人に付くべきか、ゾーンを埋めるべきか。J1第12節 鹿島アントラーズ VS 川崎フロンターレ

日時 2017年5月19日(金)19:00
試合会場 県立カシマサッカースタジアム
試合結果 0-3 川崎フロンターレ勝利

川崎が3点差勝利、クリーンシート、という試合ではあったが、スコアほど実力差があったわけではなかった。
試合開始からしばらく、前半の最初の半分ぐらいは鹿島のチャンスが多く、鈴木優磨が2~3度決定的なチャンスを迎えたシーンがあり、そこで得点を奪えていれば、違う試合展開になったのではないだろうか。特に鹿島の1失点目は、鹿島のCKから鈴木優磨がフリーで撃ったシュートが弾かれたところからのカウンターで喫したものだったので、そこでゴールを奪えていれば、鹿島がリードを奪っていた、失点もなかった、ということだったので、そこがこの試合での一つの分岐点だった。

鹿島フォーメーション
金森 鈴木
中村 レアンドロ
永木 小笠原
山本 町田 昌子 西
クォンスンテ
川崎フォーメーション
小林
阿部 中村 長谷川
大島 ネット
車屋 エドゥアルド 谷口 武岡
チョンソンリョン

ただ、このシーンで鹿島の守備にミスが無かったのかというとそうではなく、最後にフリーでシュートを打った阿部浩之を捕まえるチャンスはあったと思う。
川崎はCKの守備にフィールドプレーヤー全員を戻していたので、川崎の選手は全員川崎陣内にいる、鹿島はそれに対して左SBの山本脩斗だけが残っている、という状態からカウンターが始まった。鹿島のCBの昌子はCKのターゲットとして前線に上がっていたのだが、川崎にボールが渡った時点で帰陣を始め、走りながら、阿部の方を指さしてマークに付くよう指示を出していた。そして、自身は右サイド(川崎から見ると左サイド)を上がった長谷川竜也のマークに付いたので、ゴール直前のシーンでは鹿島陣内右サイドで長谷川がボールを持ち、それに対して昌子がマークに付き、そのカバーが鹿島陣内に残っていた山本、という状態になっていた。最終的にゴールを奪った阿部は山本の更に背後にいたのだが、山本がそこを見るか、もしくは山本の更に背後から帰陣していた中村充孝がマークするべきだった。結果的に、最初に昌子が指示を出していたにも関わらず、誰も阿部を見ていなかったので、長谷川のシュートをクォン・スンテが弾いたところを、簡単に押し込まれてしまった。

次に鹿島の2失点目のシーンなのだが、ここは鹿島の守備の戦術的な欠陥が出たシーンだった。
このシーン、鹿島は前半36分にCBの町田が負傷したことで、ブエノが交替で入り、最初右のCBだった昌子が左CB,ブエノが右CBという並びに変わっていたのだが、昌子が大島に当たりに行ったところを大島がボールをスルー、大島とクロスする形で昌子が空けたスペースに飛び出した小林悠がボールを受けて中央にクロス、詰めていた阿部がダイレクトでシュート、キーパーが弾いたところを長谷川が押し込んだ、という流れだった。
鹿島の守備陣で一番守備力があるのは昌子なのだが、鹿島は彼が自分の担当スペースを離れて相手に当たりに行ったときに、誰がそのスペースをカバーするのかが明確になっていない。鹿島は同じような形で、今年最初の天皇杯決勝でも川崎にゴールを決められている。その時は左SBファン・ソッコが対面の選手のマークに引っ張られて昌子のカバーに入っておらず、そこから失点したのだが、その試合ではファン・ソッコは山本に替わっての交代出場だったので、単に試合に入れていなかったのかな、と思っていた。しかし、この試合では山本が左SBで、しかも35分にも失点には至らなかったが同じようなシーンがあったので、ここは戦術的に整理されていない、もしくは徹底されていない、ということなのだと思う。

1失点目では人に付くべきところを放してしまった。2失点目ではゾーンを埋めるべきところを埋められなかった。つまり、この試合の鹿島の敗因を要約すると、人に付くべきか、ゾーンを埋めるべきかの判断が正しくできなかった、ということになると思う。
そして、その隙(ほんの少しの隙だったと思う)をしっかりと衝いて得点した川崎にとっては、会心の勝利、と言える試合だったのではないだろうか。

あと、最後になるが、この試合の川崎の3得点、全てに絡んだ阿部浩之については、まだ判断に迷いがあったり、プレーにミスがあったりと、川崎のサッカーに完全にフィットしている感じはしなかった。逆に言うと、フィットしてくればもっと活躍する、そういう可能性を感じさせるプレーぶりだった。