辛くもグループリーグ突破。2018FIFAワールドカップ 日本代表 VS ポーランド代表

日時 2018年6月28日(木)23:00※日本時間
試合会場 ヴォルゴグラードアリーナ
試合結果 0-1 ポーランド代表勝利

コロンビア、セネガルとの対戦を1勝1分けで終え、引き分け以上の結果であれば決勝トーナメント進出という条件で、このポーランドとの対戦に臨んだ日本代表。結果は0-1の敗戦だったが、2位争いの相手、セネガルがコロンビアに敗れたことで、日本とセネガルが勝ち点、得失点差、総得点全てで並び、フェアプレーポイント(イエローカードとレッドカードの数で算出されるポイント)で僅かにセネガルを上回った日本が決勝トーナメントに進出することとなった。
試合の終盤、ビハインドの状態だった日本は、セネガルがコロンビアに負けることを前提に、得点を狙いに行かない、ボールをひたすら後ろで回して試合を終わらせる、という選択をした。そのことの是非についても少し触れたい。

日本代表フォーメーション
13
武藤
9
岡崎
11
宇佐美
21
高徳
16
山口
7
柴崎
5
長友
20
槙野
22
吉田
19
酒井宏
1
川島

この試合の日本代表のフォーメーションは、岡崎慎司と武藤嘉紀を2トップに置く4-4-2。スタメンは前節セネガル戦から大きく入れ替えて、上述の2トップ、左SHの宇佐美貴史、右SHの酒井高徳、左ボランチの山口蛍、そして左CBの槙野智章が今大会初スタメンである。
この試合の会場となったヴォルゴグラードアリーナの気候は、天候が晴れ、気温は36度、湿度が24%という猛暑日。決勝トーナメントに進んだ場合のレギュラー組のコンディションを考慮し、西野監督はスタメンを大幅に入れ替える、と言う選択をした。

ポーランド代表フォーメーション
9
レバンドフスキ
21
クルザワ
19
ジエリンスキ
11
グロシツキ
6
ゴラルスキ
10
クリホビアク
3
イェンドジェイチク
5
ベドナレク
15
グリク
18
ベレシンスキ
22
ファビアンスキ

対するポーランド代表のフォーメーションは、エース、レバンドフスキを1トップに置く4-2-3-1。ポーランドは3バックと4バックのフォーメーションを使い分けるチームだが、この試合では4バックで入ってきた。ただし、既に敗退が決定していることもあり、メンバーは前節コロンビア戦から大きく入れ替えていて、GKファビアンスキ、左SBイェンドジェイチク、左SHクルザワの3名は今大会初出場。また、CBのレギュラーであるグリクは怪我のため1戦目は不出場、2戦目は試合終盤10分の出場にとどまったが、この試合ではスタメンに復帰した。

試合の内容に触れる前にまず、この試合で一番話題になっている、試合終盤の日本の選択について述べたい。
この試合、後半36分ぐらいから、日本は明確に、自分たちは攻めないという意思表示をして、ひたすら後ろでボールを回す、という戦い方をした。その時点で日本はポーランドに1点差でリードされていたのだが、同時刻に行われているコロンビアとセネガルの試合でコロンビアがリードしていたため、日本はフェアプレーポイントでセネガルを上回れる、という判断をしたわけである。
個人的には、日本は少なくともロスタイムに入るまでは、同点を狙いに行くべきだったと考えている。理由は単純で、後半残り、ロスタイム含めて10分以上という時間は、セネガルがこの後1点も取らない、日本も取れない、と判断するには、余りにも長すぎるからである。
同点を狙いに行く場合はポーランドの反撃を受けることは覚悟しなければならないし、その結果、失点してしまったり、味方にイエローカードが出てフェアプレーポイントでセネガルを下回ってしまうと敗退となってしまうわけだが、失点しないよう、そしてイエローカードを貰わないよう、最低限のリスクで攻撃を続ける、ということは出来たはずである。しかし、この試合のように、完全に同点を狙うことを諦めて攻撃のスイッチを切ってしまうと、万が一、セネガルが同点に追いついた場合に、もう一度そのスイッチを入れ直す、というのは不可能である。そして、自ら攻撃を放棄して敗退となった場合のダメージは、普通に戦って敗退となった場合と比べて、余りにも大きい。
今回は結果的に賭けに勝ったわけだが、必要のないリスクを負った、と言うことは看過されるべきではないと考えている。

さて、試合の内容について。
この試合、日本とポーランドは供に4バック。ただし、ボール運びには明確に違いがあった。日本はこれまでの試合と同じように、柴崎が2CBの間に落ちたり、山口が味方のSBが上がったスペース(相手のトップの脇のスペース)に開いたりして、ポーランドの前線、レバンドフスキとジエリンスキの周りで数的優位を作ってボールを配球する。一方ポーランドの方は、両SBは高い位置に上げるものの、ボールの配球は基本的にCBが行い、ボランチは殆ど下りてこない。クリホビアクが最終ラインの中央に落ちて来ることが僅かながらあったが、決められた動きとしてやっている、と言う感じではなかった。
そうなると日本の方としては、2トップの岡崎と武藤が相手のCBとボランチの間を切りながら守備をするだけで、ポーランドの攻撃をほぼSB経由、もしくはロングボールに限定できる。よってこの試合では、日本の守備がセットされている状態から崩される、と言うシーンは殆ど無かった。ただし、ピンチがなかったのか、と言うと全くそんなことは無く、寧ろ、ポーランドが特別なボール回しをしていないのに、再三危険なシーンがあった、という感じだった。

日本がピンチを迎えるパターンは大まかに3つあった。
1つ目は前からボールを奪いに行って取りきれず、裏返されて擬似カウンターを受ける、と言うパターン。2つ目はサイドのボール回しで引っかかってカウンターを受ける、と言うパターン。3つ目は、左SHの宇佐美が高い位置を取っていて、空いた左サイドのスペースを使われる、と言うパターン。2つ目と3つ目は両方同時に起こるパターンもあり、右で引っかかって左の空いたスペースに展開されてカウンター、と言うシーンもあった。
1つ目については奪いきれない、というのは個人能力の問題でもあるし、前から奪いに行って取れなかったら当然そうなる、ということでもあるので、仕方のない面はある。
2つ目については、SHとSBのポジショニングの連動性にスムーズさがなくなった、というのが大きい。ガーナ戦での日本は、ボランチやCBがボールを持ってサイドに展開する時に、SHが中に入る、その外側のスペースにSBが上がる、というポジショニングの連動がスムーズに出来ていたのだが、この試合では、SBとSHの組み合わせが左は乾・長友から宇佐美・長友に、右は原口・酒井宏樹から酒井高徳・酒井宏樹に変わって、そこの連動性が落ちてしまった。やろうとはしているがタイミングがズレている、と言う感じで、SHが中で待っている、遅れてSBが上がってくる、と言う具合なので、もっと中に入る、外を回る、という動きを同時発生的にしないと、相手も付いてきてしまう。
そして3つ目については、日本は左SHの宇佐美が中央高い位置、FWのところぐらいまで上がるが、ボールを失った時に誰が宇佐美の空けたスペースをカバーするのかが決まっていない感じで、宇佐美自身も、相手ボールとなった後に自分のポジションに戻るスピードが遅かったり、そもそも戻ろうとすらしていなかったり、と言う感じだった。多分、宇佐美の判断としては、ボールより後ろの守備の人数が足りているので戻らなくても大丈夫、と言う判断なのだと思うが、今の日本はゾーンで守っているので、戻る、戻らないの判断は、人数が足りているかどうかだけでなく、自分が空けたスペースを誰かがカバーしてくれているか、と言うところも含めて判断しなければならない。そして、誰も埋めていなければ、自分が走って埋めるしかない。もしかすると、西野監督のプランとしては、左SHは違いを作るポジションと言うことで、ある程度守備は免除、と言うことだったのかもしれないが。

前半は0-0で折り返し、後半。日本は後半2分に岡崎が負傷で下がり、大迫が入った。

そして後半14分、日本はポーランドのFKから失点してしまったのだが、このシーンではまず、FKを与えてしまったところの山口の対応が悪くて、ボールを失ったのも山口、その後相手をファウルで止めてしまったのも山口だった。失ったシーンは、柴崎からのボールが少し弱くなったところを相手につつかれてしまったのだが、山口がちゃんとスクリーンしてボールを守っていればキープできたボールだった。山口はボールを保持している時、自分の背後の相手選手を感じていないことが多く、そう言う問題点は、コーチングの声が聞こえにくいビッグマッチであればあるほど起こりやすい。
また、その後のFKでは、日本は最初、山口がグリク、槙野がレヴァンドフスキ、高徳がベドナレクをマンツーマンで見て、それ以外はゾーンで、と言う感じだったのだが、キックの瞬間、ゴール前中央にいた柴崎と酒井宏樹が、ファー側にポーランドの選手が2人余っているのを気にして、ファー側に走っていき、ちょうど酒井宏樹が高徳とベドナレクの前を横切る形になったところ、高徳はマークを受け渡すと勘違いしたのか、ベドナレクを簡単に放してしまい、結果、ベドナレクにボールが飛んできて、右足で合わされて失点、という流れだった。

リードを奪われた日本は、後半20分に宇佐美を下げて乾を投入。やはり乾の方が、SBとの連動がスムーズになる。乾と宇佐美、乾と高徳の違いは、乾の場合、狙っているのは中、ボランチの脇のスペースだったとしても、基本的にはサイドに張っている、と言うところ。使いたいスペースを使いたいタイミングまで、入らずに残しているので、広いスペースで受けることが出来るし、そのスペースに入るタイミングとSBが外側から上がってくるタイミングに同期がとれているので、連携がスムーズになる。ただ、乾がスペースに入るのと同じタイミングで2トップの片方が同じスペースに入ってしまってノッキングする、と言うシーンもあり、多分この辺はトップ下が香川だったらもっと上手く行くと思うのだが、2人の感性に頼っている部分の連携を、もっと約束事に落とし込む必要があるのかなと。

結局、日本は後半36分に長谷部を投入し、冒頭に書いたとおり、得点を奪いに行かない、という選択をした。
危険な判断だったと思うし、間違った判断だったと思うが、結果的にグループリーグの突破、と言う目標は果たせたので、今はもう、それは忘れて、決勝トーナメントの初戦、ベルギー戦に全精力を傾けたほうが良い。反省は大会後に行えば良い。
とにもかくにも、主力を休ませて決勝トーナメントに臨むことが出来たので、ベルギー戦には期待したい。