宮本監督の綱渡りは続く。J1第18節 ジュビロ磐田 VS ガンバ大阪

日時 2018年8月1日(水)19:03
試合会場 ヤマハスタジアム
試合結果 1-1 引き分け

前回に引き続き、宮本恒靖監督が新たに就任したガンバ大阪の試合を取り上げたい。
今節のガンバの相手は、この試合時点で11位につけるジュビロ磐田である。

ガンバ大阪フォーメーション
11
ウィジョ
20
長沢
10
倉田
25
藤本
28
29
高江
6
初瀬
3
ファビオ
5
三浦
22
ジェソク
1
東口

この試合のガンバのフォーメーションは、ファンウィジョと長沢の2トップを前線に置く4-4-2。前節鹿島戦からの変更点としては、FWアデミウソンのところが長沢に変わったというところと、ボランチが遠藤、高のコンビから高、高江のU23コンビに変わったというところ、そして右SHが米倉から藤本に変わった、というところである。この辺りは試行錯誤という面と、ターンオーバーという面、両方があると考えられる。

ジュビロ磐田フォーメーション
20
川又
22
大久保
19
山田
7
田口
13
宮崎<
23
山本
5
櫻内<
41
高橋
3
大井
4
新里
21
カミンスキ

一方のジュビロ磐田の方は、川又、そして夏の移籍マーケットで川崎フロンターレから獲得した大久保を2トップに置く5-3-2。ワールドカップの時のイングランド代表もそうだったが、最近は3バック(5バック)と言うと、この5-3-2の方を採用するチームが多くなっている。このシステムのメリットを5レーン理論的に表現すると、守備時に最終ラインの5枚で5つのレーン全てを埋めることが出来、かつ中盤の3枚で中央3つのレーンを埋めることが出来る、という表現になる。前を2トップに出来る、という点もメリットである。

さて試合についてだが、全体的に、ゲームをコントロール出来ていたのは磐田の方だった。
磐田のボール回収の基本形を簡単に説明すると、まずガンバのCB、ボランチの4枚に対して大久保、川又の2トップ+山田、田口の2IH(インサイドハーフ)で中央を締めて、ボールをガンバのSBに誘導し、SBにボールが出たら、今度はボールサイドのIHが相手SBに対して出て行ってボールをサイドに追い込み、スペースを限定して奪い取る、というシナリオになっている。
一方、磐田の中盤は3枚なので、ボールが大きく逆サイドに展開されるとスライドが間に合わない状況が出てくるのだが、その場合の対策としては、2トップの片方が逆サイドに下りる、という形と、逆サイドのWBが前に出て遅らせている間に最終ラインの残りの4枚がボールサイドにスライドする、という形が用意されている。
3-4-2-1や3-4-1-2の場合、3枚になっているエリアの脇にボールが運ばれると、WBが後ろ向きに対応しなければいけないが、5-3-2の場合、3枚になっているエリアの脇を使われてもWBが前向きに対応できる。この点も、このシステムのメリットの一つである。
また、この試合ではガンバの方のサイドを変えるパスがSBからCB、CBから逆サイドのCB、そこから逆サイドのSBへ、という形で各駅停車であることが多く、スライドが間に合わない、という局面自体も少なかった。
また、磐田の攻撃面では3バックの左の高橋の攻撃参加が特徴的で、WBにボールが収まると、4バックのSBのようにWBの外を回ってオーバーラップする、というシーンが何度も見られた。

ガンバの方は、鹿島戦では相手がゾーンで、かつ引き気味で守っていたため、ポジショナルプレー的にボールを回す、ポジショニングで相手の間、間で受ける、ということが出来ていたのだが、この試合のように、相手が積極的に前からハメに来ると、SB、ボランチの選手の中にボールを運べる選手がいないのでキツくなる。
ただ、前半、後半の中で、良い形になった攻撃というのは幾つかあって、一つは右SHの藤本が中に絞って、相手の2トップ+2IHの四角形の間、もしくは相手のアンカーの脇で受ける、という形。この形から藤本がボールを収めたり、自らドリブルでカットインしたり、というシーンが何度か見られた。
もう一つは、2トップの片方が引いてきて5-3-2の「3-2」の部分を中に絞らせ、そこからサイドにはたいて展開する、という形。前半に、ウィジョが引いてきてオジェソクに展開、という形が1回、後半に、長沢が引いてきてサイドに流れたウィジョに展開、という形が1回あった。

試合は終盤までスコアが動かず、最初のゴールは後半37分だった。先制したのはガンバ。得点が生まれたのはガンバから見て右サイド、藤本のFKからだった。
磐田の失点の原因は完全にCBの高橋のミスで、藤本のFKをヘディングでクリアしたが、ボールをウィジョの右足、どうぞ撃って下さい、というところに落としてしまった。このボールをウィジョがボレーで叩いてゴール。これでガンバが1点のアドバンテージとなった。

試合終盤の先制点ということで、ガンバの方は後は守り切れば良い、という状況になった。逆に磐田の方は残り少ない時間で同点を狙いに行かないといけない、ということでCB大井を上げてパワープレー気味の攻撃を開始。そして後半ロスタイム、磐田ボールで右サイドに開いた田口から左サイドの高橋、その更に左の宮崎へとサイドチェンジ気味にボールが繋がって、宮崎がクロス、このクロスを川又がヘディングで折り返し、大井がこのボールをヘディングでゴールに運んで、磐田が土壇場で追いついた。

宮本監督になってからのガンバは2戦して2分けということで、悪くはない結果なのだが、気になる点は多かった。
1つはCBファビオのところで、守備の局面でギリギリのプレーが多い。遅れて守備に行って後ろから倒してしまう、というシーンが何度かあり、この試合のジャッジの基準では流されていたので目立たなかったが、危険な兆候に見える。
もう一つはボランチの人選のところで、ある選手を使うと、その選手の良さが見られる一方で、その選手の悪さも出てしまう、というところ。遠藤やマテウスを起用すると、ボールを運ぶという面では良さが出る一方、守備の時にバイタルを空けてしまう、運動量が少ない、という悪い面が出る。一方でこの試合のように高や高江と言ったU23の選手を起用すると、ポジションを守る、ハードワークする、という面では良さが出る一方で、ボールを運ぶ、フィジカルや高さで撥ね返す、という面では悪さが出てしまう。クルピ監督の時から、もっと遡ると長谷川監督の時から、ガンバはそこの最適解を探し続けている気がする。現状の面子であるならば、遠藤+U23の選手、マテウス+U23の選手、という風に、運ぶ選手+バランスを取る選手という組み合わせでターンオーバーするのが良いと思うが、マテウスに関しては外国人枠の問題があり、ウィジョがアジア大会で抜けている間は使えるが戻ってきたら使えない、もしくはファビオ、オジェソク、アデミウソンの中から誰かを外す必要がある。また、負傷離脱している今野が戻ってくれば別の選択肢も出来る、更には、レノファ山口からMF小野瀬康介を獲得したので、彼を2列目に入れれば倉田をボランチに回せる、ということで、とにかくこのポジションについては考えることが多くて、宮本監督を悩ませることになりそうである。

そして最後は、やはり得点力の部分。
ガンバの失点数はJ1の中で、少ない方から数えて13番目。堅守とは言えないが、降格に値するほど多いとは言えない。一方で、得点数は下から2番目(鳥栖と同数)である。9得点を挙げているウィジョがいてこの数なので、これは余りにも少ない。
ウィジョの個人能力以外の得点パターンが欲しい。それはやはりセットプレーということになるのではないだろうか。