日時 | 2017年6月25日(日)18:03 |
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試合会場 | ユアテックスタジアム仙台 |
試合結果 | 2-4 セレッソ勝利 |
なんとなくだが、ベガルタとセレッソの試合というのは白熱した試合になることが多い気がする。特に遺恨があるわけではないのだが、お互い意識しているというか、他のチームと当たる時よりも、「勝ちたい」という気持ちが出るゲームになるような気がする。この試合もそういう内容だった。
杉本 | ||||||||
柿谷 | 山村 | 清武 | ||||||
ソウザ | 山口 | |||||||
丸橋 | 山下 | ヨニッチ | 松田 | |||||
キムジンヒョン |
セレッソのフォーメーションは、いつもの4-2-3-1。スタメンについても、ユンジョンファン監督の考える現状のベストメンバーがピッチに揃い、前節は累積で出場停止だったソウザがボランチの位置に復帰、前節は途中出場だった清武が、この試合では先発出場となった。
石原 | ||||||||
西村 | 奥埜 | |||||||
水戸 | 三田 | 富田 | 中野 | |||||
増嶋 | 平岡 | 大岩 | ||||||
シュミット |
ベガルタのフォーメーションは石原を1トップに置く3-4-2-1。キモになっているのは2シャドーのところである。
ボールがサイドにある時はシャドーがサイドに流れることでセレッソのSHとSBに対して、ベガルタのサイドのCB、WB、シャドーで2対3になれる。ボールが中央にある時はシャドーがボランチのところまで下りてくることで、セレッソの2ボランチに対してベガルタの2ボランチ+シャドーで2対3になれる。そして、ゴール前では、2シャドーが石原の近くでプレーすることでセレッソの2CBに対して2対3になれる。
守備の時もそれは同じで、ボールを奪いたいエリアにシャドーの選手が加わることで、そのエリアで数的有利または数的同数を作って、セレッソの選択肢を奪うことが出来る。
このサッカーが上手くハマると、相手チームは、ピッチ上の人数は同じはずなのにボールの周りではいつもベガルタの選手の方が多い、と言う印象を受けることになる。ただ、それは勿論錯覚で、シャドーの選手が加わっているエリア以外ではベガルタの方が数的不利になっているので、ベガルタが人数を掛けているエリアからボールを運び出すことが出来れば、セレッソにとっては一気にチャンスになる。また、ベガルタは中盤をコンパクトにするため、最終ラインも常に高いので、その裏にもスペースがある。
よってこの試合は、2シャドーを使ってボールの周りに人数を掛けて崩そうとするベガルタと、それを跳ね返し、ベガルタの選手の少ないエリアにボールを持ち出してカウンターにつなげようとするセレッソの戦い、と言う構図になった。
この試合の得点経過は下記の通り。
- 前半16分:セレッソ、柿谷が得点
- 前半20分:セレッソ、山村が得点
- 前半36分:ベガルタ、石原が得点
- 後半13分:セレッソ、山下が得点
- 後半16分:ベガルタ、西村が得点
- 後半23分:セレッソ、山口が得点
ベガルタの人数を掛けた攻撃が実ったのが前半36分と後半16分のゴール、跳ね返したセレッソのカウンターが実ったのが前半16分と後半23分のゴールだったと思う。
セレッソの方としては、この試合ではかなり押し込まれたり、崩されたりするシーンが多かったのだが、ベガルタがリスクを承知であえて人数を掛けて攻撃してきている以上、そういうシーンが増えてしまったのはある意味仕方がなかったと言える。ベガルタが抱えているリスクをきっちりカウンターで衝いて収支はプラスに持っていったので、トータルで考えれば、セレッソの選手達は良く戦ったのではないだろうか。
ただ、1失点目と2失点目はセレッソの方にもミスがあったので、改善の余地はあると言える。
まず1失点目については、丸橋がベガルタのWBである中野に背後を取られ、そこにシャドーの奥埜からスルーパスが出て、というのが失点の原因だったのだが、上述のように、ベガルタの方は中盤にシャドーの選手が降りてくることでセレッソのボランチに対して数的有利を作る、と言うやり方をしていて、このシーンでも奥埜がそれを上手く利用してフリーになり、バイタルで前を向いた。それに対して丸橋は、スペースを消すために下記のポジションを取ったのだが、実際には「xx」のところにポジションを取って、スペースを埋める必要があった。
奥埜(●) | ソウザ | |||||||
丸橋 | 石原 | |||||||
中野 | ×× | 山下 | ヨニッチ |
逆に、スペースケアはやめて、自分のポジションは捨てて、と言うことだったのであれば、もっと奥埜に対してハッキリと寄せてプレーを制限しなければ駄目で、そのどちらかでも出来ていれば、と言うシーンだった。
対3バックの場合、SBの選手から見ると、自分のポジションの更に外から相手WBの選手が入ってくることになり、それは普段の、対4バックの時にはあまりないことなので、注意していないとこういうことが起こる。
2失点目はもっと単純で、得点を決めた西村には山村が付いていたにもかかわらず、前に入られてしまっての失点だったので、山村がもっと、相手とゴールの間にポジションを取れていれば失点はなかった。ただこのシーンは、セレッソが2点のリードを奪ったことでユンジョンファン監督が布陣を変え、山村をCBに下げた直後のシーンだったので、少し同情の余地はある。セレッソの方は3バックのチームに対して、試合の途中から山村をCBに下げて3バックに変更し、マッチアップを合わせる、ということを良くやるのだが、山村も人間なので、前から後ろに下がる、特にFWの位置からCBまで下がるというのは、やはり難しさがあるとは思う。
ユンジョンファン監督にとって、この日の試合状況というのは株取引のようなもので、マッチアップをあえて合わせない、と言う株を買うことで、株が下がる(失点してしまう)リスクを負う代わりに、株が上がる(得点を奪える)チャンスも生まれる、という状況だった。ピッチ上には山村がいるので、彼をCBに下げてマッチアップを合わせれば試合をクローズできる、株取引で言うと手じまいができる。そのタイミングをずっと見計らっていて、2点のリードを奪ったタイミングがそれだったのだと思うが、結果的にはクローズの役割を担っていた山村がミスをしてしまい、失点してしまった。そういう監督の意図から外れたプレーがちょくちょく起こる、というのがサッカーの難しさであり、面白さでもある。
最後に、ベガルタについて。彼らはセレッソを裏返したようなチームだと思う。
守備でローリスク・攻撃でローリターンな戦術を採っているのがセレッソで、ベガルタは逆に、守備でハイリスク・攻撃でハイリターンなチームだと言える。セレッソはローリターンな攻撃については前線のタレント(+セットプレー)で補っているので、今後ベガルタに必要なのは、守備のタレントなのではないだろうか。
セレッソが前回昇格した時、セレッソの監督がクルピで、ベガルタの監督が手倉森だった時は、お互い全く逆のスタイルだったこと、その時のセレッソが、茂庭と上本という守備のタレントの加入によって一気に強くなったことを、ふと思い出した。