既に複数のメディアから、セレッソとユンジョンファン監督が来季の契約を結ばない、という報道が出ている。本記事ではその是非について、
- 現在の順位の妥当性
- サッカーの内容
- 選手との関係
という3つの視点から考えてみたい。
現在の順位の妥当性
昨年、2017年度のクラブ決算を見ると、セレッソの人件費(つまり強化費用)はJ1で上から5番目である。
外国人を一人増やしたので、2018年はこれよりやや増えている可能性が高い。ただし、神戸、浦和を超えている可能性は低く、鳥栖もトーレスの分で増えているので、高くても4位までと考えられる。
一方、セレッソで一番年俸が高いのは恐らく清武だが、怪我であまり使えていない。また枠の関係上、外国人のうち一人も使えない。更に、現時点で消化が1試合少ないので、この試合に勝てば最高で5位まで順位が上がる。
これらを考えると、この記事時点での8位という成績は、費やした強化費用に対して著しく低いとは言えない。
サッカーの内容について
セレッソは21節、コンサドーレ札幌戦からフォーメーションを4バックから3バックに変更している。3バックに変更後の各試合のシュート数、枠内数、被シュート数、被枠内数は下記のようになっている。
対戦相手 | 札 | 清 | 長 | 広 | 浦 | 磐 | 湘 | ガ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シュート | 17 | 15 | 17 | 12 | 11 | 18 | 24 | 17 |
枠内 | 5 | 7 | 5 | 6 | 3 | 5 | 9 | 5 |
被シュート | 8 | 11 | 10 | 11 | 10 | 12 | 11 | 13 |
被枠内 | 3 | 2 | 0 | 6 | 3 | 5 | 5 | 6 |
上記を見ると、3バックにして以降は全ての試合においてシュート数で相手チームを上回っている。枠内についても、相手に上回られたのはガンバ戦のみ(これは大問題だが)。
失点については8試合で7失点。中断期間以降、3バックにするまでの6試合では10失点だったので、大幅に改善している。得点については中断期間以降、3バックにするまでは6試合で4得点。3バックになって以降は8試合10得点なので、満足のいく数字ではないが改善はしている。
選手との関係について
明確に検証する方法はないが、柿谷が今のサッカーや自身の処遇について不満を持っているのは、彼の様々な発言や試合中の振る舞いから見て間違いないと思われる。それはどちらが悪いとか言うことではなく、選手には選手の、監督には監督の、立場やキャリアの中での目標という物があるので、それらが衝突してしまう、というのは常に起こり得ることである。
問題は一選手との関係ではなく、全体的な関係性である。一人の選手との関係に多少の亀裂があったとしても、残り全員と円滑な関係を築けているなら、それはノーマルな状態であり、去就問題に発展するような状態ではない。
結論
上記より、監督交代が妥当性を持つのは下記2つの状況の場合、ということになる。
- チーム人件費より上、つまり優勝争い、悪くてもACL圏内に順位を運べる指導者を連れてくる目途が立っている。
- 大半の選手が監督に対して疑念を持っている。
1については、複数のチームで予算規模以上の戦果を挙げた監督を連れてこれるかどうか、というのが一つの判断基準になる。少なくともユン監督はそれに該当していたので。
2については、実際にそれが起こっているなら手を打つしかない。ただ、あれだけの成功体験を与えてくれた監督が、僅か1シーズンで選手たちから見限られる、と言う状況は考えにくいが。
能力の高い指導者を在野に放つ危険性
本来、シーズン終了前に監督の去就が報道に出てしまうというのはチームにとって悪影響が多く、セレッソとしては例え報道内容が事実であったとしても、それを否定するアナウンスを出すべきなのだが、現在のところそうしたアナウンスは出ていない。そして、そのことで恩恵を受ける人間が一人いる。それは、ユンジョンファン監督本人である。来季フリーであることが明らかになれば、当然、舞い込むオファーは多くなる。セレッソが監督交代をこの時期に報道に出したのは、もしかすると、初タイトルをもたらしてくれた監督に対する報賞の意味合いがあるのかもしれない。
ユン監督がフリーになった場合、ほぼ確実に、日本および韓国のチームから複数の監督就任オファーが来る。韓国に行ってくれればいいが、Jリーグの他のチームの監督になった場合、セレッソはそのチーム相手に間違いなく苦戦することになる。まだ若い監督なので更に成長する可能性があり、それはセレッソにとって、脅威がより大きくなることを意味する。