猛暑の大阪ダービー。J1第19節 ガンバ大阪 VS セレッソ大阪

日時 2017年7月29日(土)19:03
試合会場 市立吹田サッカースタジアム
試合結果 3-1 ガンバ大阪勝利

セレッソが首位で迎える初めての大阪ダービー。サッカー専用スタジアムで行われる初めての大阪ダービー。19時キックオフながら、試合会場の気温は30度。猛暑の大阪で、文字通り熱い大阪ダービーが幕を開けた。

セレッソ大阪フォーメーション
杉本
柿谷 山村 水沼
ソウザ 山口
丸橋 木本 ヨニッチ 松田
キムジンヒョン

セレッソのフォーメーションは、いつもと変わらず4-2-3-1。ただし、CBのレギュラー山下が右太腿裏の違和感によりこの試合ではメンバーから外れ、代わりに木本がスタメンとなった。

ガンバ大阪フォーメーション
長沢 ファンウィジョ
倉田 藤本
今野 井手口
藤春 ファビオ 三浦 オジェソク
東口

対するガンバの方は、長沢と新加入のファンウィジョの2トップを選択。左SHに倉田、右SHに藤本、そして2ボランチは今野と井手口のコンビとなった。

前半開始後しばらくは、両チームとも手数を掛けずに裏にボールを蹴るせわしない展開だったのだが、10分過ぎぐらいから、セレッソが中盤少し引き気味の位置でブロックを作る、そしてガンバはブロックの外で回す、という傾向になって行った。ガンバの方は、ブロックの外に今野が下りてきたり、倉田、藤本の両SHが下りてきて、そこから縦パスを狙っていくのだが、ブロックの中に入れるボールはセレッソの方も網を張っているので、1タッチ、2タッチでプレーする必要があり、そこにミスが出てしまったり、セレッソの選手に引っかかってしまったりで中々良い形は作れない。
一方のセレッソは、奪ったらまずガンバのSBの裏のスペースを狙う、そして、裏を狙わずポゼッションする場合はサイドを起点にしてクロスを狙っていく、という2つの形を狙っていた。「プレビュー」でも触れたとおり、今シーズンのガンバのDFラインは常に高く、また、クロスからの失点がやや多いので、そこを狙っていく、というのは自然である。ただ、ガンバのほうも、そこは中断期間中の改善ポイントだったわけで、特にクロス対応については、しっかりと中央で跳ね返せていた。
前半は中々両チームとも、決定的なチャンスというのは少なかったのだが、暑い中、しかもダービーということで、先に得点を奪いたい、というところよりも、先に失点したくない、という意識が強くなるのは仕方なく、前半はどちらかというと膠着状態で終わった。

そして後半。
セレッソの先制点が生まれたのは、開始5分、ジンヒョンのロングボールからだった。山村が中盤で今野との空中戦に競り勝ち、ボールはガンバDFラインの裏へ。ファビオがこのボールを足を上げてカットしようとしたが触れず、ボールはそのままファビオと三浦の後ろのスペースにバウンド。そこに杉本が走りこんだ。ボールに対してファビオと三浦、両方が置いて行かれてしまったため、ボールと逆サイドにいた藤春が慌てて絞って対応しようとしたのだが、杉本の身体の動きの方に目を取られてバウンドしたボールを変な形で自分の足に当ててしまい、そのボールを杉本がシュート。ニアサイドを抜いてゴールが決まった。
ガンバとしては、最初の今野と山村の競り合いの時に、ファビオと三浦の関係が横並びになってしまっており、そのせいで2人とも杉本に置いて行かれてしまったので、まずはそこのポジショニングが問題だったかなと。そして藤春については、状況を察知して素早く絞ったところまでは良かったのだが、その後が、という感じで、なんと言うか、藤春という選手はそういうシーンが多い気がする。
今シーズンのガンバは、この試合の時点で失点18で、これはセレッソと全く同じ数字である。にもかかわらず、余り堅守というイメージが無いのは、このシーンのように、点を失う時はあっさり失ってしまうからで、その理由は、基本的に前向きにボールを回収しようとするからだと考えられる。意図通り前向きに回収できればすぐに攻撃に移れるが、回収できなければそのまま入れ替わられてしまう。このシーンでも、ファビオはボールに対して背走するよりも前向きにカットする方を選んだ、三浦もそれに対して準備をした、というのが横並びになってしまった理由だと思うので、良い悪いは別にして、今シーズンのガンバらしい失点だった、と言える。

このセレッソの得点以降、後半20分までの約10分間はいわゆる魔の時間帯で、ガンバは少し集中力が落ちてしまい、セレッソの前線の選手を捕まえられないシーンが幾つかあり、逆にセレッソの方も、そうしたガンバの守備に対して、ゴールを取りに行こうとする選手と、試合を落ち着けようとする選手との間に意識のギャップが出来てしまい、この時間帯は、両チームに危うい雰囲気が漂っていた。

そして前半19分。崩れかけていたガンバは、新加入のファンウィジョが値千金の同点ゴールを奪取。セレッソにとっては、直前に杉本が水沼のクロスをどフリーでヘディングしたがポストに当ててしまった、というところからの失点だったので、二重の意味で手痛い失点だった。
ただ、そこからカウンターを受けたわけではなく、ガンバが中盤で少し手数を掛けて回し、最終的にセレッソから見て右サイド、コーナーフラッグ付近で藤春がボールを持ったところからのクロスをファンウィジョにヘディングで決められた、という失点であり、中に人数も揃っていたので、そこはやはりCBのところで跳ね返さなければいけなかったと思う。ファンウィジョはニアサイドのヨニッチと中央の木本の丁度中間にポジションを取っていて、ヨニッチはボールに対してジャンプして触れなかったのだが、この時に木本がしっかりとファンウィジョを捕まえて競っていれば、防げた失点だったと思う。上述の通り、この試合はレギュラーCBの山下が怪我をしたことで木本がスタメンとなったのだが、このシーンは山下であればどうだったか、ということを考えざるを得ないシーンだった。

そしてこの得点の直後、ガンバは藤本に代えてアデミウソンを投入。アデミウソンが左SHに入り、倉田が右SHに回った。

ガンバ大阪フォーメーション(後半20分から)
長沢 ファンウィジョ
アデミウソン 倉田
今野 井手口
藤春 ファビオ 三浦 オジェソク
東口

直前に行われた非公開の大宮との練習試合で、ファンウィジョはアデミウソンや長沢駿らとピッチに立った、という事前情報があったので、恐らく大宮戦はこの形で戦ったのではないだろうか。

同点になったこと、そして、猛暑の中でゲームが終盤に入ってきたことで、この時間以降は両チームとも、攻撃では仕掛けるプレー、守備では奪いに行くプレーが減り、ゲームは膠着状態になった。この状況を見て、ユンジョンファン監督は後半26分、疲れの見えてきた水沼を下げ、関口を投入。関口はそのまま右SHに入った。これについては明確に、関口の運動量、スピード、そしてドリブルで、もう一度攻守を活性化させたい、という交代だったと思う。

両チームとも、守備がかなりルーズになっていたので、どちらに勝ち越し点が生まれてもおかしくない、という状況だったが、それを奪ったのはガンバの方だった。後半32分、ガンバから見て左サイドのCK。キッカーの井手口がインスイングで蹴ったボールはセレッソゴールニアサイドへ。セレッソはCKをゾーン+マンマークで守るので、ニアのストーンの位置には杉本が立っていたのだが、その杉本の前にアデミウソンが走り込み、杉本がそのランニングに気を取られた瞬間に、更に後ろから三浦が走りこんで、ヘディングでボールに薄く触り、ファーサイドのサイドネットに流し込んだ。
まずこのゴールは、三浦のヘディングが素晴らしかった。杉本はニアポストよりも少し外側ぐらいに立っていたので、その更に外側に走りこんだ三浦から見て、ゴールまでの角度はほどんどなかったのだが、そこからボールをファーサイドのサイドネットに運ぶ、というのは相当な難易度だったと思う。
セレッソの方から見ると、CKの時に、ファビオと長沢には山口とソウザがマンマークで付いていたのだが、三浦にはマークを付けていなかったので、結果論にはなるが、そこは付けておいた方が良かったのではないか、ということと、もう一つは、ニアサイドにボールが飛んだ時に、ファーサイドのゾーンに立っていた木本がファーポスト側のゴールマウスのカバーに入るのが少し遅れたので、それがもう少し早ければ、三浦のヘディングしたボールに触れることが出来たのではないか、ということ、その2点が反省点になるのかなと。

勝ち越しゴールを奪われたセレッソのユンジョンファン監督は、後半38分、柿谷を下げて澤上を投入。それを見たガンバ長谷川監督の方も、オジェソクを下げて金正也を投入。この時間以降はかなりスクランブルになっていたので、フォーメーションは良く分からなかったが、恐らくセレッソの方は山村を左SHにして、杉本と澤上の2トップ、という形だったと思う。ただし、攻撃の時には山村、杉本、澤上全員が前に上がってクロスやロングボールのターゲットになる、という形だった。しかし、ガンバの方も金正也が入ったことで空中戦の対応要員は増えているため、決定機を作り出すには至らず、逆に後半41分、ガンバのカウンターからアデミウソンがゴールを決めて、これでセレッソの方は万事休した。
カウンターになったのは、セレッソのクロスを東口がパンチングで跳ね返したボールをソウザが足を延ばしたが触れず、そのままフリーでアデミウソンに渡ってしまい、独走のドリブルを許してしまったからなのだが、アデミウソンの対応に入ったヨニッチが足を滑らせて倒れてしまい、それで完全にフリーでジンヒョンと1対1になってしまった。この1対1のシュートはジンヒョンがストップしたのだが、シュートブロックからこぼれたボールをソウザが一旦は回収しかけたところを、もう一度井手口に奪われてしまい、井手口がシュート、これもジンヒョンがストップしたが、こぼれ球を再び拾われ、外に開いたアデミウソンへ渡り、そのシュートで失点、という流れだった。セレッソとしては跳ね返すチャンスはあったはずなのだが、まずソウザが珍しく後ろからのプレッシャーを確認できていなかったということ(相当疲れていたのだと思う)、そして木本が最後のシュートのところで、ゴールマウスのカバーに入っていたのだが、ジンヒョンがニアに移動した時に、それに合わせてファーサイドに移動できなかったこと、そして最後に、戻ろうとしていた右SBの松田が、途中で足を止めてしまったこと、この3つが失点を防ぐことが出来なかった要因だと思う。特に松田については、ダービーで、あの状況で、DFが足を止めてしまう、というのは、凄く暑かったから、試合終盤で疲れていたから、ということを考慮に入れたとしても、許されない判断だと言える。

試合を振り返ると、結果を分けたのは、月並みだが決定力の差だったのかなと。
既に書いたように、セレッソの1失点目の直前には杉本がフリーのシュートを外しているし、2失点目の3分ほど前にも、ガンバのDFラインの裏のスペースに出たパスを東口がキャッチしようとしてこぼしてしまい、それを山村がゴールに押し込もうとしたがバーの上に蹴ってしまった、というシーンがあり、この外してしまった2つのシュートというのは、その後に決まったガンバの2つのシュートよりもずっと難易度は低かったと思うので、それを決めるか決めないか、というところが、そのまま試合の結果につながった、ということになると思う。

あと、ガンバに新加入したファンウィジョだが、タイプとしてはかなりライン際で駆け引きするタイプで、今までのガンバにはいなかったタイプのFWと言える。身体が強く、起点にもなれるので、長沢やアデミウソンと組んで2トップを構成することを考えると、かなり良い人材をガンバは獲得したのではないだろうか。

これで今シーズンのガンバとセレッソのリーグ戦での対戦は終了となったが、この試合の2日後に行われたルヴァンカップのオープンドロー(組み合わせ抽選会)では、セレッソが浦和、ガンバが神戸と対戦することが決定。両チームともに勝ち上がれば、再度対戦となる。そのカードが実現するかどうかも楽しみにしたい。