日時 | 2019年1月9日(水)20:00※日本時間 |
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試合会場 | アルナヒヤーン スタジアム |
試合結果 | 3-2 日本代表勝利 |
2019年のAFCアジアカップはUAEでの開催。日本代表の初戦の相手、トルクメニスタンはFIFAランキング127位の国ということで、日本の勝利が確実視されていたが、試合展開としては、トルクメニスタンが先制、日本が後半に3点を奪って逆転、しかしその後にPKを与えてしまって1点差に迫られる、という流れで、結果的には勝利できたものの、日本としては、やや不安定な内容で本大会を滑り出すこととなった。
15 大迫 |
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8 原口 |
9 南野 |
21 堂安 |
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7 柴崎 |
16 冨安 |
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5 長友 |
20 槙野 |
22 吉田 |
19 酒井 |
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12 権田 |
この試合の日本のフォーメーションは、大迫勇也を1トップに置く4-2-3-1。ワールドカップ後の親善試合で10番を背負って活躍を見せていた中島翔哉は負傷のため、残念ながら代表を離脱しており、彼のポジションだった左ウィングには原口元気が入った。またボランチのポジションには、これまでの試合ではCBとしてプレーしていた冨安健洋が入った。
日本代表は、中島と共にボランチ守田英正も負傷離脱したが、代理招集されたのは乾貴士と塩谷司。前者は中島と同じポジションの選手だが、塩谷はDFラインの選手。つまり森保監督としては、当初、守田と遠藤航が守備的ボランチ、柴崎岳と青山敏弘が攻撃的ボランチ、CBのレギュラーが吉田麻也と冨安、DFラインのバックアップが槙野智章という考えだったところを、守田の離脱により、冨安と遠藤が守備的ボランチ、CBのレギュラーが吉田と槙野、DFラインのバックアップが塩谷、という考え方に変えたのかなと。
9 オラサヘドフ |
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7 アマノフ |
8 ミンガゾフ |
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19 アタエフ |
21 ホジャエフ |
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6 バティロフ |
12 アンナオラゾフ |
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5 イルヤソフ |
2 ババジャノフ |
4 サパロフ |
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1 オラズムハメドフ |
一方のトルクメニスタンは、9番のオラサヘドフを1トップに置く5-4-1。ボールを保持した時には左ウィングのアマノフもしくは右ウィングのミンガゾフが前線の中央に入ってきて2トップ的になるが、この試合では終始日本がボールを支配していたため、結果的に、その形になることは殆どなかった。
トルクメニスタンの戦い方は、基本的には自陣に引いてカウンター狙いと言うもの。攻撃から守備への切り替えの瞬間や、日本の最終ラインやボランチの所でミスが出た時など、日本ボールが不安定化しそうな時は前からのプレスも見せるが、安定化した後は1トップのオラサヘドフだけを前線に残して自陣に5-4のブロックを作る。そして奪ったらオラサヘドフに長いボールを入れ、両ウィングのアマノフとミンガゾフを飛び出させてカウンター、と言う形を狙っていた。
一方、日本の方は、相手の守備が1トップだけ残して残りは撤退守備、という形で前からのプレスがほぼ無い為、相手1トップの両脇で柴崎と冨安の両ボランチ、もしくはCBが自由にボールを持てる。よって、ここからの配球で攻撃を組み立てるのだが、前半は、このボランチやCBからの縦パスを引っ掛けられてカウンターを受ける、と言うシーンが多かった。
日本の方は、SBを高い位置に上げ、両ウィングの原口と堂安律を中に入れて、彼らや、1トップの大迫が相手の4-5のブロックの間で受けて、そこからワンツーで中央突破、という形を狙っていたのだが、余りにも単調過ぎた。日本がボールを支配していることもあり、まるでパターン練習のようにブロックの中への縦パスが繰り返されるので、トルクメニスタンの方も殆ど目線が動かされず、中を締める、前に出て潰す、その勢いのままカウンター、という形で狙いを絞りやすくなっていた。
日本の方はもっと、例えばワールドカップのセネガル戦のように、大外からSBを相手のDFラインの裏に飛び出させる、そうやって相手の目線を横や後ろに向けさせる、という揺さぶりが必要だったかなと。
前半の日本の失点シーンは、日本が前がかりになった所を、堂安から柴崎へのバックパスがずれて相手に渡り、そこからカウンター、最後は左サイドのアマノフがカットインして右足でミドルシュート、これをGK権田が弾ききれず失点、というものだった。カウンターの発端はミスからだったし、日本の最終ラインとボランチの間もかなり空いていてカウンターを受けやすい状態になっていたので、そこは反省材料だが、アマノフのシュートが良すぎた。無回転でファー側に飛んだボールが変化してニア側に決まったのだが、あれだけ直前で変化すると、GKとしては難しかったかなと。権田の対応としては、ゴール中央で待機、ファー側に飛んだので移動してボール正面に入ってキャッチ姿勢、という流れで誤りは無かったと思うのだが、結果的に、ファー側に動いたことでニア側へのボール変化に対して間に合わず、キャッチ姿勢に入っていたので弾き出せず、という感じだった。
柴崎のアマノフへの寄せも緩かったが、ゴールまでかなり距離があったし、ここからなら入らないだろう、撃たせて相手の攻撃を終わらせた方が良い、と考えてもおかしくない位置ではあった。ただ、この大会の公式球がこう言う変化を起こしやすいのであれば、今後はもっと相手のミドル姿勢への寄せを速くする、などの対応は必要になるかもしれない。
前半はそのまま0-1、トルクメニスタンのリードで終了したのだが、後半に入ると、日本のほうは攻撃の形で幾つか変化が見られた。
まず、前半は後ろのビルドアップをCBの2枚とボランチの2枚、合計4枚で行っていたのだが、後半はCBを広げて柴崎をその間に下ろす、もしくはCBの脇に柴崎を下ろす、と言う形で3枚で行うようになった。これについては相手は1トップを残して後は引いているので、後ろに4枚もいらない、と言うことと、前半の失点は前線と最終ラインの間が開いてしまって、そこをカウンターで使われた、と言うものだったので、ボランチを縦関係にして間のスペースを消す、と言うことだったのかなと。
もう一つは左サイドの使い方で、上述の通り前半は長友が開いた高い位置に張って、原口が相手の5-4の間のスペースに入る、と言う関係が殆どだったのだが、後半は、その形を残しつつも、逆に長友が中に入って原口がサイドに張る形や、冨安が左に流れる形など、バリエーションが増えた。一番多かったのは原口がサイドに張って長友が中央、ボランチのような位置に入る、と言う形で、右サイドからCB吉田やボランチ柴崎がボールを大きく、左に開いた原口にサイドチェンジして、そこから原口が仕掛ける、もしくは原口が張ったことで広がった相手DFの間のハーフスペースに長友が進入する、という形が何度も見られるようになった。またフィニッシュの形も、前半は中央をワンツーで裏に抜け出す、と言うパターン一辺倒だったのだが、後半は、右サイドからのクロスに左ウィングの原口が飛び込む、逆に左サイドからのクロスに右ウィングの堂安が飛び込む、と言うような左右の揺さぶりを意識した形が多く見られるようになった。
前半に上手くいかなかった原因の一つとして、やりたいサッカーに固執しすぎたかなというのはあったので。中でのコンビネーションをしたいがゆえに、幅がなかった。
日本の1点目と2点目はまさにこの揺さぶりが効いた形で、1点目は逆サイドへのクロスを何度か見せていたことが伏線となり、トルクメニスタンの3CBの間が広がって、大迫がゴール前中央でババジャノフと1対1の状態になったところに原口からグラウンダーのパスが出て、これを受けた大迫が巧みなフェイントから反転してシュート、と言うもの。そして2点目はCB吉田が左大外に開いた原口に大きく展開し、原口がヘディングで内側、ハーフスペースを上がってきた長友に折り返して、これを受けた長友がペナルティエリアの左から相手GKの上を越すクロス、これを大迫が押し込んだ、と言うゴールだった。
幅を取って、仕掛けはじめると、右のストッパーがちょっとずつ食いつき始めていたので。一番真ん中の、ストッパーとサコくんが一対一になるタイミングができていたので、サコ君に入れば、彼の能力で決めてくれたという。だから、やはり、より3バックに対しては幅が必要だなというのはあります。2点目も、ユウトくんが深いところまで入っていってのものですし。
この2点で日本が逆転し、さらに後半26分には堂安のゴール、アジアカップにおける日本代表の最年少得点も生まれて、試合は3-1となり、よし、これは勝った、と思っていたら、後半33分に日本はPKを奪われて失点してしまい、また1点差、難しい状況になってしまった。
この時間、日本はトップ下を南野に代えて北川、トルクメニスタンの方は1トップをオラサヘドフに代えてアンナドゥルディエフとしていたのだが、北川がハーフウェーライン手前ぐらいでボールを失った時に、日本のCBの吉田と槙野が開き過ぎていたせいで間をアンナドゥルディエフに走られてしまい、そこにパスが出て、GK権田がアンナドゥルディエフを倒してしまってPK、という流れだった。
後半の入りの部分で書いたとおり、日本は組み立ての時にボランチを下ろしてCBを広げる、という形をやっていたのだが、このシーンでは北川が失うまで、ボランチが下りるという動きはなく、なぜCBがあんなに開いていたのか、ちょっと良く分からなかった。
ただ、結果的にはPKになってしまったが、GK権田の対応は冷静だったと思う。アンナドゥルディエフに対して最初は飛び込もうとしたのだが、ボールに行けるかどうか五分五分、となった時点で手を伸ばすのを止めた。ここで失点してもまだ1点リード、と言う状況だったので、無理に止めに行ってファウルを取られて、PK+レッドカードと言う最悪の状況になるよりは、そのまま決められてしまった方が良い。勿論、現在のルールではボールに行った結果のファウルはレッド対象にはならないのだが、アジアレベルの審判では何が起こるか分からないので、よりリスクの少ない選択を、と言うことで権田がそうしたのであれば、クレバーな判断だったと思う。実際にはアンナドゥルディエフがファウルを貰いに行って、PKという判定になったのだが、権田の手は相手に触れておらず、主審のジャッジもかなり遠くからだったので、審判によっては取らなかったかもしれない、と言う微妙な判定だった。
このPKで1点差にはなったものの、この後日本が追い付かれることは無く、日本はアジアカップの初戦を勝利という形で終えることが出来た。
ただ、ボール支配率65%、シュート数21本と日本が攻勢を見せたにも関わらず、トルクメニスタンのシュート数も9本とそれなりに多く、枠内シュート数に至っては日本が5本に対してトルクメニスタンの方も4本。決定機に関しては殆ど差は無かったと言える。
日本の選手たちはかなり身体が重い感じで、特にCB吉田やボランチ柴崎あたりは、守備のファーストアクションの時は身体が動くが、そこからボールがこぼれてイーブンになったり、もう一度相手ボールになった時のセカンドアクションが遅い、重い、と言う感じだった。勿論、決勝を見据えて戦うチームが初戦からキレキレだったらその方がまずいので、意図的にそうしているのだと思うが、ここからコンディションを上げていく、という作業は必須になる。
色々書いたが、初戦は内容どうこうよりも負けないことが重要、と言うのはワールドカップでもアジアカップでも同じなので、そこのハードルをクリアできたのは良かった。後は上がって行くだけであることを祈る。