大阪ダービーに見る、外国人選手たちのメンタリティ

この間の大阪ダービーを見ていて、外国人選手のメンタリティについて思うところがあったので、それについて書きたい。

この試合の前半は、ガンバのGK東口が負傷して中断した時間があったため、5分という少し長めのアディショナルタイムが取られたのだが、その時間帯に幾つか、両チームの外国人選手同士でやり合いがあった。

時間は前半45分。
セレッソはこの時間帯、ガンバに1点を奪われてリードされている状態。失点の原因は、セレッソのCBヨニッチがガンバのFWファンウィジョをペナルティエリア内で引っ掛けてPKを与えてしまったことだった。

ヨニッチは当然、PKの判定を不服に思っているし、ファンウィジョに「してやられた」と思っている。DFとして、相手のFWから「こいつはチョロい」と思われるのは死活問題なので、彼は自分の恐ろしさを相手に印象付けるため、ある行動に出る。

何をするかと言うと。

 

大阪ダービー マテイ・ヨニッチ1

味方のセットプレーのドサクサに紛れて、ウィジョを後ろからドツく。ウィジョは悶絶して倒れ込む。
ここで、ヨニッチの悪行をガンバのブラジル人ボランチ、マテウス・ジェズスがじっと見ている、ということを覚えておいてほしい。

そして次のシーン。前半47分。

大阪ダービー マテイ・ヨニッチ2

セレッソの山村のタックルを受けて、ガンバの倉田が倒れ込む。ヨニッチはノーファウルをアピールしている。実際のところ、倉田は山村のタックルの前にジャンプしていたので、ファウルかどうかは別としてもダメージはそれほど無いのだが、リードして前半を終えるために時間を使いたい、ということで、倉田は傷んだことをアピールする。

大阪ダービー マテイ・ヨニッチ3

倉田が傷んだのを見て、セレッソのGKジンヒョンがボールを外に出す。これを見てヨニッチがジンヒョンに向かって怒る。

大阪ダービー マテイ・ヨニッチ4

左手で前方を指し、「前線に蹴れ!負けてんねんぞ!」と言う(想像)。
ジンヒョンは片手を上げてそれに応じている。

そして前半49分。

大阪ダービー マテイ・ヨニッチ5

先ほどヨニッチがウィジョに「攻撃」したシーンを見ていたマテウスが、お返しとばかりにヨニッチにエルボーを見舞う。今度はヨニッチが悶絶する。
クリアされたボールに主審が目を向けた間隙を突いての攻撃だったが、しっかりバレてイエローを貰っていた(副審が見ていたのか、主審が見ていたのかは分からないが、ボールが動いた後もトラブルが起きそうな場所に「目を残せる」審判は良い審判だと思う)。

ファンウィジョは韓国人、マテウスは今季途中から加入したブラジル人。恐らく殆ど話したことも無いと思うが、それでも、仲間がやられたら報復する。それがブラジル人の考え方である。
逆に、ジンヒョンと倉田はかつてシーズン通してセレッソで一緒にプレーしたことがあり、ジンヒョンは日本語を喋れるので、倉田とは「面識がある」以上の関係である。その倉田が痛んでいても、「敵である以上、無視してプレーを続けるべき」というのがクロアチア人の考え方である。

ほとんどの国においてサッカーはスポーツというより代理戦争という側面があり、選手はそのための傭兵という立場である。彼らはチームのために戦うが、それと同時に、自分たちがそうした環境で生き残っていくために戦っている。だからやられたら(手段を問わずに)やり返すし、生き残るためには仲間が必要なので、仲間がやられてもやり返す。そして、「敵」が倒れていても、目をくれることは無い。

日本人の感覚からすれば、ジンヒョンのプレーが正しく、ヨニッチとマテウスのプレーは間違っている。ただ現実問題として、日本のように、サッカーが純然たるスポーツマンシップの上に成り立っている国というのは殆どない。日本を一歩出れば、ヨニッチやマテウスのような選手が殆どであり、ジンヒョンのような選手は寧ろ少ない。
正しいか、間違っているかは別にして、ヨニッチとマテウスのプレーが世界標準、というのが現実である。

日本人が海外のチームと試合をする時。日本人が海外でプレーをする時。サッカーは代理戦争であり、自分はその傭兵である、というモードに切り替えられるかどうか。そこが一つのハードルになると思う。

関連記事: