倉田を3列目で使わざるを得ないジレンマ。J1第10節 ガンバ大阪 VS 清水エスパルス

日時 2017年5月5日(金)14:03
試合会場 市立吹田サッカースタジアム
試合結果 1-1 引き分け

遅ればせながら、先週のガンバの試合のレビューを。
結果的には引き分けてしまったのだが、ガンバからすると、今後の方向性というのが見えた試合だったのかなと。

前半はガンバの前線の動きが少なく、陣形をコンパクトにして守る清水相手に、なかなか良い縦パスを付けられない、という状態だった。
この試合のガンバは1トップが長沢駿、2列目が堂安律、アデミウソン、藤本淳吾、3列目が倉田秋と井手口陽介という並びだったのだが、2列目の選手がもっと隙間、隙間で受ける動きをしないと、なかなか清水のようなチームの守備を崩すことは難しい。そうしたプレーが一番うまいのは倉田なのだが、今野が故障で離脱中であること、遠藤のコンディションが上がっていないことから、現在のガンバは倉田を3列目で使わざるを得ず、そのジレンマがそのまま、この日の試合展開に表れていた。

ガンバとしては、遠藤を3列目に置き、彼のパスセンスを活かして試合を組み立てていくのが本来のスタイルなのだが、今の彼を2ボランチの一角としてプレーさせると、どうしても守備面で不安がある。それを解決するため、4-3-3のアンカーや、3-5-2のアンカーに置いたりして色々と試行錯誤をしてきたのだが、勝った試合でも、負けた試合でも、やはり遠藤が攻守の切り替えのところや、相手の攻撃が加速したところで置いて行かれてしまう、というシーンは散見されていた。

ただ、この試合では上述のように、本来は受け手として才能を発揮する倉田を3列目で使ったことにより、出し手もいない、受け手もいない、という状況になってしまっていて、しかも後半早い時間帯にガンバが失点してしまったので、長谷川監督も覚悟を決めて、遠藤をボランチとして投入し、倉田を2列目に上げる、という采配を採ってきた。そして期待した通り、出し手としての遠藤と受け手としての倉田の動きが嚙み合ってガンバの攻撃は活性化し、後半12分に追いつくことに成功。しかし、試合をひっくり返すまでには至らず、1-1の引き分けで試合終了となった。

今シーズンのガンバを見ていると、選手個々の資質や、監督の采配以前に、コンディションや選手層、という部分がどうしても目につく。
今シーズンのガンバは、昨シーズンの「走らずに勝つ」サッカーから、「走って勝つ」サッカーに変わっていると感じていて、それは下記のスプリント数のデータにも表れている。

平均(リーグ順位) 勝利時平均 引分時平均 敗戦時平均
2016 160.6回(7) 158.0回 165.9回 161.2回
2017 182.7回(1) 195.0回 168.5回 178.0回

昨シーズンは全体的にあまり走っておらず、むしろ勝った試合の方が、スプリント数は少ない。しかし、今シーズンはリーグ全体で一番スプリントしていて、走れなかった試合では敗れるか、もしくは引き分けている。昨シーズンのサッカーとどちらが良いのか判断することは出来ないが、昨シーズンのガンバはタイトルを取ることが出来なかったので、何かを変えなければいけない、という方向性は理解できる。
しかし、過密日程であったり、選手の怪我であったり、U20やフル代表への招集であったりといった要因によって、現在のガンバはなかなか「走れるチーム」としてのコンディションを整えられないままでいる。シーズン全体を通して、それをどこまで上げて行けるか、それが、ガンバが今シーズンどこまで行けるか、を決定するのではないだろうか。