J1・J2入替戦のための、J1・J2交流戦という提案

このほどJリーグより、2018年シーズンからのJ1・J2入替戦の復活がアナウンスされた。
https://www.jleague.jp/release/post-49333/

これにより、J2からJ1への昇格枠は、これまでの3枠から2.5枠に縮小されることになり、当然のことながら、賛否両論が出ている。ただ、昇格枠が3枠になって以降、3枠目で昇格してきたチームが翌年全て降格していること、逆に、J1で16位になって降格したチームが翌年、高確率でJ1に再昇格していることを鑑みると、J1で16位のチームの方が、J2の3位(またはプレーオフ優勝)チームよりも強いのではないか、という疑義は当然起こるわけで、その両チームを直接対決させて翌年のJ1に相応しいチームを決める、というのは妥当な判断の一つだとは言える。

ただ、当然反対意見という物はあり、主だったものを挙げると下記のようになる。

  1. J1の16位が優遇されることになり、不公平である
  2. より多くのJ2チームにJ1の経験機会を与えるべきである
  3. J1からの降格チームがJ2の盛り上がりに貢献することが多い

まず1については、降格枠を減らすこと自体が優遇だが、プレーオフを勝ち抜いたチームとJ1の16位チームが対戦する場合、日程的にもJ1チームが優位になる、という面も挙げられる(これについてはJリーグ側から詳細なレギュレーションが上がっていないので確定的ではないが)。
2については、これまでJ2で3位、またはプレーオフで昇格したチームがすぐに降格しているとはいえ、それらのチームはJ1での経験をJ2に持ち帰っているわけで、それは日本サッカー全体の競争力向上に寄与しており、決して無駄ではない、という意見になる。
3については、これまでFC東京やガンバ、セレッソ、名古屋といった、ネームバリューのある選手が所属するチームが降格したことで、J2の集客が伸びた、という面がある。ガンバとセレッソについては16位での降格ではないが、降格枠が3枠あることで、思いもよらないチームがJ2に加わる、という可能性は当然高まる。

本稿では、これらの意見を踏まえて、J1・J2入替戦を行うかどうかの判定のため、毎年J1・J2の交流戦を行ってはどうか、という提案をしてみたい。

前提条件

具体的な提案の前に、まず前提条件を示す。

  • プレーオフは必ず行うものとする
  • 自動昇降格2枠は最低限保証する

入替戦のアナウンスに対して、「公平性を期するならプレーオフもやめてリーグ戦3位チームが入替戦出場でいい」という意見を見かけるが、それはサッカーが興行である以上、現実的に無理である。例えばイングランドのプレミアリーグは全20チームで、優勝争い以外にもチャンピオンズリーグ出場権(2~4位)、ヨーロッパリーグの出場権(5位)、そして降格枠(18~20位)と合計8枠の順位争いがあるが、それでも最終節は消化試合になることが多い。2017年現在のJ2のチーム数は22で、降格枠は下位2チームなので、昇格枠が3位までの固定になってしまうと、シーズン終盤に大量の消化試合が発生してしまう。
また、同じく興行面から、毎年新しいチームがリーグに加わる、というのは大事なので、昇格枠は最低限、2チームは必要であると考える。

提案その1、J1とJ2の交流戦

具体的な提案に移る。
まず、シーズンのどこか中盤あたりで、J1とJ2で交流戦を行う、というのが提案の要旨になる。交流戦は全てJ2チームのホームで行い、交流戦の結果はリーグ戦の勝ち点に加算される。通常通り、勝利3、引き分け1、敗北0である。この時、J1とJ2のチーム数が異なるため、下記いずれかの方法で対戦を決める。

  • くじ引きで対戦を決める。(外れたJ2の4チームはそのチーム同士で対戦)
  • 交流戦時点(正確には何節か前の時点)のJ1の1位とJ2の18位が対戦、J1の2位とJ2の17位が対戦、という形でたすき掛けにする。J2下位4チームはそのチーム同士で対戦。
  • J1とJ2の同じ順位同士が対戦。J2下位4チームはそのチーム同士で対戦。

ここでまず、J2のチームはJ1のチームと対戦するメリットが得られる。集客的にもそうであるし、カップ戦とは異なる、リーグ戦でのJ1チームの実力を知ることが出来、経験値を得ることが出来る。

提案その2、交流戦の結果を元にレギュレーションを決める

次に、交流戦の獲得勝ち点から、J1とJ2の実力比率を求める。
J1とJ2の獲得勝ち点が同じ場合、実力比率は1:1となる。J1から見て10勝6分け2敗の場合、J1勝ち点36、J2勝ち点12なので、実力比率は36:12=3:1となる。
この実力比率とリーグ戦の勝ち点から、その年の入替枠を決める。仮に、2016年に交流戦を行い、その結果、実力比率が3:1だったとして、そこから2016年シーズンの入替戦実施を決める場合、具体的な決定手順は下記のようになる。

  • 2016シーズンのJ1の16位は名古屋グランパスで勝ち点30、J2の3位は松本山雅FCで勝ち点84。
  • 実力比率は3:1なので、J1の勝ち点はJ2の勝ち点の3倍の価値がある。
  • 30×3=90なので、山雅よりも名古屋の勝ち点の方が多い。
  • この結果、名古屋を残留させる正当性が生まれるため、入替戦を行って翌年のJ1チームを決める。
  • 比率を加味した後の勝ち点が同じ、またはJ2の3位チームの方が多かった場合は、プレーオフ優勝チームが自動昇格となる。

文章にすると長いが、プログラムにかければ計算は一瞬である。交流戦が終わった時点で、J1の16位とJ2の3位の勝ち点比較表が出力できる。実力比率が3:1だった場合の勝ち点比較表は下記のようになる。

J1とJ2の勝ち点比較表
J1
26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
J2 80 ×
81 × ×
82 × ×
83 × ×
84 × × ×
85 × × ×
86 × × ×
87 × × × ×
88 × × × ×
89 × × × ×

○・・・入替戦あり
×・・・入替戦なし、J2の3位が自動昇格

このようにした場合、J2のプレーオフを争うチームと、J1の16位を争うチームは、お互いJ1の結果、J2の結果を気にする必要が出てくる。つまり、J1のチームのサポーターがJ2の試合に注目する、J2のチームのサポーターがJ1の試合に注目する、ということにつながる。それはJ1とJ2が分かれた2つのリーグではなく、一つに繋がっている、という空気を醸成するし、J2でプレーオフに出場できないチームであっても、上記の実力比率に自分たちの勝ち点を掛ければ、今の自分たちの立ち位置がJ1であればどのぐらいに相当するのかが分かる。

想定されるデメリット

想定されるデメリットについても書いておく。

入替戦の有無が最後まで決まらない場合、会場の確保が難しいのでは。
→入替戦を「必ず行う」場合と比較すると、デメリットにはならない。入替戦に回る可能性のあるチームは会場を押さえておく必要があるので。
J2で3位のチームの勝ち点を元に入替戦を行うかどうかを決める場合、3位のチームがプレーオフで敗退し、優勝チームが入替戦無しに昇格した場合、不公平感が出るのでは。
→これについてはその通りだと言える。より公平に、ということであれば、プレーオフ参加チームの平均勝ち点を元に決める必要があるが、表現としては少し複雑になる。

まとめ

以上が提案内容だが、メリットをまとめると下記のようになる。

  • 交流戦の結果から入替戦の有無が決まるため、入替戦開催の正当性が高まる
  • 交流戦によってJ2チームがJ1チームとの対戦経験を得ることが出来る
  • 天皇杯と異なり、必ずJ2チームのホームで対戦できるため、興行的利点が大きい
  • 交流戦と、そこから算出される実力比率によって、J1とJ2がお互いを意識するようになる