チャナティップとオタメンディを見て考える。自分をプロデュースする、ということ

前回、海外サッカーを見ていて、日本人選手と外国人選手の違いを感じる部分について、自分なりの考えを書いた。前回の記事では、日本人選手はボールをキープする時の姿勢、そしてミドルシュートの蹴り方において海外の選手と違いがあり、そこがボールを持った時のどっしり感、怖さ、という部分の違いに繋がっているのではないか、という話をした。つまり技術面の話だったわけだが、今回はまた別の観点から、日本人選手と海外の選手との比較の話をしてみたい。

昨シーズン、コンサドーレ札幌にチャナティップ・ソングラシンというタイ代表の選手が加入した。身長は158cmで、平均的な日本人選手と比べるとかなり小さい。年齢は24歳だが、それよりも若く見える(言い方を変えると幼く見える)。最初に見た時は、J1のレベルでやれるのかな、という印象を持ってしまったのだが、加入してすぐ札幌のレギュラーに定着すると、チームのJ1残留にも貢献し、J1で戦えることを証明した。

彼を見ていると、日本人選手がドイツやイングランドでどういう風な第一印象を持たれるのかが、なんとなく分かる気がする。チャナティップが一般的な日本人選手と比べて小さい、幼く見える、というのと同じように、日本人選手は一般的なドイツ人、イギリス人の選手と比べると、小さいし、幼く見える。そうなると、選手、監督、そしてサポーターを含めた現地の人たちからすれば、フィジカル面、メンタル面で、「こいつは戦えるのか」というところが、まず心配になる。
つまり、日本人選手がドイツやイングランドでプレーする時は、まずそういう偏見を跳ね返すところから始める必要がある。

さらにまた別の話をすると、最近デイリーメールで、マンチェスターシティでプレーしているアルゼンチン代表DF、ニコラス・オタメンディの記事が取り上げられていて、下記のような内容だった。

Nicolas Otamendi says tattoos and beard make him look aggressive and add to tough-guy image(ニコラス・オタメンディ曰く、タトゥーと髭は自分をアグレッシブに見せ、タフガイのイメージを与えてくれる)

He told the Independent: I think it (the appearance) can be a factor with officials, depending on your personality and how you play. But yes, the beard and the tattoos help the aggressive image. I suppose it brings a bit more to it.

彼はインディペンデントにこう話している。「私は外見が、オフィシャルな要素になり得ると考えている。その人の個性やプレースタイルにもよるけれど。髭やタトゥーはアグレッシブなイメージを助けてくれる。少しだけね。」

I started to let the beard grow at Valencia and I just liked it, so since then, it has become a big part of my personality, just like those tattoos.

「バレンシアにいた頃、髭を生やし始めて、気に入ったんだ。以来、自分の大きな個性になった。タトゥーと同じようにね。」

記事の中では、オタメンディがボクシングの大ファンであること、リッキー・ハットン(※)に憧れていることなども紹介されていて、自分のルックスを迫力あるものにしたい、という彼の意識は、そうした彼の趣味嗜好にも由来していると考えられる。

※「The Hitman」と呼ばれた元プロボクサーで、シティファンでもある

外国人選手の中に、オタメンディのように考えている選手がどれほどいるのかは分からないが、個人的には、オタメンディの姿勢は日本人選手に足りないと感じる。
例えばセビージャにいた時の清武は、年齢的にはチーム内で中堅クラスの選手だったが、チームで移動する時の服装などを見ると、他の選手と比べて、かなり幼く見えた。日本人の場合、10代でも20代でも、あまり見た目に違いが無かったりするので、服装の趣味もそのまま、ということは結構多いと思うのだが、それだと恐らく、欧州の人から見ると、10代にしか見えないのではないだろうか。そして前述のチャナティップの話で述べたとおり、幼く見える、というのは、一つの偏見を生む要素でもあるので、もっと日本人選手は、自分を成熟した人間であるように見せる、簡単に言うと老けて見せる必要があるのではないだろうか。
勿論、最終的には実力が伴っていないと、どれだけ外見を取り繕っても無意味だし、例えばシルバやアザール、マタのように、ルックス的には日本の一般人と変わりなくても、試合になれば大きな存在感を見せる選手というのは確かにいるが、逆に言えば、プレーだけで存在感を見せようとすれば、それだけ能力的に抜けていなければいけないわけで、そうではない選手にとっては、もしくはそういう選手であっても、最初の出場機会を得るためには、第一印象というのは大事である。

逆の言い方をすると、海外の選手や監督が持っている、ネガティブな意味でのステレオタイプな日本人のイメージに、自らのイメージを誘導してしまうような佇まい、立ち振る舞いは避けるべきで、むしろ逆方向のイメージを持つように仕向けるべきである。
一般的に、外国人の監督や選手、スカウトなどは、日本人に下記のようなイメージを持っていると考えられる。

メンタル(良い面) 真摯、利他的、従順
メンタル(悪い面) 内向的、消極的、弱気
プレースタイル(良い面) スピーディ、周りを活かす、フェアプレー
プレースタイル(悪い面) ボールを収められない、シュートを撃たない、駆け引きが下手

よってメンタル面では、自分は外向的で、積極的で、強気である、ということを周囲に対して強調すべきで、その一つの手段として、オタメンディのように、ルックスにも気を使うべきだと思う。
プレースタイルについてはスキルの問題もあるので、心がければ改善できる、というものではないが、監督や周りの選手、そして自分を獲得しようと考えているスカウトの人間は、そこを見ている、そこを心配している、ということは意識しておくべきだと言える。逆に考えれば、プレースタイルの「悪い面」で挙げたプレーで良いプレーを見せれば、「良い面」で挙げたプレーで良いプレーを見せるよりも高評価につながる、監督や選手、スカウトを安心させることにつながる、ということにもなるので、その意識の有無は大事だと思う。得意なプレーは意識せずとも自然に周りの目に留まるものであり、苦手なプレーこそ、より積極的にアピールすべきである。
パーソナリティについてもそれは同じで、日本人の持っている良い部分、というものは、自然に周りも認めてくれる部分であり、努力しないといけないのは、悪い面のイメージを払拭すること。周りが日本人に対して持っているイメージを自覚しつつ、自分をプロデュースするということ。チームに溶け込む、チームに居場所を作る、という作業を始める時には、まずはそこから始めることが重要なのではないだろうか。

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