善したことで、得点数はリーグでトップ、逆に失点数はリーグで下から三番目に少なく、シーズンを通して高い攻守のバランスを保ち続けたことが、最終的に、得失点差で鹿島を上回っての戴冠につながった。
一方の鹿島も、昨シーズン、クラブワールドカップ、そして天皇杯を決勝まで戦ったことで、今シーズンは選手、スタッフ共に休暇が殆どない状態だったが、シーズンを通してみれば、素晴らしい戦いぶりだった。2位という結果を、鹿島の選手たち、そしてサポーターは誇りに思うことはないだろうが、それこそが鹿島というチームの強さなのかなと。
監督に目を向けると、今シーズンは若い指導者の台頭が目立った。優勝した川崎の鬼木達監督は1974年生まれ。2位鹿島の大岩剛監督、6位磐田の名波浩監督は1972年生まれ。3位セレッソのユンジョンファン監督は1973年生まれ。4位柏の下平隆宏監督は1971年生まれ。いずれも監督としては若い、40代の監督たちがリーグ戦の上位に名を連ねた。
また、これは若い指導者が多いことにも起因しているのかもしれないが、ACLに出場する可能性のある上位4チームのうち、鹿島を除いた3チーム、川崎、セレッソ、そして柏は、ゾーンディフェンスを基本とするチームだった。Jリーグはこれまで、マンツーマンを主体とするチームが多数を占めていたが、戦術的な多様性が生まれることは、Jリーグのアジア内での競争力の向上、ひいては日本代表の強化、という観点から見ても、好ましい傾向ではないかと考えている。
リーグが日程を終えたことで、各チームが来シーズンへの準備に動き出している。今シーズン不本意な成績に終わったガンバ大阪は、過去にセレッソを率いたレヴィー・クルピ監督の就任を発表し、同じく抱えていた戦力から見れば低迷と言って差し支えない成績だったFC東京は、そのガンバから長谷川健太監督を招聘することを発表した。
一方でJ2からは、優勝した湘南ベルマーレ、ジャパネットが中心となって経営陣が刷新されたV・ファーレン長崎、そしてJ1昇格プレーオフでアビスパ福岡との戦いを制した名古屋グランパスが、来シーズンはJ1の戦いに加わる。いずれもアクの強いチームである。個人的には、風間監督によってこれまでのサッカーを180度変えた名古屋が、来シーズンどのようなサッカーをJ1で繰り広げるのかに注目している。
そして、「DAZN元年」とも言える今シーズンを制し、巨額の優勝賞金を手にした川崎が、このオフシーズンでどのような動きを見せるのか、という点については、単に耳目が集まる、という話にとどまらず、今後のJリーグの一つの判断材料になると考えられる。
Jリーグは全日程を終えたが、早くも、来シーズンの到来が待ちきれない。